遺産分割でかかる弁護士費用はいくら?依頼内容別に解説
『ご依頼者の利益が最大限になるためのサポート』となることを心掛け、的確なアドバイスを伝えられるよう客観的視点を忘れず、日々、業務と向き合っている。
遺産の分割は遺言書がない場合は相続人のみでおこなわなければならないため、専門知識がない場合は多くの時間を有します。
手続きも複雑なため弁護士に依頼するケースも多くありますが、費用相場は果たしてどのぐらいなのでしょうか。
弁護士への依頼費用を理解していない場合、事後で多額の請求をされる可能性もあります。しかし、弁護士費用を適正に把握しておけば、依頼することのメリットにも目を向けやすくなるでしょう。
この記事では、遺産分割を弁護士に依頼する際の費用相場や内訳などを解説します。弁護士への依頼を検討されている方は参考にしてください。
遺産分割でかかる弁護士費用の相場
遺産分割の弁護士費用を調べると、事務所ごとの業務内容や相談料の違いが出てきます。
遺産分割を弁護士に依頼した場合、全ての費用を足せば約80万円〜100万円必要になります。しかし、費用内容は遺産の価値や内容によって大きく変動する可能性があるのであくまで目安にしかなりません。
弁護士への依頼費用は額面で目にすると高いと判断してしまいますが、どの項目にどれだけの費用が必要なのかを理解できれば、適正だと判断ができるでしょう。
弁護士への依頼費用の詳しい内訳とその説明をしていきます。
弁護士への依頼でかかる費用3つ
弁護士費用には大きく分けて6つの費用項目があります。遺産分割の場合は、遺産の価値によって費用が変動する項目もあるため、必要な費用の内容を理解しましょう。
相談料
弁護士に依頼する前の相談時にかかってくるのが相談料です。
相談料は30分ごとに5,000円で設定している法律事務所が多く見受けられます。相談内容によりますが、遺産分割の場合は30分から1時間程度で終えるケースが多いので、1万円程の予算をイメージしておけば良さそうです。
近年では法律事務所によって初回相談料を無料にしている事務所も多くなってきており、費用を節約したい場合や初めての相談の場合は初回無料がおすすめです。
弁護士への無料相談は遺産分割について弁護士に無料相談する方法|弁護士に依頼するメリットも解説をご覧ください。
着手金
着手金とは、弁護士が依頼を受け業務に取り掛かる際に支払う報酬のことを指します。
20万円〜30万円と設定している法律事務所が多い傾向です。
遺産分割の協議から調停に進むなどの業務追加の場合も費用を取らない事務所は増えてきていますが、弁護士が裁判所に出向く際は別途日当が発生することもあり、追加費用が必要なケースもあります。
また、着手金は業務に取り掛かる際に必要な費用となるため、依頼が失敗しても返ってくる費用ではないため注意しましょう。
報酬金
報酬金は、弁護士が依頼された業務をおこない、依頼者が得る利益額を元に請求される費用のことを指します。
報酬金は利益額によって支払う金額も異なるため、利益の何%に足して何円と設定している法律事務所が多いです。
多くの弁護士事務所が過去に定められていた「日本弁護士連合会報酬基準」を参考にしているところが多く、以下の利益額に対して報酬金を定めている事務所がほとんどです。
- 300万円以下の経済的利益|17.6%の報酬金
- 300万円以上3,000万円以下の経済的利益|11%+19万8,000円の報酬金
- 3,000万円以上3億以下の経済的利益|6.6%+151万8,000円の報酬金
- 3億以上の経済的利益|4.4%+811万8,000円の報酬金
【参考】 日本弁護士連合会報酬基準
日当
日当は、弁護士が出張した際に着手金に追加で支払う費用になります。
たとえば、遺産分割の協議が難航し調停に進んだ場合、裁判所に書類を提出しに行くなどの実稼働を伴う場合があります。こうした場合に発生する費用です。
