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遺産分割手続きの流れ|遺産分割の方法や手続きが必要ないケースを解説

弁護士監修記事
遺産相続
2023年02月28日
2024年04月25日
遺産分割手続きの流れ|遺産分割の方法や手続きが必要ないケースを解説
この記事を監修した弁護士
三上 貴規弁護士 (日暮里中央法律会計事務所)
早稲田大学法学部を卒業後、早稲田大学大学院法務研究科へ上位入学。第一東京弁護士会 所属。現在は日暮里中央法律会計事務所の代表弁護士を務める。(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)
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遺産分割は高額な財産が対象となることが多く、分割方法などをめぐって仲の良い親族であっても関係がこじれてしまうことがあります。

本記事では、遺産分割を円滑におこなうために必要な手続きの流れや、手続き前に知っておくべきポイントを解説します。

遺産分割の際に起きやすい問題もあわせて解説をしていますので、揉め事が起こらないように遺産分割の手続きをおこないましょう。

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遺産分割手続きの流れ

ここでは、遺産分割手続きの流れを解説します。

遺言書の有無を確認する

最初に遺言書が残されているか確認しましょう。遺言書が残されている場合は、原則として、遺産分割は遺言書の内容に従って進められます。

また、家庭裁判所の検認を受けるまでは開封してはならない遺言書もあるため注意が必要です。

遺言書が残されていない場合は、遺産分割協議の成立を目標に話し合いを進めていくことになります。

相続人を確定する

遺言書の有無を確認したら、相続人にあたる人を確定させます。

遺産分割協議は相続人全員で合意しなければ成立しません。したがって、話し合いがまとまった後に新たに相続人が確認された場合には、その人を含めて再度協議をおこなう必要が出てきます。

誰が相続人にあたるか調査する際には、被相続人の出生から死亡までの戸籍を取り寄せて、見落としをしないようにしましょう。

遺産を確認する

相続人を調査するのと並行して、遺産の調査もおこないます。

預金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も調査する必要があります。

遺産分割協議をおこなう

遺言書の有無や相続人・遺産が確定したら遺産分割協議を始めます。円滑に協議を進めるためには、過度な自己主張は控え、場合によっては譲歩する姿勢を見せることがポイントです。

遺産分割協議の成立には、全員の同意が必要ですが、必ずしも顔を合わせて話し合いをしなければならないわけではありません。

必要に応じて、メールや書面、電話などを利用しながら進めていきましょう。

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書は、話し合いの内容をまとめた書面で、相続後の言った・言わないなどのトラブルを回避できます。

不動産の登記手続きや預金の解約手続きなどにも必要になる書類のため、作成しておくべきです。遺産分割協議書に押印する場合は、実印でするのがよいでしょう。

話がまとまらない場合は調停・審判をおこなう

遺産分割協議で話し合いがまとまらない場合、遺産分割調停・審判を利用します。

調停は家庭裁判所の調停委員会が間に入って話し合いを進める手続きですが、審判は話し合いによる解決ではなく、家庭裁判所が遺産分割の内容を決定する手続きです。審判は話し合いで解決できない場合の最終手段といえます。

遺産分割調停について詳しくは遺産分割調停とは?申立から解決までの流れやメリットを解説をご覧ください。

遺産分割における3つの手続き

遺産分割の手続きには、「遺産分割協議」「遺産分割調停」「遺産分割審判」の3つがあります。

遺産分割協議で全員の合意が得られない場合は遺産分割調停をおこない、遺産分割調停でも合意に至らなければ、遺産分割審判をおこなうのが一般的な流れです。

3つの手続きの特徴や違いを理解し、スムーズに遺産分割を進められるよう準備しておきましょう。

1.遺産分割協議

遺産分割協議とは、相続人同士で話し合いをして遺産の分け方を決める手続きのことです。遺産分割協議では、「誰がどの遺産を相続するか」などが話し合われます。

民法で定められている各相続人の取り分とは異なる割合で分割することも可能です。ただし、協議を成立させるには、相続人全員が合意する必要があり、1人でも反対者がいれば協議を成立させることはできません。

また、話し合いの形式に制限はありませんが、相続人全員で話し合いをおこなわなければなりません。1人でも欠けていると協議を成立させることはできませんので、注意しましょう。

相続人に未成年者がいる場合は、親権者が法定代理人として協議に参加することになります。

ただし、親権者と未成年者が共に相続人になる場合など利益相反が生じるケースでは、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければなりません。

2.遺産分割調停

遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員会が間に入って話し合いを進める手続きです。あくまで、話し合いによる合意を目指す手続きで、遺産分割協議と同様に全員の合意により成立します。

調停委員会は中立の立場で、各相続人の希望や意見、提出された資料等を踏まえて、解決案の提示や助言をおこないます。調停委員会の提案は、必ずしもご自身の希望と一致するとは限りませんので注意しましょう。

