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遺産相続には期限がある!手続きに必要なスケジュールも徹底解説

弁護士監修記事
遺産相続
2023年02月28日
2024年11月21日
遺産相続には期限がある!手続きに必要なスケジュールも徹底解説
この記事を監修した弁護士
小林 洋介弁護士 (翔和総合法律事務所)
遺産分割トラブルなどの紛争案件はもちろん、生前対策にも力を注ぐ。丁寧かつ具体的な解決策の提示に定評があり、一度だけでなくリピートで依頼する相談者もいるなど、厚い信頼を獲得している。
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遺産相続の手続きには期限が設けられていて、その期限を過ぎてしまうと税金の軽減制度が受けられず、場合によっては延滞税が発生する恐れがあります。

本記事では、遺産相続全体のスケジュールから手続きごとの期限などを解説します。

早期に手続きを終わらせるためにも、遺産相続に必要な手続きの期限をしっかりと理解しておきましょう。

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遺産相続の期限とは?手続きごとに紹介

遺産相続には、手続きごとに「期限があるもの」と「期限がないもの」があります。

遺産相続は「相続発生を認知した日」から期限がカウントされます。

期限のある手続きは、期限がすぎてしまうと税金の軽減制度が受けられず、ひどい場合は延滞税を支払わなければならなくなります。

期限がないものでも早めに終わらせたほうがいい手続きもあります。

想定外のトラブルが発生しても対応できるように、期限の有無に関わらずできるだけ早く手続きを終わらせましょう

遺産相続の全体スケジュール

被相続人が亡くなったことを知ってから7日以内に「死亡届」を出す必要があり、死亡届の提出後もタイトなスケジュール感でさまざまな手続きをしなければなりません。

遺産相続に関わるスケジュールを以下の表のようにまとめ、手続きの具体的な期限を解説していきます。

遺産相続の全体の流れを把握し、あらゆる手続きを同時進行で進められるよう期限に余裕を持って進めていきましょう。

 

期限の目安

手続きの内容

1

死亡を知った時から7日以内

死亡届の提出

2

死亡を知った当日〜2日程度

・死体火葬許可申請書

・親族等への連絡

・葬儀の準備

3

死亡日から数えて

14日以内(国民年金)

10日以内(厚生年金)

被相続人の年金受給停止の手続き

※被相続人の年金の支払日の翌月から5年以内に未年金支給請求の届出

4

死亡日から14日以内

・被相続人の介護保険資格喪失届の提出

・世帯主変更届の提出

5

死亡日から目安1ヵ月以内

・遺言書の確認

・遺言書の検認手続の着手

・法定相続人の確定

・相続財産の調査

・遺産分割協議の着手

【3ヵ月以内】相続放棄

相続放棄とは、相続人が受け取れるプラスの財産とマイナスの財産の全ての相続を放棄する手続きです。

被相続人の負債が財産よりも上回っている場合によく利用されます。

一般的に相続放棄の期限を過ぎれば、原則として相続放棄ができません。

また、相続放棄の手続をおこなったとしても、被相続人の遺産を勝手に処分してしまった場合には相続を承認した扱いの「法定単純承認」となり、相続放棄ができなくなります。

相続放棄の期限にあたる「相続の発生を認知した日から3ヵ月」を超過していても、「被相続人の遺産に負債が発覚した日から3ヵ月」であれば、相続放棄が認められるケースもあります。