日当は1日5万円程度が相場となっています。遺産分割の進み方では日当が発生しないケースもありますが、余裕を持って必要な費用に入れておくと困らないでしょう。
実費
実費とは、書類を送付する際の切手代金や印紙代など、依頼者が遺産分割でかかってくる費用を指します。
遺産分割の内容や進み方によって必要な費用は異なってきますが、遺産協議のみの場合は1万円〜3万円、遺産調停に進んだ場合は3万円〜5万円程度が相場になります。
しかし、裁判所の場所が遠方になった場合や交通費などが追加になる場合もあるため、多めに見積もって用意しておくと心配ないでしょう。
手数料
手数料とは、特殊な法令や裁判の調査をおこなわなければならない場合や、遺産協議書の作成など着手金とは別で依頼した場合に追加で必要な費用になります。
手数料は依頼する場合や、依頼内容によって費用相場が異なりますが平均的に5万円程度用意しておくと困らないでしょう。
しかし、調査業務をおこなう場合は5万円以上必要なケースもあるため、余裕を持たせておけば依頼がスムーズにおこなえます。
依頼内容別にかかる弁護士費用
遺産分割の弁護士費用は、依頼側の利益額で大きく異なりますが、事前に遺産の利益は計算すればある程度算出できるため、逆算して費用を把握しておきましょう。
ここでは、弁護士に依頼する分野別に必要な費用相場を解説します。
遺言書の執行費用
被相続人による遺言書があった場合、その遺言書に基づき遺産分配をおこなわなければなりません。遺言書の執行とは、遺言書通りに遺産分配がされるように執行することを指します。
遺言書の執行費用は、遺産額や相続人の人数などによっても変動します。
遺言書の執行も過去に定めのあった「日本弁護士連合会報酬基準」を今でも採用している法律事務所がほとんどです。
- 300万円以下であれば30万円
- 300万円~3,000万円の部分については遺産の2%
- 3,000万円~3億円の部分は1%
- それ以上の部分は0.5%
分割協議費用
遺産分割の話し合いを、弁護士に代理人として協議をおこなってもらうことが可能です。遺産相続ではこの遺産分割の協議の際に口論などのトラブルになることが多いため、弁護士を代理人に立てることが多いです。
遺産分割の協議には着手金と報酬金が発生するため、高額な費用になるケースがほとんどです。
しかし、遺産分割の協議は非常に時間がかかるので、トラブルの長期化からストレスを抱えてしまう方もいるため、依頼するケースが増えています。金銭面ではなく、自分にとってのメリットが高いと考える方が多いことも事実です。
遺留分侵害費用
遺留分とは、遺言内容にかかわらず相続人が最低限相続できる遺産のことを指します。仮に、他の相続人の勘違いや遺言書で極端な遺産の分配をされて損になっても、取り戻すことのできる権利になります。
しかし、遺留分侵害の請求は権利侵害の把握から一年以内におこなわなければいけないなどの成約が存在する他、申告内容も多いため費用は高額になります。
依頼するには、着手金と報酬金が必要になり、請求額や獲得額によって費用が変動します。
以下は多くの弁護士事務所の設定費用です。
- 300万円以下の経済的利益|8%の着手金|16%の報酬金
- 300万円以上3,000万円以下の経済的利益|5%+9万円の着手金|10%+18万円の報酬金
- 3,000万円以上3億以下の経済的利益|3%+69万円の着手金|6%+138万円の報酬金
- 3億以上の経済的利益|2%+369万円の着手金|4%+738万円の報酬金
【参考:日本弁護士連合会報酬基準】
相続放棄費用
被相続人の遺産が借金や債務などマイナスとなる財産が多い場合や、相続争いを避ける場合などにおこなう遺産放棄ですが、手続きが複雑なため弁護士に依頼する場合がほとんどです。
遺産放棄にかかる費用は、平均的に10万円程度の価格設定が多いようです。
しかし、遺産放棄をするかどうかの判断をするためには遺産の正確な調査が必要になります。
