遺産相続には期限がある!手続きに必要なスケジュールも徹底解説


- 「遺産相続の期限はいつ?」
- 「〆切までに遺産相続の手続きを終えられるか心配」
遺産相続の手続きは複雑なので、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
遺産相続は手続きが複雑なだけでなく、期限が決まっているため、知識とスケジュール能力が求められます。
そこで、本記事では、遺産相続の期限や手続きの流れ、注意点などを詳しく解説します。
また、遺産相続について悩んでいる時におすすめの相談先も具体的に紹介します。
遺産相続の期限や手続きの流れを十分に理解し、疑問や不安を抱えることなく毎日を送りたい方はぜひ最後までご覧ください。
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遺産相続の手続きで重要な期限
- 【7日以内】死亡診断書の受取(医療機関)
- 【7日以内】死亡届の提出(市区町村役場)
- 【7日以内】火葬許可申請書の提出(市区町村役場)
- 【14日以内】世帯主の変更届の提出(市区町村役場)
- 【14日以内】国民年金・厚生年金の受給停止手続き(年金事務所)
- 【3ヵ月以内】相続放棄・限定承認の申述(家庭裁判所)
- 【4ヵ月以内】準確定申告(被相続人の所得税申告)
- 【10ヵ月以内】遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
- 【10ヵ月以内】預貯金等の解約・名義変更(金融機関)
- 【10ヵ月以内】相続税申告(税務署)
- 【10ヵ月以内】相続税の納付(税務署)
- 【1年以内】遺留分侵害額請求(家庭裁判所)
- 【2年以内】高額療養費の申請(市区町村役場)
- 【2年以内】葬祭費・埋葬料(費)の申請(市区町村役場)
- 【3年以内】相続登記(不動産・土地の名義変更)(法務局)
- 【3年以内】死亡保険金の請求(保険会社)
- 【5年10ヵ月以内】相続税の更正の請求(税務署)
- 遺産相続の期限が過ぎたらどうなる?
- 遺産相続の期限を守れるか不安な方は弁護士に相談するのがおすすめ
- 遺産相続の手続きを弁護士に相談するメリット
- 遺産相続を弁護士に依頼する際の費用
- 遺産相続を弁護士に依頼する際の流れ
- さいごに|遺産相続の問題にお悩みの方はベンナビ相続で
遺産相続の手続きで重要な期限
遺産相続にはさまざまな手続きがあり、それぞれに期限が設けられているため、計画的に進める必要があります。
各手続きの期限を守らないと、ペナルティが発生したり、相続人の権利が失われたりする可能性があります。
以下では、遺産相続に関する各手続きの概要と注意点を期限別にまとめました。
期限 | 手続き | 注意点 |
---|---|---|
7日以内 | ・死亡診断書の受取 ・死亡届の提出 ・火葬許可申請書の提出 |
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡した場合は、その事実を知った日から3ヵ月以内) |
14日以内 | ・世帯主の変更届の提出 ・国民年金・厚生年金の受給停止手続き |
世帯主変更届は、変更があった日から14日以内 |
3ヵ月以内 | ・相続放棄・限定承認の申述 | 家庭裁判所への申述が必要となる |
4ヵ月以内 | ・準確定申告(被相続人の所得税申告) | 被相続人(故人)の所得税の申告・納付 |
10ヵ月以内 | ・遺産分割協議・遺産分割協議書の作成 ・預貯金等の解約・名義変更、相続税申告、相続税の納付 |
相続税の申告・納付は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内 相続税申告までに遺産分割協議が間に合わない場合は、未分割で申告し、別途遺産分割完了後に修正申告をすることがある |
1年以内 | ・遺留分侵害額請求 | 遺留分を侵害されたことを知った時から1年以内 |
2年以内 | ・高額療養費の申請 ・葬祭費・埋葬料(費)の申請 |
健康保険法で定められており、期限を過ぎると原則として申請不可 |
3年以内 | ・相続登記(不動産・土地の名義変更) ・死亡保険金の請求 |