被相続人の遺産、負債の状況がわからない場合、家庭裁判所に申し立てすれば、調査期間として相続放棄の期限を3ヵ月間延長してもらえます。

【3ヵ月以内】限定承認

限定承認とは、被相続人のプラスの財産の範囲内で負債などのマイナスの財産を相続する手続きです。

限定承認をするには、相続開始を知ってから3ヵ月以内に家庭裁判所で申し立てをする必要があります。

限定承認は、相続人全員が合意しなければ手続きできません。

また、手続きも複雑で時間がかかるためあまり利用されていないのが実情です。

被相続人の財産を把握できれば安易に限定承認しようとするのではなく、財産と負債を比較して相続するか相続放棄するのか検討したほうが現実的でしょう。

【4ヵ月以内】準確定申告

被相続人が亡くなってから4ヵ月以内に、準確定申告をおこないましょう。

準確定申告とは、被相続人の亡くなった年の確定申告を相続人でおこなう手続きです。

基本的に被相続人に確定申告する必要がなければ、準確定申告は不要です。

個人事業を行っていた場合や証券会社に一般口座を保有していた場合などは準確定申告をしなければいけません。

今まで確定申告が不要だった場合でも生前に不動産の売却を行っていれば、譲渡所得が発生し、準確定申告する必要があります。

また、準確定申告の4ヵ月を過ぎてしまうと、申告終了までの超過期間に応じて延滞税・無申告加算税が加算されるため気をつけましょう。

【10ヵ月以内】相続税の申告・納付

相続人が被相続人の遺産を取得した際、一定の額を上回れば10ヵ月以内に相続税を申告・納付しなければなりません。

平成25年より「3,000万円+(相続人の人数)×600万円」の基礎控除額が定められ、取得した遺産が基礎控除額を上回った場合、相続税が発生します。

10ヵ月以内に相続税の申告ができなかった場合、延滞税・無申告加算税・重加算税などが加算され、税金の軽減制度が利用できなくなります

相続税は取得した遺産に対して相続税が課税されるため、できるだけ相続税の申告期限までに遺産分割協議を終わらせるのが望ましいです。

遺産分割協議が完了していない場合は、税務署長から申告期限の猶予の許可をもらうか、遺産分割協議未了のため未分割という暫定的な申告をおこない、遺産分割協議完了後に修正申告をおこなうという対応が必要になります。

【1年以内】遺留分侵害額請求

遺留分侵害請求は、相続の開始及び遺留分侵害の贈与又は遺贈があったことを知った日から1年以内に権利行使の意思表示をする必要があります。

遺留分とは、配偶者や子どもなどの直系卑属、親や祖父母などの直系尊属に該当する相続人が最低限取得できる持分を保障する制度です。

遺言書などによって遺留分が侵害されていれば、遺留分侵害請求で最低限保障されている持分を請求できます。

遺留分侵害請求は相続が発生した日から10年経つと、相続の発生を認知していない場合でも時効になり、遺留分侵害額請求はできません。

【2年以内】死亡一時金の受取請求

死亡一時金の受け取り請求は、被保険者の死亡日から2年以内におこないましょう。

死亡一時金とは、国民年金保険料を納めた期間が 36 月以上で、老齢基礎年金、障害基礎年金を受けないまま死亡した際に、生計を同じくしていた遺族に支給されるものです。

死亡一時金を受け取れる相続人の優先順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順番になります。

相続の発生から2年以上が経過すると、時効になり死亡一時金が請求できません。

しかし、失踪宣告を受けた方の死亡一時金は、失踪宣告の審判確定日の翌日から2年以内に死亡一時金を請求をした場合、死亡一時金を受け取れます。

【5年10ヵ月】相続税の還付請求

払い過ぎた相続税は還付請求をすれば、戻ってくる場合があります。

期限は、相続の発生を認知した日から5年10ヵ月までです。

相続税を払いすぎる主な原因に「不動産評価の誤り」「特例や控除を適用せず計算した」「相続に詳しくない税理士やご自身の計算ミス」が挙げられます。

相続税を多く払い過ぎている可能性がある場合は、早めに相続税に詳しい税理士に相談しましょう。

【期限なし】遺産分割協議

遺産分割協議には、法的に定められた期限はありません。

遺産分割協議とは、遺言書がない場合などで、相続人同士で遺産の分割内容や分割割合の話し合いです。

多くの場合、遺産分割協議が終われば、話し合いの内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。

しかし、遺産分割協議が終わらなければ手続きできない期限があるものに「相続税の申告・納付」があります。

また、遺産分割協議中に相続人が亡くなった場合、さらに手続きが複雑になります。

話し合いがまとまるのは簡単ではないですが、早めに結論を出しましょう。

【期限なし】預貯金等の解約・名義変更

預貯金の解約・名義変更に期限はありません。

相続税の申告・納付がある方は、自ずと解約や名義変更をすることになります。

金融機関に被相続人が亡くなった旨を伝えると、被相続人の口座を凍結させます。

相続人が勝手に引き出してトラブルが発生するのを防止するためです。

凍結された口座は遺産分割が終わるまでは解除されません

手続きの期限もなく、銀行から連絡もこないため、ご自身で計画を立てて早めに対応しましょう。

【期限なし】不動産の相続登記

現在(執筆時令和4年)は相続登記に期限はないものの、令和6年から不動産の相続登記に期限が定められます

期限は、相続が発生し不動産の所有を認知してから3年以内です。

3年を超過した場合、10万円以下の過料を支払わなければならない可能性があります。

不動産の相続登記には必要書類も多く手続きに時間がかかります。

よくあるケースでは書類の収集に1ヵ月以上、手続き自体に1週間〜1ヵ月かかる場合があります。

想定外のトラブルも加味して、相続開始から手続き完了まで2〜3ヵ月かかるとみておいたほうがよいです。

遺産相続が期限内に終わらない場合のデメリットとは?

