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相続放棄とは?手続きの流れや期限、必要な書類を解説

弁護士監修記事
遺産相続
2023年03月01日
2024年04月25日
相続放棄とは?手続きの流れや期限、必要な書類を解説
この記事を監修した弁護士
原 千広弁護士 (日暮里中央法律会計事務所)
東京大学法科大学院修了。東京弁護士会所属。離婚・相続等の家族案件から労働・国際案件まで幅広く携わり、Yahoo!ニュース等の記事監修も手がける。(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)
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財産の相続に関わることは人生でそう何度もありませんが、故人の残した財産を相続する際に多額の借金を相続しなければいけないケースも少なくありません。
あるいは、自分の考えで相続を放棄したいケースもあるでしょう。

本記事では相続放棄に必要な手続きから書類などを解説します。

手続き自体はそれほど難しくはありませんが、注意しておかなければトラブルに巻き込まれる可能性も考えられるので気を付けましょう。

相続に関する手続きが初めての方は特に自身でおこなう際の手続きや流れを抑え、スムーズに手続きを行なっていきましょう。

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相続放棄とは?

相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産の一切の相続権を放棄する行為です。
被相続人の財産には借金などの負債も含まれます。

相続放棄をおこなうと、預貯金や不動産などの相続人にとってプラスの財産も相続されませんが、マイナスの財産も相続されないため借金などの負債を回避できます。

相続放棄をするには、「相続放棄する」と意思表示するだけでは不十分です。

家庭裁判所に必要な書類を提出し、家庭裁判所が認めると相続放棄が完了します。

相続放棄の目的

相続放棄は、主に「借金などのマイナスの財産を相続したくない場合」や「相続トラブルの回避」、「事業承継などの理由による特定の相続人への全財産の相続」を目的に利用されます。

