交通事故の弁護士費用を安く抑える方法!相場や内訳・費用効果をわかりやすく解説
交通事故の被害者になった場合、加害者に損害賠償を請求できます。
しかし、希望どおりの金額が提示されるとは限りません。
よく調べないままに提示された示談金額で承諾してしまうと、高額な治療費や修理費、その他の損害も自己資金でカバーする羽目になってしまいます。
慰謝料や治療費などの示談金に納得できないときは、弁護士に解決を依頼できますが、問題は弁護士費用です。
一般的には「弁護士費用は高額」というイメージが強いため、なかなか相談に踏み切れない方もいるでしょう。
しかし、弁護士に依頼したことで、当初の示談金が2~3倍に増額されたケースは決して珍しくはありません。
この記事では、交通事故の弁護士費用について、一般的な相場や費用の内訳、安く抑える方法などをわかりやすく解説します。
交通事故の弁護士費用の相場
交通事故の問題解決を弁護士に依頼した場合、相談料や着手金、成功報酬などの費用がかかります。
しかし、各費用の相場はあまり知られておらず、高額なイメージが先行しているため、「お金の負担が大きいので相談できない」と考える方も少なくありません。
弁護士によっては法外な費用を請求するケースもあるので、一般的な弁護士費用の内訳や、各費用の相場を知っておくとよいでしょう。
交通事故の弁護士費用の内訳
弁護士費用の内訳には相談料や着手金、成功報酬などがあり、各弁護士事務所が自由に価格を設定できます。
一般的な相場は以下のとおりです。
良心的な弁護士は相談の段階でもきちんと説明してくれるので、正式に依頼するかどうかの判断材料になるでしょう。
なお、紹介する金額はあくまでも目安であり、実際の弁護士費用は事務所によって異なります。
依頼前に詳しい費用について確認するようにしてください。
相談料
最初に発生する弁護士費用は相談料です。
30分あたり5,000円~10,000円が相場となっています。
現在は初回のみ無料相談できる弁護士も多いので、インターネット検索で調べてみるとよいでしょう。
ただし、準備不足で相談すると、状況説明すら終わらないうちに時間切れとなってしまうため、事故状況や相談内容は事前に整理しておくべきです。
事故現場の地図や写真、車両の損害状況がわかる写真など、補足資料があれば簡潔に説明しやすくなります。
なお、現在はオンライン相談に対応している弁護士も増えているため、仕事が忙しい方や、事故によるケガで歩行が困難な方でも無理なく相談できます。
また交通事故の相談は交通事故の相談先は7つ!保険会社や日弁連交通事故相談センター等ケース別相談先をご覧ください。
着手金
弁護士に正式な依頼をしたときは、着手金が発生します。
交通事故の解決は、10万~20万円程度が相場となります。
着手金は問題解決の成否に関係なく支払うため、費用体系はしっかり確認してください。
また、着手金は依頼者が受ける経済的利益によって変わります。
経済的利益とは、弁護士の働きによって見込まれる金銭的な利益のことです。
民事事件について、一般的には以下のような金額に設定されています(旧日弁連報酬基準)。
【着手金の金額】
- 見込まれる経済的利益が300万円以下:8%
- 300万円超~3,000万円以下:5%+9万円
- 3,000万円超~3億円以下:3%+69万円
- 3億円超:2%+369万円
たとえば、見込まれる経済的利益の金額が250万円の場合、着手金は250万×8%=20万円となります。
着手金は依頼の段階で支払うため、手元資金が足りないときは、着手金無料の弁護士を選択してください。
ただし、「着手金無料=良心的」とは限らず、弁護士の信頼度やトータル費用も考慮する必要があります。
交通事故問題の解決実績や、実際に話してみて信頼できそうかどうか、様々な視点でチェックしておきましょう。
成功報酬
成功報酬も依頼者の経済的利益が基準となります。
成功報酬の経済的利益とは、弁護士の働きによって実際に得られた金銭的な利益を指します。
成功報酬の金額は、以下のように設定されています(旧日弁連報酬基準)。
【成功報酬の金額】
- 得られた経済的利益が300万円以下:16%
- 300万円超~3,000万円以下:10%+18万円
- 3,000万円超~3億円以下:6%+138万円
- 3億円超:4%+738万円
着手金がない場合には、10万~20万円程度の固定費を加算されることがあります。
たとえば、得られた経済的利益が250万円の場合、成功報酬は250万×16%=40万円となります。
なお、経済的利益の考え方は弁護士によって異なるので、相談の段階で必ず確認してください。
仮に示談金を50万円から100万円に増額できた場合、増額分の50万円を経済的利益とする弁護士もいれば、100万円とする弁護士もいます。
着手金も同じ考え方になるため、何をベースに費用設定しているのか、きちんと説明してくれる弁護士を選ぶべきでしょう。
実費や日当
弁護士費用の内訳には実費や日当もあります。
実費には、示談交渉にかかった費用や、各種手続きの代行費用などがあり、他にも通信費や交通費も発生します。
示談交渉にかかった費用とは、たとえば医師の診断書の発行料金が挙げられます。
実費や日当は発生の都度請求されることもあるので、ある程度の資金は確保しておくべきでしょう。
日当
弁護士が病院に出向いたり、示談交渉のために出かけたりしたときは、以下の相場で日当が発生します。
- 半日:3万~5万円程度
- 1日:5万~10万円程度
日当には移動距離や移動時間も影響しますが、事務所外で活動するときは、最低でも半日で3万円、1日の場合は5万円程度が必要となることが多いです。
通信費
交通事故の解決を弁護士に依頼した場合、加害者側とのやりとりに切手代や速達料金などの郵便料金が発生します。
これらが通信費として依頼者に請求される場合があります。
交通費
交通事故の問題を解決する場合、弁護士は被害者や加害者の自宅、事故現場、警察や病院などへ出向くため、交通費も請求されます。
移動手段に新幹線などを利用するケースもあるため、加害者の自宅や事故現場が遠方の場合は、日当と合わせてかなりの金額になる可能性があります。
また、グリーン車など、利用する座席のクラスによっても金額は変動するので、事前に確認しておくといいでしょう。
なお、小まめに連絡を取ってくれる弁護士であれば、高額な経費の発生も把握しやすくなります。
印紙代などの実費
加害者を相手に訴訟を起こすときは、裁判所へ支払う手数料として収入印紙が必要になります。
印紙代は訴訟する金額によって変わるので、詳しくは裁判所ホームページの「手数料額早見表」を確認してください。
印紙代は「訴えの提起」の列に掲載されています。
【参考サイト】手数料額早見表|裁判所
交通事故の解決は、本当に弁護士依頼がおすすめ?