相続登記は義務化されており、正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料が科される可能性がある |
5年10ヵ月以内 | ・相続税の更正の請求 | 特殊な事情が発生した場合、事由が発生した日の翌日から4ヵ月以内に、請求をしなければならない |
【7日以内】死亡診断書の受取(医療機関)
医師による死亡確認後、速やかに死亡診断書を受け取る必要があります。
病院で亡くなった場合は病院が、自宅で亡くなった場合はかかりつけ医や検死をおこなった医師が発行します。
死亡診断書は、死亡届の提出や火葬許可申請、生命保険の請求など、その後のさまざまな手続きに必要となる公的な書類です。
死亡診断書がなければ、死亡届を提出できず、その後の手続きが一切進められません。
死亡診断書の発行料金は、約3,000円~1万円です。
料金は病院によって異なるので、受け取る前に病院に確認することをおすすめします。
なお、死亡診断書の再発行ができるのは原則として発行した医療機関のみなので、紛失しないように注意しましょう。
【7日以内】死亡届の提出(市区町村役場)
死亡の事実を知った日から、7日以内(国外で死亡した場合は3ヵ月以内)に、死亡届を市区町村役場に提出しましょう。
期限内に提出しなければ、5万円以下の過料が科せられる可能性があります。
なお、死亡届を提出する先はいずれかの市区町村役場です。
- 死亡者の死亡地の市区町村役場
- 死亡者の本籍地の市区町村役場
- 届出人の住所地の市区町村役場
死亡届の用紙は、市区町村役場や病院、診療所などの医療機関で入手できます。
提出先は、故人の本籍地、死亡地、または届出人の所在地のいずれかの市区町村役場です。
提出時は、死亡診断書または死体検案書のいずれかが必要となります。
なお、死亡届の提出は葬儀屋に代行してもらうことも可能ですが、死亡届の作成自体は提出義務者がおこなう必要があります。
死亡届が受理されると、戸籍に死亡の事実が記載されます。
【7日以内】火葬許可申請書の提出(市区町村役場)
死亡届と同様に、火葬許可申請書の提出期限は、届出人が死亡の事実を知った日から7日以内となります。
原則として、死亡届と火葬許可申請書は同時に提出しなければなりません。
火葬許可申請書には、故人の氏名や本籍、死亡日時、死亡場所、火葬場の名称などを記入します。
用紙は、各地方自治体の役所窓口で入手可能です。
多くの場合、死亡届を提出する際に窓口の方が渡してくれますが、 地方によっては死亡届が受理された段階で火葬許可証が発行されるケースもあります。
【14日以内】世帯主の変更届の提出(市区町村役場)
世帯主が死亡し、残された世帯員が2人以上いる場合、14日以内に世帯主変更届を市区町村役場に提出する必要があります。
正当な理由なく届け出をしなければ、5万円以下の過料が科せられる可能性があります。
世帯主変更届は、新しい世帯主となる方が提出します。
届出には、新しい世帯主の氏名や住所、旧世帯主との続柄などを記入します。
用紙は、市区町村役場の窓口で入手可能であり、手続きの費用はかかりません。
届出時は、変更届、印鑑、届出人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)が必要です。
ただし、次に世帯主となる方が確定しているケースや世帯主にふさわしい方がいないケースは、届出がいらない可能性があります。
例えば、夫婦2人で1世帯を形成していた場合、夫が亡くなった時は妻が世帯主になることが明らかなので、届出は必要ありません。
また、15歳未満の子どもは世帯主になれないので、夫婦に15歳以下の子ども1人の家族だった場合も、世帯主変更の届出は不要です。
【14日以内】国民年金・厚生年金の受給停止手続き(年金事務所)
年金受給者が死亡した場合、年金の不正受給を防ぐため、速やかに受給停止の手続きをおこなう必要があります。
これは国民年金法と厚生年金保険法で定められており、手続きが遅れると、年金の過払いが発生し、返還を求められる可能性があります。
国民年金の手続きは、死亡後14日以内(厚生年金の場合は10日以内)に、年金事務所または市区町村役場の窓口でおこないます。
手続きを進める時は、年金証書、死亡診断書のコピー(または死亡の事実を証明できる書類)、受給者と請求者の続柄が確認できる書類(戸籍謄本など)が必要です。
