相続手続きの代行を頼むなら誰がいい?専門家別の違いと費用を比較


- 「相続手続きの代行を依頼するとどれくらい費用がかかる?」
- 「相続手続きの代行は誰に依頼するべき?」
相続手続きについて、このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
ご家族が亡くなった際は、大変な心労のなかでも葬儀や遺品整理などのやるべきことを一つずつ解決していかなくてはいけません。
中でも相続に関する手続きは、用意する書類が多く手間がかかるうえ、親戚同士だけで進めようとするとトラブルなどに発展するリスクもあります。
そのため、相続手続きに悩んだときは専門家に依頼することも検討するとよいでしょう。
本記事では、相続手続きの代行を依頼できる専門家について、依頼先ごとの違いや費用相場を詳しく解説します。
相続に関してお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
相続手続きでは誰にどこまで代行してもらえる?
相続手続きには非常に多くの手順があり、専門家に代行してもらわない場合はその全てを相続人自身でおこなわなくてはなりません。
相続手続きでは、具体的に以下のような手続きをおこなう必要があります。
相続手続き | 相続人のおこなう作業 |
---|---|
1.遺言書の有無の確認 | ✔︎被相続人が遺言書を遺していないか確認する ✔︎公正証書遺言以外の場合は裁判所で検認手続きをとる |
2.相続人の調査 | ✔︎誰が相続人にあたるかを調査・確認する ✔︎被相続人の戸籍を集める |
3.相続財産の調査 | ✔︎被相続人の財産をすべて洗い出す ✔︎単純承認・限定承認・相続放棄のいずれにするか決める |
4.遺産分割協議 | ✔︎相続人全員で遺産の分割について話し合う ✔︎話し合いがまとまったら遺産分割協議書を作成する |
5.相続財産の名義変更手続き | ✔︎相続不動産などについて名義変更手続きをする |
6.相続税の申告と納税 | ✔︎10ヵ月以内に相続税の申告・納税をする |
一方、弁護士・司法書士・行政書士・税理士などの士業か、銀行に相続手続きを依頼すると、相続手続きをほぼ全て任せきりで進められます。
ただし、専門家によって任せられる手続きの内容や範囲が異なるため、自分の希望に合った専門家を選ぶことが大切です。
相続手続きの代行が可能な専門家の種類と資格による役割の違い
相続手続きの代行は、弁護士・司法書士・行政書士税理士といった士業に依頼できますが、対応できる範囲は専門家ごとに以下のように異なります。
相続手続き | 弁護士 | 司法書士 | 行政書士 | 税理士 |
---|---|---|---|---|
遺言書の検認手続き | ○ | △(代理申請不可) | × | × |
遺言内容の執行 | ○ | ○ | ○ | ○ |
戸籍謄本の収集 | ○ | ○ | ○ | ○ |
相続税評価額の算出 | ○ | ○ | ○ | ○ |
遺産分割協議の代行・相続人同士の紛争解決 | ○ | △(一部可能) | × | × |
遺産分割協議書の作成 | ○ | △(事案による) | △(事案による) | △(事案による) |
相続税の申告 | △(税理士業務も行える弁護士であれば可能) | × | × | ○ |
相続登記手続き | ◯ | ○ | × | × |
預貯金や株式などの名義変更手続き | ○ | ○ | × | × |
自動車の名義変更 | × | × | ○ | × |
また、士業ではありませんが、銀行の窓口でも相続手続きの代行は依頼可能です。
ここからは、士業や銀行などの各専門家に相続手続きを依頼した場合の特徴やメリット・デメリットについて、解説していきます。
1.弁護士|ほとんどの相続手続きを一任できる
弁護士に相続手続き代行を依頼した場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | ✔︎相続手続きのほとんど全てを一任できる ✔︎法律トラブルを含む複雑なケースに対応可能 ✔︎調停や訴訟に発展した場合も任せられる |
---|---|
デメリット | ✔︎他の専門家よりも報酬が割高 |
弁護士は、遺産分割協議や相続トラブルが発生した場合の調停・訴訟対応を含め、相続手続き全般を代行してくれます。
