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相続放棄手続きの流れ|自分でおこなう方法と弁護士に依頼するメリットを解説

弁護士監修記事
遺産相続
2023年04月24日
2024年04月30日
相続放棄手続きの流れ|自分でおこなう方法と弁護士に依頼するメリットを解説
この記事を監修した弁護士
黒井 新弁護士 (井澤・黒井・阿部法律事務所)
2002年 弁護士登録。15年以上の実績のなかで多くの相続問題に取り組み、その実績を活かし、相続分野における著書執筆や不動産の講演・セミナーへ登壇するなど、活動の幅は多岐に渡る。
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相続財産には亡くなった方の借金も含まれるので、返済義務を引き継ぎたくないときは相続放棄を検討してみましょう。

ただし、相続放棄は期限の到来が早く、短期間で財産調査を完了させる必要があるため、以下のような悩みも生じてきます。

  • 相続放棄はいつまでに手続きする?
  • 相続放棄は自分で手続きできる?
  • どんなときに相続放棄したらよい?
  • 相続放棄が間に合わないときの対処法はある?
  • 手続きを代行してくれる専門家はいる?

相続放棄は家庭裁判所で手続きをおこないますが、承認されたあとは撤回できないため、借金も含めた相続財産をすべて把握しなければなりません。

短期間の財産調査はハードルが高く、相続放棄してよいかどうかの決断も必要になるので、弁護士のサポートを受けておくとよいでしょう。

ここでは、相続放棄するときの手順や、弁護士に依頼するメリットをわかりやすく解説しています。

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相続放棄するときの手続きの流れ

相続放棄は以下の流れで手続きを進めます。

  1. 相続財産を調査する
  2. 相続放棄に必要な書類を準備する
  3. 家庭裁判所に相続放棄を申し立てる
  4. 照会書を返送する
  5. 相続放棄申述受理通知書の到着

相続放棄するときは家庭裁判所へ申し立てをおこない、相続放棄申述受理通知書が自宅あてに到着したら相続放棄の完了となります。

では、各手続きの具体的な内容をみていきましょう。

1.相続財産を調査する

相続放棄は遺産の全容がわからなければ判断できないため、以下のようにプラスの財産とマイナスの財産をすべて調査します。

  • プラスの財産:預貯金や現金、不動産や株式など
  • マイナスの財産:借金や未払金など

プラスの財産には預金通帳がないネット口座や電子マネーなどが含まれているケースがあります。

また、申込みから借入れまでネット完結する借金もあるので、郵便物やパソコン・スマホのメールも調べておきましょう。

亡くなった方の介護施設費用や入院費の未払金もマイナスの財産になるため、請求書も必ず調べてください。

2.相続放棄に必要な書類を準備する

相続放棄は「誰が相続放棄するか」で必要書類の種類が異なります。

以下の例は子供が相続放棄するときの必要書類ですが、亡くなった方の父母や兄弟姉妹など、相続順位が下位になるほど必要書類が多くなるので注意してください。

なお、亡くなった方を被相続人、相続放棄する人を申述人といいます。

  • 相続放棄の申述書
  • 被相続人の戸籍の附票または住民票除票
  • 申述人の戸籍謄本
  • 郵便切手
  • 800円分の収入印紙

相続放棄の申述書は裁判所のホームページからダウンロードできるので、成人用・未成年用のどちらかを選んでください。

また、相続放棄の申立先は「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」になるため、住所地の証明用として戸籍の附票などが必要になります。

なお、収入印紙は家庭裁判所でも購入できますが、郵便局で切手と一緒に購入したほうがよいでしょう。

【参考】成人用の相続放棄の申述書(裁判所)
【参考】未成年用の相続放棄の申述書(裁判所)