【3ヵ月以内】相続放棄・限定承認の申述(家庭裁判所)
相続放棄または限定承認をする場合は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に、家庭裁判所に申述する必要があります。
期間内に申述しなければ、単純承認したものとみなされ、被相続人の債務も相続することになります。
※単純承認:故人の相続財産を無条件で全て相続すること
以下では、相続放棄と限定承認の違いを簡単にまとめました。
- 相続放棄:被相続人の遺産を一切引き継がないこと(不動産や預貯金などのプラスの遺産、借金やローンなどのマイナスの遺産も含まれる
- 限定承認:相続によって得た財産を限度として、被相続人の債務を支払うことを条件に相続を承認する手続き
3ヵ月の期間は、相続人が複数いる場合、各相続人が個別で手続きを進めます。
なお、3ヵ月の熟慮期間は、家庭裁判所に申立てれば延長できる可能性があります。
相続放棄と限定承認の申述をおこなう時は、被相続人の住民票除票、申述人の戸籍謄本、相続関係図などが必要です。
書類集めや手続きなどは少々手間がかかるので、ベンナビ相続で遺産相続に強い弁護士に依頼するのもひとつの手です。
【4ヵ月以内】準確定申告(被相続人の所得税申告)
被相続人に所得があった場合、相続人は相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内に、被相続人の所得税の確定申告(準確定申告)をおこなう必要があります。
期限内に申告・納付しなければ、加算税や延滞税が課せられる可能性があるため、注意しましょう。
なお、準確定申告は通常の確定申告と同様に、被相続人の1月1日から死亡日までの所得を計算し、申告・納付します。
申告書の提出先は、被相続人の死亡当時の住所地を管轄する税務署です。
申告書には、「準確定申告」と明記する必要があります。
相続人が複数いる時は、原則として連署して提出します。
なお、医療費控除や配偶者控除など、通常の確定申告と同様の控除が適用されるケースもあります。
【10ヵ月以内】遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
10ヵ月以内に、相続人全員で遺産の分け方について話し合い、合意内容を遺産分割協議書にまとめる必要があります。
遺産分割協議書の作成は義務ではありませんが、「言った言わない」といった後々のトラブルを防ぐためにも、作成することを強くおすすめします。
一般的に、遺産分割協議には相続人全員が参加し、全員の合意を得る必要があります。
遺産分割協議書には、「誰が」「どの財産を」「どれだけ相続するか」を具体的に記載します。
遺産分割協議書は、不動産の名義変更や預貯金の払い戻し、相続税の申告などの手続きに使用します。
なお、話し合いがどうしてもまとまらない時は、弁護士に依頼して家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを進めるのもひとつの手です。
【10ヵ月以内】預貯金等の解約・名義変更(金融機関)
遺産分割協議で預貯金の取得者が決まったら、金融機関で口座解約または名義変更の手続きをおこなう必要があります。
金融機関は、口座名義人が死亡した事実を知ると、口座を凍結するので、早めに手続きをおこなうことが重要です。
預貯金等の解約・名義変更の手続きでは、一般的に以下の書類が必要となります。
- 銀行所定の用紙
- 預金通帳、キャッシュカード
- 被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍(出生から死亡まで)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 事案によっては他の書類(遺産分割協議書、委任状等)
ただし、金融機関によって必要書類が異なる場合があるため、事前に確認しましょう。
手続きは、原則として相続人全員でおこないますが、委任状さえあれば代表者のみでも問題ありません。
【10ヵ月以内】相続税申告(税務署)
相続財産の総額が基礎控除額を超える場合、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内に相続税の申告書を税務署に提出する必要があります。