特別な理由がないのであれば、マイナスの財産が多くても相続放棄せずに、相続放棄と似た制度の「限定承認」の利用をおすすめします。

相続放棄と限定承認の違い

相続放棄と限定承認は、被相続人の財産を放棄する度合いが異なります。

相続放棄は、プラス・マイナスに関係なく、一切の財産の相続を放棄しますが、限定承認は、プラスの財産を超えない範囲でマイナスの財産を相続します。

限定承認を利用すれば、マイナスの財産を相続してもプラスの財産で相殺できるため、マイナスの財産しか手元に残らない事態を防止できます。

被相続人の財産がプラスかマイナスか明確になっていないケースでは、限定承認は有効な制度です。

しかし、相続人が一人でも申請できる相続放棄と違い限定承認は相続人全員で家庭裁判所に申し立てる必要があります。

また、限定承認の手続きは複雑で、申立てをしてから手続きが終わるまでに1〜2年かかる場合もあるため、利用されるケースが少ないのが現状です。

相続放棄を選択すべきケース

相続放棄を選択すべきケースには、主に「故人の負債を被りたくない場合」と「相続トラブルに巻き込まれたくない場合」があります。

相続放棄をすれば、想定されるトラブルを回避できます。

故人の負債を被りたくない場合

故人の負債が大きく、明らかに返済できない場合は、相続放棄をして負債を回避できます。

また、故人が誰かの連帯保証人になっていた場合も相続放棄を検討するべきです。

一般的に、相続放棄を利用するケースの大半が、故人の負債を理由にしています。

相続トラブルに巻き込まれたくない場合

相続トラブルに巻き込まれたくない場合も相続放棄を検討したほうがいいケースに該当します。

相続人同士が遺産分割協議の際に、揉めてトラブルに発展するケースがあります。

しかし、相続放棄をすれば、最初から相続人ではない状態になるため、遺産分割協議に参加する必要はありません。

相続人同士の仲が険悪な場合や少ない財産で分け合うのが難しい場合、特定の人物に相続させたい場合には相続放棄は有効です。

遺産を相続するメリットよりも相続トラブルに参加しないメリットのほうが大きい場合は相続放棄を検討しましょう。

相続放棄を選択すべきではないケース

相続放棄を選択すべきではないケースを解説します。

相続放棄は、一度してしまうと撤回できないため慎重に検討する必要があります。

相続放棄を選択すべきではないケースを把握し、後悔がないようにしましょう。

限定承認が有効な場合

限定承認が有効な場合は、相続放棄をするべきではありません。

限定承認はプラスの範囲内でマイナスの財産も相続する制度です。
故人の財務状況が複雑で明確になっていない場合は、限定承認がおすすめです。

また、マイナスの財産しかないからといって安易に相続放棄をしてしまい、後から不動産を所持していたことが発覚して、相続放棄を後悔するケースもあります。

故人に負債もあるが、プラスの財産が見つかる可能性や、どうしても手放したくない財産がある場合は、可能な限り限定承認をおこないましょう。

相続をスムーズに完了させたい場合

相続をスムーズに完了させたい場合は、相続放棄は選択しないほうがいいでしょう。

相続放棄をおこなった相続人は、初めから相続人にならなかったものとなり、次順位の相続人がいる場合は、相続権が移ります。

相続権の移った人物に連絡できれば、スムーズに対応してもらえます。
しかし、連絡先がわからないなどの理由で連絡できなかった場合、被相続人の債権者などから突然、連絡がいって対応を求められます。

相続放棄によって相続人になった人物は、借金の催促がきても事前準備ができないため、対応のしようがありません。

相続放棄によって相続権が移った旨をスムーズに連絡できないが故に、急に借金の催促がくるため相続トラブルに発展するケースもあるのだということを想定しておきましょう。

相続放棄の手続きの流れ

相続放棄の手続きの流れを解説します。

相続放棄の手続きを開始して、家庭裁判所に受理されるまでの期間は1〜2ヵ月かかります。

家庭裁判所や状況に応じて、手続きにかかる期間は前後するため、注意が必要です。
相続放棄は慎重に検討すべきですが、相続放棄には手続きの期間制限があるため、あまり時間はありません。

事前に相続放棄の流れを理解して、スムーズに手続きを終わらせましょう。

必要な費用を準備する

まず、相続放棄の手続きをするための費用を用意しましょう。
必要な費用は「収入印紙代800円」「郵便切手代(数百円)」「戸籍謄本取得の代金(数千円)」の3つです。

自分で手続きをおこなう場合、費用はかなり抑えられるように感じます。

しかし、実際には書類の郵送費や交通費もかかるため、想定するほど安くならない場合が多いです。

平日に手続きする必要があるため、仕事がある場合は、休んで行かなければなりません。

相続放棄の費用については相続放棄の費用相場|自分での手続きと弁護士への依頼の違いを解説をご覧ください。

必要な書類を準備する

費用が準備できれば、相続放棄に必要な書類を準備していきます。一般的に、相続放棄に必要な書類は以下の6つです。

  • 相続放棄申述書
  • 相続放棄をする人の戸籍謄本
  • 亡くなった方の住民票又は戸籍の附票
  • 亡くなった方の戸籍謄本
  • 収入印紙
  • 郵便切手

集める戸籍謄本は相続の条件によって異なりますが、「相続放棄申述書」は必ず必要です。

相続放棄申述書を用意するには、家庭裁判所に取りに行くか、裁判所のホームページからダウンロードする必要があります。

また、相続放棄をおこなう人が未成年の場合、親権者や後見人などの法定代理人等が手続きをしなければならないため、注意しましょう。

相続放棄申述書に必要事項を記入する

相続放棄申述書が用意できれば、必要事項を記入し捺印をしましょう。
不備があると受理されないため、注意して書き進めていく必要があります。

裁判所のホームページに正式な記載方法が明記されていますので、こちらを参考に記入を進めてみてください。

【参考】相続の放棄の申述書(20歳以上)|裁判所

家庭裁判所に必要書類を提出する

相続放棄申述書への記載が終われば、収集した戸籍謄本と共に家庭裁判所に提出します。

提出方法は、「郵送」か「直接家庭裁判所に提出するか」です。
故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出する必要があるため、注意が必要です。