被相続人の遺産調査や相続人調査を弁護士に依頼すると追加料金がかかることを覚えておきましょう。
遺産分割で弁護士に依頼するメリット・デメリット
遺産分割で弁護士に依頼する場合は、ある程度の費用の準備が必要になります。
しかし、費用が高いといった観点に囚われすぎずに、費用に対する自身のメリット、デメリットを理解しておくと依頼すべきかどうかの指標になるでしょう。
遺産分割で弁護士に依頼するメリット、デメリットを詳しくみていきましょう。
メリット1.精神的ストレスの軽減になる
遺産分割で弁護士に依頼する一つ目のメリットは、協議などの場面で代理人として出向いてくれることでしょう。
相続人は親族の場合が多く、知った相手とトラブルになることは精神的なストレスに繋がります。また、長い時間をかけて何度も協議をおこなうため、争う相手と顔を合わせるのは想像以上のストレスになります。
代理人として弁護士に協議してもらうことにより、相手と直接顔を合わさずに協議を進められるメリットがあります。
メリット2.適切な分割割合を知っている
遺産分割は基本的に相続人同士の話し合いで分配額を決めますが、時には無理な分配を提示してくる相続人もいます。
分配割合の相場が分からない場合は、損をしてしまう可能性があります。弁護士は今までの知識と経験から、適切な分配額かどうかの判断ができるため損をしない協議をおこなえます。
しかし、弁護士にも知識や経験の差異があるため、依頼する場合は遺産分割に詳しい弁護士に依頼するようにしましょう。
メリット3.適切なアドバイスがもらえる
弁護士に依頼せず自分自身で遺産分割をおこなう場合は、手続きの書類作成から協議までを全て自分でおこなわなければなりません。
日常で相続について詳しくなる機会はほとんどありませんし、実働することによって自分の時間も削られてしまいます。必要以上の労力がかかることは言うまでもありません。
弁護士に依頼することにより的確なアドバイスや方法を教えてもらえるので、スムーズな遺産分割がおこなえます。
デメリット1.費用がかかる
弁護士に依頼する際に、大きな負担になるのはやはり費用です。
スムーズに遺産分割が進んだ場合でも一定の依頼費用は必要になってくる他、協議が長引いた場合は追加で費用がかかってくるケースもあります。
また、法律事務所によって依頼費用や着手金などの費用項目も異なります。費用が適切に設定されているか確認をおこなってから、依頼するようにしましょう。
弁護士に依頼をする場合は一定の金額は必要なものと理解しながら、金額に見合ったメリットや業務をおこなってくれるかで判断しましょう。
デメリット2.トラブルの激化
弁護士に遺産分割を依頼することによって、相続に関するトラブルがさらに激化することがあります。
一方の相続人が弁護士に依頼することにより、他の相続人も弁護士に依頼すると主張が衝突して協議が進みにくくなることが考えられるためです。
弁護士は依頼人の利益の最大化を目指すため相続人同士の主張が衝突することになります。結果的に協議が長引く他、関係性の悪化に繋がります。
遺産分割後も相続人が親族の場合は、顔を合わせる機会もあることから気まずさや、親族内での言い争いに発展しかねないため、注意しましょう。
まとめ|遺産分割を弁護士に依頼すれば安心
遺産分割は自分自身で全ての業務をおこない、相続人との話し合いで解決することも可能ですが、万が一のことを考えて弁護士に依頼すると安心です。
遺産問題はほとんどの場合でトラブルに発展し、精神的ストレスも想像以上です。そういった煩わしさから解放されることが大切な上、ストレスで自身が倒れたりなどしてしまったら元も子もありません。
自分自身と家族のためにも、迷わずに勇気を出して遺産問題に詳しい弁護士への依頼を検討しましょう。
弁護士へ相談する場合は相続を弁護士に無料電話相談する方法|弁護士の選び方や費用の相場も解説をご覧ください。