相続税の申告は相続税法第27条で定められており、期限内に申告しなければ、加算税や延滞税が課せられる可能性があるため、注意が必要です。
相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で算出します。
相続税の申告書の提出先は、被相続人の死亡当時の住所地を管轄する税務署です。
申告書には、相続財産の種類、評価額、相続人の氏名、続柄などを記載する必要があります。
【10ヵ月以内】相続税の納付(税務署)
相続開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に、相続税を納付する必要があります。
期限内に納付しなければ、無申告加算税や延滞税といったペナルティが発生するので、注意が必要です。
相続税は、原則として現金で一括納付します。
ただし、延納(分割払い)や物納(不動産などで納付)が認められる場合もあります。
納付は、金融機関、税務署、コンビニエンスストアなどでも対応可能です。
【1年以内】遺留分侵害額請求(家庭裁判所)
遺留分侵害額請求とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に遺留分を侵害された相続人が、侵害者に対して遺留分を金銭で返してもらう手続きです。
遺留分を侵害された相続人は、1年以内であれば遺留分侵害額請求権を行使できます。
遺産を「誰に・どのように相続させるか」は遺言書で指定できますが、特定の人へ財産を集中して承継させようとした時は、遺留分を侵害する可能性があります。
法定相続人からすれば、最低受け取れるはずの遺産(遺留分)が受け取れないので、遺産を巡るトラブルに発展しやすいと言えます。
なお、遺留分侵害額請求の可否は、「あいつには遺産を与えない」といった他の相続人に対する悪意の場合も、「あの人が生活に困らないように」といった特定の人に対する善意の場合も関係ありません。
遺留分侵害額請求は、内容証明郵便で権利行使の意思表示をして、時効を中断するのが一般的です。
その後、話し合いで解決しないなら、ベンナビ相続で、家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停の申立てを弁護士に依頼するのもひとつの手です。
【2年以内】高額療養費の申請(市区町村役場)
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が暦月で一定額を超えた場合に、超過分の金額を支給する制度です。
相続開始前は、長期の入院や手術などで医療費が高額となるケースも珍しくありません。
被相続人が高額な医療費を支払っていた場合、相続人は医療費を支払った日の翌日から2年以内に、高額療養費の払い戻しを請求できます。
高額療養費の期限は健康保険法第115条で定められており、自己負担限度額を超えた医療費が払い戻されます。
申請先は、被相続人が加入していた健康保険(健康保険組合、協会けんぽ、市区町村の国民健康保険)です。
申請時は、被相続人の保険証や病院や薬局の領収書、診療明細書などが必要です。
【2年以内】葬祭費・埋葬料(費)の申請(市区町村役場)
被相続人が加入していた健康保険から、葬儀費用の一部が支給される制度があります。
葬祭費・埋葬料(費)の申請期限は、葬儀をおこなった日の翌日から2年以内です。
申請先は、被相続人が加入していた健康保険(健康保険組合、協会けんぽ、市区町村の国民健康保険など)です。
申請には、被相続人の保険証、死亡診断書(または埋葬許可証)、葬儀費用の領収書が必要です。支給額は、被相続人が加入していた健康保険によって異なります。
【3年以内】相続登記(不動産・土地の名義変更)(法務局)
不動産を相続した場合、相続によって所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記(名義変更)をおこなう必要があります。
正当な理由なく期限内に登記しなければ、10万円以下の過料が科せられる可能性があるため、注意しましょう。
相続登記は、法務局(不動産の所在地を管轄する法務局)に申請します。