3.家庭裁判所に相続放棄を申し立てる

必要書類が揃ったら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出してください。

4.照会書を返送する

家庭裁判所へ必要書類を提出したあとは、1~2週間後に照会書が送付されるので、回答を記入して速やかに返送しましょう。

なお、照会書には「自分の意思で相続放棄しているか」「相続放棄する意思に変わりはないか」などの質問があるので、正直に回答してください。

5.相続放棄申述受理通知書の到着

家庭裁判所が相続放棄を受理した場合、照会書の返送から1~2週間程度で「相続放棄申述受理通知書」が自宅あてに送付されるので、これで相続放棄の手続きは完了です。

ただし、相続放棄申述受理通知書は再発行できず、あくまでも家庭裁判所が相続放棄を受理したことの通知に過ぎません。

債権者から「通知書では相続放棄したことの証明にならない」といわれたときは、家庭裁判所へ相続放棄受理証明書を交付請求しておきましょう。

相続放棄受理証明書を交付申請するときは、家庭裁判所に以下の書類を提出します。

  • 相続放棄受理証明申請書
  • 相続放棄申述受理通知書
  • 運転免許証などの本人確認書類
  • 申述人が未成年や被後見人の場合は法定代理人の本人確認書類
  • 郵送で申請する場合は返信用封筒と郵便切手

交付申請する際は、申請書に150円分の収入印紙を貼って提出してください。

【参考】相続放棄受理証明申請書の様式(裁判所)

相続放棄手続きを自分でおこなう際にかかる費用

相続放棄の手続きを自分でおこなう場合、以下のような費用が発生します。

【財産調査にかかる費用】

  • 預金口座の残高証明書の発行手数料:800~1,200円程度
  • 登記事項証明書の発行手数料:480~600円

【戸籍謄本などの取得費用】

  • 戸籍謄本:1通450円
  • 除籍謄本または改製原戸籍謄本:1通750円
  • 戸籍の附票:1通300円

【家庭裁判所への支払い】

  • 郵便切手代:500~1,000円分程度
  • 収入印紙代:800円分
  • 相続放棄受理証明書の発行手数料:150円

郵便切手代は裁判所によって異なるため、事前に確認してから購入してください。

相続放棄を選択したほうがよいケースとは?

相続放棄を選択する主な理由は以下のようになっています。

  • 亡くなった方に高額な借金がある場合
  • 相続争いに巻き込まれたくない場合
  • 相続したくない不動産などがある場合

相続放棄すると最初から相続人ではなかったことになるため、遺産相続には一切関われませんが、借金や不要な財産を引き継ぐこともなくなります。

相続の承諾によって不利な状況になるようであれば、相続放棄を検討してみるべきでしょう。

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相続放棄が難しいといわれる理由

相続放棄の申立てには期限が定められており、相続を承諾したことになる単純承認も成立しやすいため、慎重かつスピーディに対応しなければなりません。

想像以上にハードルが高い手続きになるので、相続放棄が難しいといわれる理由もよく理解しておきましょう。

相続開始から3ヵ月以内に手続きしなければならない

相続放棄するときは、相続開始から3ヵ月以内に家庭裁判所へ申し立てしなければなりません。

一見すると十分な期間に思えますが、相続開始直後は以下の手続きなどが発生するため、財産調査の時間を十分に確保できないケースがあります。

  • 通夜と葬儀
  • 初七日や四十九日法要
  • 遺品整理や香典返し、喪中はがきなどの準備
  • 遺言書の検認:自筆証書遺言がある場合
  • 年金受給権者死亡届の提出:被相続人が年金受給者だった場合
  • 世帯主変更届の提出:被相続人が世帯主だった場合
  • 社会保険の資格喪失手続き
  • 被相続人の準確定申告の準備:被相続人が事業主だった場合は4ヵ月以内に申告