また、必要な費用の用意から家庭裁判所に必要な書類を提出するまでにかかる期間は、1日〜1週間です。

必要な戸籍謄本の種類が多い場合や書類を郵送でやり取りする場合は、もう少し日数が必要になります。

家庭裁判所から届く「照会書」に必要事項を記入し返送する

相続放棄の申述後、約2週間が経過すると家庭裁判所から「照会書」が届くので、必要事項を記入し返送しましょう。

照会書とは、「死亡を知った時期」や「相続放棄の理由」などの家庭裁判所からの質問事項が書かれたものです。

照会書の回答次第では、相続放棄が却下される可能性もあります。
一度却下されると基本的に相続放棄を再申請できないため、気をつけて記載をおこないましょう。

こちらも裁判所のホームページに詳しい照会方法が記載されていますので、参考にしてください。

【参考】相続放棄・限定承認の申述有無の照会方法について|裁判所

「相続放棄申述受理通知書」が家庭裁判所から届く

申請書の回答に問題がなければ、約1週間〜10日ぐらいで家庭裁判所から相続放棄申述受理書が届きます。

相続放棄申述受理書が届いた場合、相続放棄が認められており、手続きは完了となります。

相続放棄手続きの流れについて詳細は相続放棄手続きの流れ|自分でおこなう方法と弁護士に依頼するメリットを解説をご覧ください。

相続放棄の手続きの【6つ】の注意点

相続放棄の手続きには、6つの注意点があります。

相続放棄は、申請を却下されると基本的に再申請できないため、慎重に進めなくてはなりません。

注意点を把握し、正しく手続きを進めましょう。

1.相続放棄には期間制限がある

相続放棄をするには、相続の開始を知ってから3ヵ月の期間制限があります。

3ヵ月を過ぎても相続放棄しなかった場合、プラスの財産とマイナスの財産の両方を相続する単純承認扱いになります。

3ヵ月以内に「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つから選ばなくてはいけません。
3ヵ月を過ぎそうな場合は、家庭裁判所に申請して認められると、期間制限を延長できます。

また、期間の延長も申請せずに3ヵ月が過ぎても具体的な理由があれば、相続放棄できる可能性があります。

認められやすい決まった理由はなく、事案に応じて判断されます。

しかし、「多忙」が理由の場合、自己都合だと判断されやすいため、認められるケースは少ない傾向にあります。

2.相続開始前に相続放棄はできない

故人の生前での相続放棄はできないため、注意しましょう。

相続放棄は法律上で「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」と定められているため、家庭裁判所は、相続開始前の相続放棄を受け付けていません。

相続放棄をする旨の記載がある念書や誓約書を書いても公的に認められないため気をつけましょう。

3.生命保険金や遺産年金などの受取りについて

遺族年金は受取可能ですが、生命保険金はケースによって受け取っていいものかどうか異なります。

本来受け取ってはいけない保険金などを受け取った場合、相続したのを認める行為にあたる単純承認事由に該当します。

単純承認事由に該当すると、相続放棄の手続きができなくなります。
また、相続放棄が受理された後に発覚すれば、相続放棄は無効になる恐れがありますので事前に確認をおこないましょう。

基本的に、相続放棄しても受け取っていいかどうかの判断は、指定されている受取人で決まります。

受取人が故人本人になっている場合、相続財産に分類されるため相続放棄している場合には受け取ってはいけません。

4.相続放棄と代襲相続の関係性

相続放棄した場合は代襲相続(だいしゅうそうぞく)は起こりません。
代襲世襲とは、相続がはじまった段階で相続人が既に亡くなっている場合に亡くなった相続人の下の代の人が直接相続する制度です。

しかし、相続放棄をすれば、初めから相続権を有していなかったものとして扱うため、代襲相続は発生しません。

5.相続人全員が相続放棄した場合の財産の行方

相続人全員が相続放棄をした場合、プラスの財産が残っていれば家庭裁判所が選任した相続財産管理人が財産の調査をおこない処分、精算していきます。

故人の世話をしていた人や縁のあった人が特別縁故者として分与を受ける場合もあります。

精算後も残っている財産は最終的に国のものになります。
借金などのマイナスの財産は、債務者が亡くなると共に消滅します。

6.積立保険の解約返戻金を受け取ると、相続放棄できない場合がある

積立型の保険の解約返戻金を受け取ると、相続放棄できない場合があるため注意が必要です。

解約返戻金は、指定受取人について別段の定めをしていない限り基本的に亡くなった契約者に支払われるため、被相続人の財産になります。

被相続人の財産を受け取ってしまうと、単純承認事由となり、相続放棄ができなくなります。

被相続人に積立型の保険の解約返戻金がある場合は、受け取っても問題ないかどうか慎重な判断が必要です。

まとめ|相続放棄の手続きのポイント

相続放棄の手続きのポイントを解説しました。

相続放棄をすれば、借金などのマイナスの財産や相続トラブルを回避できます。
しかし、相続人同士の意見が一致していて限定承認が可能であれば、特別な理由がない限り相続放棄ではなく限定承認がおすすめです。

相続放棄の手続きは簡単ではなく、手続きの完了まで1〜2ヵ月かかります。
期間制限が3ヵ月以内で、被相続人の葬儀や財産調査に時間が取られてしまうと想定しているよりも時間は多くありません。

また、相続放棄を一度却下されてしまえば、基本的に再申請できないため、慎重におこなう必要があります。

自分でおこなうのが不安な場合や早く済ませたいときは、弁護士や司法書士など専門家への依頼をおすすめします。

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