申請時に必要な書類は、遺産分割協議書(または相続人全員の同意書)、被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの連続したもの)、相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の印鑑登録証明書、固定資産評価証明書などです。
一般的に、不動産相続時の名義変更で必要となる書類は以下のとおりです。
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 不動産取得者の住民票
- 相続する不動産の固定資産評価証明書
- 収入印紙
- 登記申請書
- 返信用封筒
なお、遺言による相続では、上記の書類に加えて遺言書(「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の場合、家庭裁判所の検認が必要)が必要です。
遺産分割協議による相続の場合は、「遺産分割協議書」と「相続人の印鑑登録証明書」の2点の書類も提出する必要があります。
このように、相続登記は必要となる書類がケースバイケースで異なるので、手続きが複雑で手間がかかる可能性があります。
そのため、遺産相続に強い弁護士をベンナビ弁護士で探して、書類集めや手続きを全て依頼するのもひとつの手です。
【3年以内】死亡保険金の請求(保険会社)
死亡保険金の請求期限は、保険事故が発生した日の翌日から3年と定められています。
手続きをおこなう時は、まずは保険会社に連絡し、必要書類を揃えた上で請求手続きを進めましょう。
一般的に必要となる書類は、保険証券、死亡診断書、受取人の戸籍謄本、受取人の印鑑登録証明書などです。
ただし、保険会社によって異なる場合があるので、事前に確認しましょう。
【5年10ヵ月以内】相続税の更正の請求(税務署)
相続税を納め過ぎていたり純損失が生じたりした時は、申告期限から5年以内(更正の理由が生じたことを知った10ヵ月以内)に税務署へ更正の請求ができます。
期限を過ぎてしまうと、更生の請求ができないだけでなく、本来払うはずの税金よりも多く納税したままになる可能性があります。
すでに納めた相続税について不安がある場合は、被相続人が死亡したことを知った日(通常、被相続人の死亡の日)の翌日から5年10ヵ月以内におこなうようにしましょう。
遺産相続の期限が過ぎたらどうなる?
相続におけるさまざまな手続きは、民法、相続税法などの法律で期限が定められています。
これらの期限は、相続手続きを円滑に進め、相続人や関係者の権利を守るために設けられています。
期限を過ぎてしまうと、法律で定められた権利を失ったり、ペナルティが課せられたりするため、しっかりと理解しておきましょう。
税金の軽減制度などが利用できない
相続税には、配偶者控除や小規模宅地等の特例など、税負担を軽減するためのさまざまな特例制度が設けられています。
多くの特例体制は、相続税の申告期限内に申告を終えることが適用要件となっています。
例えば、配偶者控除を例に挙げて説明しましょう。
配偶者控除とは、配偶者が相続した財産のうち、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額までは相続税がかからない制度です。
配偶者特例を受けるには、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内)までに、遺産分割協議を成立させ、申告書に必要書類を添付して提出する必要があります。
原則として、期限を過ぎてしまうとこれらの特例は適用されないため、注意が必要です。
相続税の延滞税がかかる
相続税の申告・納付期限(相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内)を過ぎてしまうと、本来納付すべき税額に加えて、延滞税が課せられます。
延滞税とは、相続税の納付期限を過ぎた時にペナルティとして課せられる税金です。
延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヵ月後を境に2段階に分かれます。
原則として、「納期限の翌日から2ヵ月を経過する日までは年7.3%」、「納期限の翌日から2ヵ月を経過した日以後は年14.6%」いずれかの2パターンです。