また、遺産分割調停は1ヵ月に1回程度のペースで数回おこなわれる場合が多いため、話し合いがまとまるまでに時間がかかる可能性があります。

3.遺産分割審判

遺産分割審判では、家庭裁判所が分割の内容を決定します。遺産分割調停が不成立となった場合、自動的に遺産分割審判へと移行します。

遺産分割審判は、遺産分割協議・調停とは異なり、話し合いによる解決を目指す手続きではありません。提出された資料や情報をもとに、家庭裁判所が遺産分割の内容を決定します。審判の内容に不満がある場合には、不服申立てをすることができます。

遺産分割における4つの分割方法

遺産を分割する方法は「現物分割」「換価分割」「代償分割」「共有分割」の4つです。この中から相続人の状況に合った分割方法を選ぶ必要があります。

分割方法を理解しておかないとトラブルに発展する可能性もあります。しっかりと理解しておきましょう。 

1.現物分割

現物分割とは、遺産を現物の状態のまま分割する方法です。土地などの物理的に2つ以上に分けられる財産を分割する場合にも利用できます。

具体的には、土地は相続人A、預金は相続人B、株式は相続人Cといった形で分割する場合や、300万の預金を100万円ずつ相続人A 、B、Cで分割する場合などです。

シンプルな分割方法であり、わかりやすいのが特徴です。遺産分割の原則的な方法ともいえます。

しかし、それぞれの遺産の価値に差があると、公平性に欠けてしまう欠点があります。また、土地を2つ以上に分割するのが困難な場合もあります。

2.換価分割

換価分割とは、現金以外の遺産を売却し現金に換えた上で、その現金を分割する方法です。具体的には、土地を売却して、その売却代金を各相続人に分配するような形です。各相続人の受け取る金額は遺産分割協議で決めます。

たとえば、土地を現物で分割しても距離が遠く活用することが難しい人がいる場合などは、公平性に欠けるといえます。このような場合でも、換価分割は遺産を現金化して分配するため、公平性を高めることができます。

しかし、買い手が見つからなかったり、希望金額で売れなかったりなどのトラブルが生じる可能性があります。また、遺産を売却せず引き続き利用したい場合には不向きな分割方法です。

3.代償分割

代償分割とは、1人又は数人の相続人に相続分を超えた遺産を相続させる代わりに、他の相続人に対して代償金を支払わせる方法です。

具体的には、相続人2人で1000万円の土地を分割する場合に、相続人Aが単独で土地を相続する代わりに、相続人B対して500万円の代償金を支払うような形です。

遺産を売却せずに現金で調整できるというメリットがあります。

しかし、遺産を相続する人は代償金を支払う必要があるため、負担が増えてしまう可能性があります。代償金を受け取る側も支払いがされないリスクがありますので、注意しましょう。

4.共有分割

共有分割とは、不動産等の遺産を複数の相続人で共有する形で分割する方法です。具体的には、相続人2人で土地を2分の1ずつの共有とするような形です。遺産の形を変えずに共同で所有することになるため、比較的話し合いがまとまりやすく公平に分割できます。

しかし、共有となった財産自体を後に売却する際などには、共有者全員の同意が必要になるため、財産の自由度が低くなります。

また、共有者の1人が亡くなった場合、その人の相続人との共有になる可能性があります。このように、共有分割は、後のトラブルの火種になる可能性がある分割方法といえます。

遺産分割の手続きの前に知っておくべき4つのポイント

遺産分割の手続きをおこなう前に知っておくべき4つのポイントがあります。ポイントを押さえておかないと、遺産分割がスムーズに進まなかったり、ご自身が損をしたりする可能性があります。

遺産分割はトラブルになりやすいデリケートな事柄です。事前にポイントを把握し、適切に手続きを進めましょう。

1.遺産分割協議がまとまらない時は裁判所を活用

遺産分割協議で相続人同士の話し合いがまとまらない場合、前述のとおり、家庭裁判所の遺産分割調停・審判を利用しましょう。

相続人同士の協議がまとまらない場合、お互いに譲りたくない気持ちが強く、やや熱くなりすぎていることが多いです。

遺産分割調停を利用すると、調停委員会が中立の立場で話し合いの場に加わるため、冷静に話し合いを進められる可能性があります。

また、遺産分割審判が下された場合には、原則として、その判断に従わなければなりません。話し合いが泥沼化した場合、審判という形で家庭裁判所に決着をつけてもらいましょう。

2.プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合の対処法

遺産には、被相続人が残したプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産が含まれている場合もあります。

プラスの財産がマイナスの財産よりも多ければ相続後に返済する余地がありますが、マイナスの財産がプラスの財産よりも多ければ、返済の目処が立たない借金を背負う可能性があります。