とくに、遺言書の検認や作成支援、遺産分割協議書の作成や遺留分侵害額請求など、他の専門家では対応できない手続きも、弁護士であれば対応可能なケースが多いです。
2.司法書士|不動産の相続登記の代行を任せられる
司法書士に相続手続きの代行を依頼するメリット・デメリットは主に以下のとおりです。
メリット | ✔︎不動産に関する手続きを安心して任せられる ✔︎弁護士と比較すると費用が安価 |
---|---|
デメリット | ✔︎弁護士よりも対応可能業務の範囲が狭い ✔︎多くの法律紛争や調停には対応できないため、相続トラブルが発生しそうな場合には限界がある |
司法書士は、主に相続登記を専門分野としています。
また、相続財産に持ち家や土地などの不動産が含まれている場合は、遺産分割協議書の作成にも対応可能です。
そのほか、家庭裁判所に提出する各種書類の作成にも対応しているので、書類関係については頼りになる存在といえるでしょう。
ただし、相続トラブルへの対応や調停・訴訟に関しては、司法書士が対応することはできません。
3.行政書士|相続に関する書類作成を代行できる
行政書士に相続手続きの代行を依頼するメリット・デメリットは主に以下のとおりです。
メリット | ✔︎費用が他の専門家よりも低めであり、簡易な相続手続きには最適 |
---|---|
デメリット | ✔︎法的紛争や税務申告、不動産登記などは対応できない |
行政書士は、相続に関する書類作成を得意としています。
具体的には、遺産分割協議書の作成や自動車の名義変更などが主な業務範囲です。そのほか、相続人調査や戸籍収集にも対応しています。
行政書士は書類作成のプロフェッショナルであり、手続きに必要な書類を一括して整えてくれます。
とくに、煩雑な戸籍の取得や整理を代行する点で大きな助けとなるでしょう。
ただし、司法書士と同様に相続問題に関する調停や審判について、代理人になることはできません。
4.税理士|相続税の申告関係の代行が中心
税理士に相続手続きの代行を依頼するメリット・デメリットは主に以下のとおりです。
メリット | ✔︎税務に特化しているため、節税対策を含めた効率的な相続が可能 ✔︎税務署とのやりとりを代行してくれる |
---|---|
デメリット | ✔︎税務以外の業務は代行できない ✔︎遺産が高額の場合は手数料も高くなる |
税理士は、相続税の申告や納付、節税対策の専門家です。
相続手続きにおいては、相続財産の評価額や相続税の算定、相続税申告書の作成などに対応しています。
また、相続税申告に必要な場合に限り、遺産分割協議書の作成もサポートしてくれることもあります。
加えて、相続税がかかるケースにおいては節税プランの提案も可能です。
ただし、税が関連しない相続手続きについては、代行してもらえないので注意しましょう。
5.銀行|各専門家と連携して相続手続きを代行してくれる
銀行に相続手続きの代行を依頼する場合のメリット・デメリットは主に以下のとおりです。
メリット | ✔︎窓口を一本化できて手間がかからない ✔︎相続手続きの全てを一任できる ✔︎普段から利用しており信頼できる銀行にも依頼できる |
---|---|
デメリット | ✔︎手数料が高額になる ✔︎専門家の仲介となるため柔軟な対応が難しいケースがある |
相続手続きを銀行に依頼した場合は、銀行の担当者が窓口となり、弁護士や税理士などの各専門家に相続手続きを依頼することになります。
多くの大手銀行では「遺産整理業務」というパッケージとして売り出しているケースが多いので、担当者に確認してみるとよいでしょう。
なお、銀行への依頼では、窓口が一本化されるため相続手続きをスムーズに進められる反面、銀行に仲介してもらう分直接専門家に依頼するよりも高額な費用がかかることを覚えておきましょう。
各専門家に相続手続きの代行を依頼した場合の費用相場
各専門家に相続手続きの代行を依頼した場合の費用は、おおむね以下のとおりです。
依頼先 | 費用相場 |
---|---|
弁護士 | 数十万円〜 |
司法書士 | 数万円〜数十万円程度 |
行政書士 | 数万円〜数十万円程度 |
税理士 | 遺産総額の0.5〜1.0%程度 |
銀行 | 100万円〜 |
それぞれの専門家ごとの依頼費用について、詳しく見ていきましょう。
1.弁護士|得られる経済的利益による