なお、納付期限を過ぎるケース以外にも、「修正申告や期限後申告をした時」や「税務調査によって更正・決定処分を受けた時」も延滞税が発生します。
延滞税は、納付すべき相続税の額に対して年率で課税されます。納税が遅れれば遅れるほど延滞税は高くなるため、注意しましょう。
相続人の状況が変わる可能性がある
何らかの理由で相続人の状況が変わってしまったケースでは、相続手続きが期限以内に終わらない可能性が高まります。
例えば、相続手続きが終わらないうちに相続人が認知症になって意思能力がなくなった時は、認知症の相続人に成年後見人を立てる必要があります。
また、相続人が亡くなった時は新たな相続が発生するため、相続人が増え、相続に関わる関係者も多くなります。
いずれにしても、相続人の状況が急に変わってしまった場合は、相続手続きがより複雑になり、時間がかかってしまうでしょう。
遺産相続の期限を守れるか不安な方は弁護士に相談するのがおすすめ
遺産相続を進める時は、さまざまな手続きを期限内におこなう必要があります。
その内容は多岐にわたるので、仕事や家事・育児などの私生活を送りながら、期限内に全ての手続きを完了できるか不安に感じる方も少なくないでしょう。
そのような時は、弁護士に相談するのを強くおすすめします。
弁護士は、法律の専門家として相続手続きをスムーズに進めるためのサポートをしてくれます。
期限までに必要な書類の準備や手続きを進めてくれるので、「〆切を守れるか不安…」という心配を抱えることなく、安心して遺産相続の手続きを進められます。
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遺産相続の手続きを弁護士に相談するメリット
遺産相続は、法律や税金が絡む複雑な手続きが多く、専門知識がないとスムーズに進めるのが難しいものです。
ここでは、弁護士に相談するメリットについて、具体的にわかりやすく解説します。
相続の専門知識が豊富
弁護士は、民法や相続税法などの遺産相続に関わる法律や税制に精通しています。
個別の状況や悩みに合わせて、遺言書の有効性判断や遺産分割方法、相続税対策などについて最適なアドバイスをしてくれます。
さらに、法的リスクを事前に把握し、後々のトラブルを未然に防ぐための対策を打ってくれるのも弁護士の強みです。
親族間の対立を避けられる可能性がある
弁護士は、感情的な対立が生じやすい遺産分割において、各相続人の意見を丁寧に聞き取り、法的な観点に基づいてベストな解決策を提案してくれます。
相続人の間で揉めるようなことがあっても、第三者である弁護士は、感情論ではなく法的根拠に基づいて相続問題の解決策を提示してくれるので、親族間の対立を避けられる可能性が高まります。
必要以上に精神的ストレスを感じる心配もなくなるでしょう。
必要な法的手続きをスムーズに進められる
弁護士に依頼すれば、戸籍謄本の収集や遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更などの遺産相続に必要となるさまざまな法的手続きを代行してくれます。
遺産相続における手続きは、法律に詳しくない方にとって非常に複雑でわかりにくいものです。
例えば、不動産を相続した場合は、法務局での名義変更や相続税の支払い、それに伴う書類作成など、非常に面倒な手続きが必要となります。
弁護士は、遺産相続の手続きで必要な書類の収集から申請まで、一連の手続きを代行してくれます。
弁護士は法律のプロなので、書類の不備や手続きのミスがない状態で、遺産相続の手続きをスムーズに進められるでしょう。
面倒な手続きを弁護士が代行してくれる
弁護士は、遺産相続にまつわるさまざまな手続きを代行し、依頼者の負担を大幅に軽減してくれます。
遺産相続には、税務署への申告以外にも、複雑な手続きが数多く存在します。
例として、銀行預金を相続する時は金融機関で口座解約や名義変更などの各種手続きが必要となるので、多くの時間と労力が必要となります。
これらの手続きを自身で進める場合、手続きの流れをイチから把握しなければならないですし、何らかの不備によって差し戻しを受ける可能性もあります。
弁護士に依頼すれば、弁護士に依頼すれば、必要書類の収集から金融機関との交渉まで全て代行してくれるので、相続問題にかける時間と工数を最小限に抑えられるでしょう。