遺産相続でプラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合の対処法をご紹介します。

相続放棄をおこなう

相続放棄をすれば、相続権がなくなり、プラスの財産もマイナスの財産も相続しなくなります。相続放棄は家庭裁判所への申述によっておこないます。

しかし、一度相続放棄が受理されれば、撤回できないため慎重に検討しましょう。

単純承認にならないように注意

単純承認とは、プラスの財産もマイナスの財産も全て引き継ぐという意思表示のことです。

相続人は、原則として、ある人が死亡して自分がその人の相続人であることを知った時から3ヵ月の間に、「単純承認」、「限定承認」、「相続放棄」の3つの中から1つを選択する必要があります。

何もせずに3ヵ月が過ぎた場合、単純承認をしたものとして取り扱われ、プラスの財産もマイナスの財産も全て引き継がなくてはなりませんので注意が必要です。

また、遺産に含まれている現金を使うなど遺産の全部又は一部を処分した場合も、原則として、単純承認をしたものとして取り扱われます。

知らない間に単純承認をしたものとして取り扱われ、多額の借金を背負う羽目にならないように気をつけましょう。

3.遺言書に自分以外の人物に遺産を相続させると書いてあった場合の対処法

たとえば、遺言書に自分以外の人物に全ての遺産を相続させると書いてあった場合でも、一定の相続人には最低限の権利が保障されています。

このような遺言書が存在したとしても、冷静に対応しましょう。

一定の相続人には遺留分が認められている

遺留分とは、遺産に関して、兄弟姉妹以外の相続人に最低限保障されている権利のことです。

遺留分の割合は民法で定められています。

遺留分を侵害された場合は遺留分侵害額請求をする

遺留分を侵害された場合、その相手方に対し、遺留分侵害額請求をすることができます。たとえば、遺言書に「Aに全ての遺産を相続させる」と書いてあった場合、Aに対して遺留分侵害額請求をおこない、侵害されている遺留分に相当する金銭の支払を求めることになります。

遺留分侵害額請求には、相続開始と遺留分を侵害する遺贈等を知ってから1年間という期間制限(時効)があります。この1年を経過すると時効となり、遺留分侵害額請求をすることができません。

このように、遺留分侵害額請求の時効は非常に短いため、早めに弁護士に相談するのが賢明です。

4.遺産分割後に遺言書が見つかった場合はどうなるのか?

遺産分割後に遺言書が発見された場合、原則として、遺言書の内容が優先されます。

このような場合には、どのように対応するべきか弁護士に相談してみるのがよいでしょう。

遺産分割の手続きが必要ないケースもある

遺産分割手続きは、必ずおこなう必要があると思われがちですが、中には遺産分割手続きをおこなわなくてもよいケースもあります。

遺言書がある場合

被相続人が亡くなる前に遺言書を残していた場合、原則として、遺産分割は遺言書の内容に従って進められます。この場合、遺産分割協議は必要ではありません。

ただし、相続人全員の同意がある場合には、遺言書の内容と異なる遺産分割をする余地があります。この場合、遺産分割協議が必要になります。

遺言書を発見したら開封せずに、家庭裁判所に提出して、検認を請求しましょう。

公正証書遺言以外の場合、原則として、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。検認前に開封するなど検認の手続きを怠ると、5万円以下の過料に処すると民法で定められています。

相続人が1人の場合

相続人が1人の場合、原則として、全ての財産を1人で相続できるため、遺産分割の手続きは必要ありません。

相続人がいない場合

相続人がいなければ、遺産分割協議はおこなわれません。

相続人が存在しない場合、被相続人と特別な縁故があった者(特別縁故者)に財産が分与されることがあります。

なお、最終的に残った財産は国庫に帰属するとされています。

遺産分割で揉めないために弁護士への依頼も検討する

遺産分割の流れや手続きをおこなう前に知っておきたいポイントを解説してきましたが、手続きが面倒な方は弁護士への依頼がおすすめです。

遺産分割協議は相続人全員で合意しなければ成立しないため、顔を合わせたくない親族がいても長い時間話し合いをおこなわなければなりません。

弁護士に依頼すると一定の費用がかかってしまいますが、法律に沿って問題の解決に尽力してくれるため、トラブルの防止や話し合いがまとまりやすいなどの大きなメリットがあります。

費用がかかってしまっても遺産から補填することが見込めるのであれば、早めに弁護士に相談し、スムーズに遺産分割を済ませられるよう動いてみてはどうでしょうか。

弁護士への相談は遺産分割について弁護士に無料相談する方法|弁護士に依頼するメリットも解説をご覧ください。

まとめ|遺産分割は人間関係で揉めないようにスムーズに進めよう

遺産分割について解説しました。

遺産分割について正しく理解しておかないと、後のトラブルに繋がる可能性があります。遺言書や相続人が後から発覚すると、再度手続きをしなければならず、二度手間になってしまう可能性もあります。

本記事を参考に遺産分割について理解を深め、適切に手続きを進めていきましょう。ご自身での手続きが不安であれば、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。トラブルを回避して、スムーズな遺産分割を目指しましょう。

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編集部
本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
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