弁護士に相続手続きの代行を依頼した場合は、最低でも数十万円程度の費用がかかるでしょう。
得られる経済的な利益によっては、数百万円とさらに高額になる可能性もあります。
弁護士は、他の士業と比較しても対応できる業務範囲が広く、訴訟や調停などに発展した場合も代理人として対応可能です。
しかし、その分費用は高くなるでしょう。
弁護士費用は、相談料・着手金・成功報酬など料金体系が細かく分かれているケースが多いため、相談の際に費用の内訳についてしっかりと確認しておくのがおすすめです。
なお、相続手続きにかかる弁護士費用については以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
【関連記事】弁護士の遺産相続相談費用はいくら?料金体系や相場・払えないときの対処法を解説
2.司法書士|相続登記は10万円〜15万円程度
司法書士に相続手続きのサポートを依頼する場合は、数万円〜数十万円程度の費用がかかります。
なお、相続登記のみを依頼する場合の費用相場は、10万円〜15万円程度です。
不動産の数や相続人の人数が増えると、その分料金も加算されるため、相談の段階でしっかり見積もりをとっておきましょう。
3.行政書士|作成する書類の種類による
行政書士に相続手続きの代行を依頼する場合の費用は、数万円〜数十万円が目安です。
行政書士は相続に関する書類作成を代行してくれますが、どの書類の作成を依頼するかによっても費用は変動します。
1種類の書類につき、3万円程度に設定されているケースが一般的ですが、作成する部数などによっても異なるので、事前相談で確認しておきましょう
4.税理士|遺産総額による
税理士に相続手続きを依頼した場合の費用相場は、遺産総額の0.5%〜1.0%程度です。
たとえば、遺産の評価額が2,000万円だった場合、10万〜20万円程度の費用が必要となるでしょう。
なお、費用は相続財産の内容や相続人の数によっても変動し、遺産分割協議書や財産目録などの作成も依頼する場合は、手数料を請求されるケースもあります。
5.銀行|仲介手数料が発生する分、高額になりやすい
銀行や信託銀行に相続手続きの代行を依頼した際の費用相場は、最低でも100万円程度です。
銀行は、ケースに応じて弁護士や司法書士などの専門家と連携をとりながら包括的に相続手続きをサポートしてくれます。
しかし、専門家の仲介という立場になるため、直接専門家に依頼する場合よりも費用は割高となるでしょう。
費用は割高になると理解したうえで、懇意にしている銀行の担当者がいる場合は見積りを依頼するのも一つの選択肢として検討してください。
相続手続きの代行を依頼すべきケースとは?
相続手続きには多くの作業や書類の準備が必要なので、素人が自力で進めるのは非常に困難です。
また、遺産分割を自分たちだけで進めようとすると、相続人同士でトラブルになる可能性も高いでしょう。
そのため、自分の状況に応じて専門家への代行を依頼するのがおすすめです。
具体的には、以下のいずれかに当てはまる場合は、専門家への代行依頼を検討しましょう。
- 仕事や家庭のことで忙しく手続きの時間が取れない
- 遺言書が見つからない
- 遺言書の内容が納得できない
- 他の親族と折り合いが悪く協議が難しい
- 相続税の計算方法がわからない
- 遺産の評価方法がわからない
- 被相続人にマイナスの財産があり限定承認や相続放棄を検討している
- 被相続人の財産が多いどう処理したらいいかわからない
相続手続きは非常に複雑であるうえ、一部の手続きについては期限も設けられています。
相続について親族と揉めているうちに期限を過ぎてしまわないように、相続について少しでも不安がある場合は早急に弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
さいごに|相続手続きの代行は上手に活用しよう
本記事では、相続手続きの代行について詳しく解説しました。
相続手続きは非常に煩雑であり、専門家の力を借りる必要があるケースがほとんどです。
銀行や信託銀行に相続手続きを依頼すると、専門家への仲介をおこなってくれますが、その分費用が割高となります。
自分の状況に応じて、弁護士や司法書士などの専門家に直接相談し、必要な範囲で相続手続きの代行を活用するのがおすすめです。