結果に納得できるまで弁護士がサポートしてくれる
遺産相続問題においてもっとも大切なことは、利害関係者全員の「納得感」です。
法的根拠がない状況で、親族同士で話し合ってもなかなか協議はまとまりません。
何らかの協議がまとまったとしても、モヤモヤが残る結果となってしまうでしょう。
弁護士は、依頼者の意向を最大限に尊重し、法的な観点からベストな解決策を提案してくれます。
関係者全員が納得できる結果となるために、遺産相続については相続問題に強い弁護士に相談するのがおすすめです。
遺産相続を弁護士に依頼する際の費用
2004年までは、日本弁護士連合会の定める報酬基準があったため、弁護士費用は一律化されていました。
しかし、現在は廃止されたため、弁護士費用は事務所ごとに自由に決定されています。
なお、現在でもその基準をそのまま使用している弁護士も多いので、費用の目安にすることは可能です。
以下は、旧弁護士連合会報酬等基準をもとにした、相続問題を弁護士に依頼したときの費用の相場です。
項目 | 内容 | 相場 | |
---|---|---|---|
相談料 | 弁護士に相談をした際に発生する費用 | 5,000円(30分) | |
着手金 | 弁護士が案件獲得時に動き出す時に支払う費用 | 20万円~ ※経済的利益の額で変動 |
|
報酬金 | 相続事件の解決後に発生する費用 | 40万円~ ※経済的利益の額で変動 |
|
その他 | 実費 | 交通費や郵便代など | 5万円~7万円 |
日当 | 弁護士の遠方出張料など | 3万円~10万円 | |
手数料 | 遺産調査に伴う書面作成に生じる費用など | 15万円~30万円 | |
合計費用の目安 | 835,000円~ |
一般的に、相談料は相談回数や時間に応じた費用が定められています。
また、着手金や報酬金は、遺産額や最終的に得られた経済的利益の額に応じて費用が決まります。
ほかにも、出張時にかかる日当や手続きでかかった郵送費などの実費も別途発生します。
遺産相続の費用についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
【関連記事】遺産相続の弁護士費用の相場は?誰が払うの?払えない場合の対処法も紹介
遺産相続を弁護士に依頼する際の流れ
以下では、ベンナビ相続で遺産相続の手続きを依頼する時の流れをまとめました。
- ベンナビ相続で弁護士を選び、連絡する
- 現在の状況や希望内容などの事情を伝える
- 弁護士と面談日時を擦り合わせる
- 弁護士と面談をおこない、相談をする
- 弁護士へ正式に依頼する
- 証拠集めや資料などを依頼する
- 必要に応じて、相手方と交渉をする
- 解決
相談をしたからといって、必ず弁護士へ依頼しないといけないわけではありません。
弁護士への依頼は「目的」ではなく「手段」なので、あなたにとって弁護士へ依頼することのメリットが大きい場合のみ、正式な依頼をすれば問題ありません。
また、弁護士は依頼前に必ず弁護士費用の説明を依頼者へおこなわなければならない決まり(弁護士職務基本規程29条1項)があります。
正式に依頼する前に、十分な説明があるはずなのでご安心ください。
具体的な費用や内訳などは、弁護士に個別で問い合わせてみましょう。
なお、ベンナビ相続では初回相談無料・休日対応可能な事務所も多数探せますので、まずはサイトをチェックしてみましょう。
さいごに|遺産相続の問題にお悩みの方はベンナビ相続で
遺産相続は、法律や手続きが複雑に絡み合い、さらに相続人同士の感情的な対立が起こりやすい問題です。
相続財産の分割方法、遺言書の有効性、遺留分の請求、相続放棄の手続きなど、さまざまな局面で専門的な知識が不可欠となります。
これらの問題を円滑に解決し、不要なトラブルを避けるためには、相続問題に強い弁護士に相談することが非常に有効です。
弁護士へ早めに相談すれば、法的な観点から適切なアドバイスを受けられるだけでなく、あなたが不利になるリスクが軽減され、有利な条件で相続を進められる可能性が高まります。
多くの法律事務所では、初回相談を無料で実施しています。
まずは「ベンナビ弁護士」を活用して、気軽に専門家のアドバイスを受けてみることをおすすめします。
早期の相談が、円満な相続への第一歩となるでしょう。