税金の軽減制度などが利用できない

10ヵ月以内に相続税の申告・納付ができない場合、下記の税金の軽減制度が受けられません。

  • 小規模宅地等の特例
  • 配偶者の税額軽減
  • 農地等の納税猶予の特例
  • 非上場株式等の贈与税の納税猶予及び免除の特例
  • 相続税の物納

遺産分割協議が相続税の申告期限までに終わっていなくても、申告期限内に未分割で申告することにより「小規模宅地等の特例」と「配偶者の税額軽減」は、相続税の申告期限後に修正申告できます。

しかし、相続税は軽減制度を適用しない税額で納付しなければならないため、できるだけ遺産分割協議は、相続税の納付期限までに終わらせましょう

相続税に延滞税が発生

延滞税とは期限までに納税されない際に、期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される税金です。

延滞税の利率は、納期限の翌日から2ヵ月ずつで変化し年によっても利率は変わります。

無申告加算税とは、納付しなければならない税額が50万円までの場合15%、50万円を超える場合はその超える分につき20%の税率で課されます。

相続税の申告・納付期限を超過するとがあります。

損をしないためにも相続税の申告・納付には、余裕のあるスケジュールでの対応をおすすめします。

遺産相続を期限内に終わらせるためには?

遺言書があるケースとないケースに分類し、遺産相続を期限内に終わらせる為のポイントを解説します。

相続が発生すれば、まず遺言書の有無を確認しましょう。

遺言書があるかどうかで今後の対応も変わります。

下記の方法を参考にし、相続をスムーズに進めて期限内に終わらせましょう。

遺言書が【ある】場合

遺言書がある場合、相続に詳しい専門家に相談すれば手厚いサポートが受けられます。

また、遺言書ですべての遺産についてその承継先が定められていれば、手間のかかる遺産分割協議は不要となります。

裁判所の検認が不要な法律文書にあたる公正証書遺言で、遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行補助をしてくれます。

また、裁判所の検認が必要な自筆証書遺言であれば、遺産整理サポートが可能で相続人の負担を軽減可能です。

遺言書が【ない】場合

遺言書が無く遺産や相続人が多い場合、相続に詳しい専門家に遺産整理を依頼しましょう。

遺言書が無ければ、相続人と遺産を明確にし、遺産分割協議をおこないます。

遺産分割協議をおこなう上で結論を出す際は、相続人全員の合意がなくてはなりません。

しかし、遠方に住んでいる場合や、なかなか合意が得られないケースも存在し、相続人の負担は大きくなってしまいます。

遺産整理をすれば、税理士や弁護士などのやり取りをする窓口を1本化し、負担を軽減できます。

また、遺産分割協議書の作成サポートを行ってくれるため、書類を不備なく作成可能です。

遺産相続の期限が過ぎてしまった場合の対処法

遺産相続の期限が過ぎた場合の対処法を2つご紹介します。

期限が過ぎても対処法を施せる可能性のある手続きがあります。

しかし、期限が過ぎた場合の手続きは複雑なものが多いです。

遺産相続の期限が過ぎれば、早めに専門家へ相談しましょう。

相続税の期限後申告書を提出

相続税の期限を超過した場合は、期限後申告書の提出が求められます。

相続税の申告・納付期限を超えると延滞税などが加算され、回避する方法はありません。

相続が発生した日から6〜8ヵ月が経過した際に税務署から「相続税の申告等についてのご案内」が送付され、税務調査が入るケースがあります。

税務調査が入れば、延滞税や無申告加算税が課されるケースが多いです。

相続税の期限を過ぎた際は、早めに相続に強い税理士に相談しましょう。

弁護士などの専門家へ相談

相続放棄の期限を過ぎた場合は、期限内に相続放棄申述ができなかった合理的な事情について上申書などを家庭裁判所に提出すれば、相続放棄できる可能性があります。

実際のケースでは、被相続人の借金や負債の発覚が遅かった場合などが挙げられます。

なお、上申書などを提出しても必ず相続放棄が認められる訳ではないため注意が必要です。

上申書などの提出による相続放棄は手続きが複雑です。

相続に詳しい弁護士や司法書士に相談しましょう。

弁護士に相談する場合は相続を弁護士に無料電話相談する方法|弁護士の選び方や費用の相場も解説をご覧ください。

まとめ l 遺産相続の期限を覚えておこう

遺産相続の各手続きの期限はかなりタイトです。

通夜や葬儀の準備で忙しくなれば、さらに相続人に負担がかかります。

また、相続に関する話し合いは相続人同士で揉める場合も多く、予期せぬ問題が起きるものです。

トラブルが発生し手続きの期限を過ぎれば、税金の軽減制度が利用できなくなり、相続税に延滞税や無申告加算税が加算されて損をしてしまいます。

ご自身の負担を減らすためにも専門家への相談がおすすめです。

専門家に依頼すれば複雑な手続きを不備なく正確に対処できます。

相続が発生すれば余裕のある計画を立てて、期限を守って相続を進めましょう。

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編集部
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