国民年金は相続開始から14日以内、厚生年金は10日以内に年金受給権者死亡届を提出する必要があり、世帯主変更や社会保険の資格喪失手続きも14日以内が提出期限です。

財産調査の期間は実質的に1ヵ月~1ヵ月半程度になることが多いので、自分で対応できるかどうか、早めに判断する必要があります。

相続放棄の期限について詳しくは相続放棄の期限は3ヵ月 | 期間延長の方法と期限が過ぎてしまったときの対処法をご覧ください。

単純承認が成立すると相続放棄できない

遺産相続の承諾を単純承認といい、相続開始から3ヵ月を経過すると自動的に成立します。

ただし、被相続人の財産を私的に使ってしまうと、相続開始から3ヵ月以内でも単純承認が成立してしまい、相続放棄は認められなくなります。

ほかの相続人から圧力がかかるケースもある

相続放棄すると借金の返済義務は免除されますが、借金そのものがなくなるわけではなく、相続権ととともに次の順位の相続人に引き継がれます。

次の順位の相続人も相続放棄できますが、「こちらに借金の返済義務を回すな」と圧力をかけられるケースもあるでしょう。

相続放棄手続きを自分でおこなう際に押さえておくべきポイント

相続放棄には慎重な判断が必要になるため、以下のポイントを押さえておいてください。

相続放棄は郵送でも申し立て可能

相続放棄の申し立ては郵送でも構いませんが、期限が迫っているときは直接持込が確実です。

また、裁判官による審理がおこなわれるときは裁判所へ出向かなければなりません。

相続放棄した人の代襲相続は発生しない

相続放棄すると最初から相続人ではなかったことになるため、相続権がない人の代襲相続は発生しません。

なお、被相続人の親よりも先に子供が亡くなっており、孫が相続人に繰り上がることを代襲相続といいます。

相続放棄しても遺族年金や死亡保険金は受け取れる

遺族年金や死亡保険金は受取人固有の財産になるので、相続放棄しても問題なく受け取れます。

相続放棄は財産評価のあとに検討する

相続財産に不動産や非上場株式があるときは、まず財産評価を優先してください。

周辺環境が変化すると不動産の価格が上昇しているケースがあり、非上場株式も発行会社の業績次第では5~10倍になっている可能性があります。

不動産の評価額が借金を上回るようであれば、売却代金を返済に充ててもよいでしょう。

ただし、不動産を売却するときは相続登記を済ませておく必要があり、非上場株式は買い手が見つかりにくいので注意してください。

不動産の相続放棄について詳しくは不動産は相続放棄できる?全員が相続放棄するとどうなるかも解説をご覧ください。

全員が相続放棄しても財産の管理義務は残る

全員が相続放棄しても相続財産を放置するわけにはいかないので、債権者への分配が完了するまで管理義務は残ります。

相続人がいなくなったときは、債権者または家庭裁判所が選任した人が相続財産管理人となり、不動産などの売却代金を債権者へ分配します。

なお、相続財産管理の選任を家庭裁判所へ申し立てる場合、数十万~100万円程度の予納金が必要になるので注意してください。

相続放棄の手続きを成功させるコツ

相続放棄は以下のコツを押さえておくと成功しやすくなります。

家族で財産情報を共有しておく

相続開始前から家族で財産情報を共有すると、相続放棄だけではなく一般的な相続手続きもスムーズになります。

親の借金を子供が知らない、または知っているが残債がいくらかわかっていないケースはかなり多いので、必ず情報共有してください。

財産調査を家族と分担する

相続財産は以下のような調査が必要になるので、家族で作業を分担してください。

  • 被相続人の自宅調査
  • 金融機関や証券会社、保険会社への照会
  • 市区町村役場への照会:不動産の名寄帳や固定資産評価証明書など
  • 法務局への照会:登記事項証明書の交付申請
  • 借金の照会:信用情報機関のJICC、CIC、KSCに照会できます

期限に間に合わなかったときは高額な借金を引き継ぐことになるので、家族にも相続放棄の必要性を伝え、財産調査に協力してもらったほうがよいでしょう。

まとめ|自分で相続放棄できないときは弁護士に相談してみましょう

相続放棄は財産調査からスタートしますが、亡くなった方が遺言書や財産目録を作成していなかったときは、雲を掴むような作業になるでしょう。

ネット銀行の口座や証券口座、オンラインで手続きが完了する借金があると、高確率で財産調査から漏れてしまいます。

また、財産の価値がわからなければ相続放棄すべきかどうかの判断もできないので、不動産や株式の評価額計算も必要です。

相続放棄は原則としてやり直しできないため、財産調査できないときや判断に困ったときは、できるだけ早めに弁護士へ相談してください。

弁護士へ相談する場合は相続を弁護士に無料電話相談する方法|弁護士の選び方や費用の相場も解説をご覧ください。

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