交通事故や法律問題のQ&Aはインターネット上に多数掲載されており、弁護士への依頼を勧める回答も多いようです。
しかし、弁護士介入で希望どおりの損害賠償を獲得できたとしても、それ以上の弁護士費用がかかれば金銭的なメリットはありません。
示談交渉では加害者側の提示をすべて受け入れ、不利な条件でも当事者同士で解決した方が安上がり、という考え方もできるでしょう。
弁護士への依頼が本当におすすめなのか、以下のポイントも参考にしてください。
適正な過失割合を算定してくれる
交通事故の損害賠償を巡って示談交渉する場合、過失割合でもめてしまうケースが少なくありません。
過失割合は加害者側の保険会社が提示しますが、被害者にまったく非がなくても、もっともらしい理由で9対1や8対2を提示してくることもあります。
事実と異なる場合は反論するべきですが、決定的な証拠がなければ聞き入れてもらえない可能性が高いでしょう。
しかし、弁護士に依頼すれば適正な過失割合を算定してくれるため、不利な状況を覆すことができます。
過失割合は、得られる損害賠償額全体に大きく影響するものです。
また、重度の後遺障害が残ったときは高額な治療費もかかりますが、1割違うだけで自己負担がかなり増えてしまいます。
保険会社が提示する過失割合に納得できないときは、弁護士への依頼を検討してもよいでしょう。
示談交渉を任せられる
示談交渉は交渉力次第の側面があるため、自分が契約している保険会社に任せても、加害者側の保険会社に押し切られる可能性があります。
自分で直接交渉する方もいますが、相手は知識・経験ともに豊富なプロですから、映像などの決定的証拠や有力な証言などがない限り、形勢逆転は難しいでしょう。
また、交渉が苦手であったり、多忙なため時間の確保が難しかったりすると、示談交渉そのものが大きなストレスになってしまいます。
交渉がまとまらずに長期化する、あるいは加害者側に押し切られそうであれば、弁護士への依頼を検討する状況といえるでしょう。
弁護士の多くは優れた交渉人であり、依頼者の利益を最優先して活動するため、有利な条件で交渉決着となる確率が高くなります。
示談交渉については交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するべき6つの理由|交渉の流れも解説をご覧ください。
弁護士基準(裁判所基準)で慰謝料などを算定してくれる
交通事故の損害賠償額は自賠責基準、または任意保険基準によって算定しますが、人身事故の場合、自賠責基準には120万円の限度額があります。
任意保険基準の算定方法は非公開ですが、自賠責基準にわずかに上乗せした程度で、実際の裁判例の金額よりも低い金額を提示されるケースが一般的です。
一方、弁護士に依頼すると弁護士基準で慰謝料や休業補償を算定してくれるため、任意保険基準の2~3倍を獲得できる可能性が高くなります。
弁護士基準は過去の判例も参考にしているので、司法の決定に基づくもっともフェアな算定方法といえるでしょう。
弁護士以外が用いることは困難な基準ですが、損害賠償の大幅な増額を期待できる案件では、弁護士費用を差し引いても十分な賠償金が手元に残ります。
特に損害額が高額になるケースでは、弁護士基準を用いて交渉を進めるべきでしょう。
弁護士への依頼で損をしてしまうケース
弁護士に依頼すれば損害賠償の増額も期待できますが、獲得可能な金額よりも、弁護士費用が高くなってしまうと費用倒れになります。
以下のようなケースは費用倒れの可能性が高いため、事故の状況を詳しく弁護士に伝えておくことが重要です。
慰謝料を請求できない物損事故
物損事故の場合、人身事故ではないため慰謝料を請求できません。
慰謝料は、被害者が受けた苦痛への償いとして支払われるものです。
事故で破損したのが車両だけであり、ケガや死亡事故に至っていない場合は、慰謝料を請求できないケースがほとんどです。
仮に損害賠償を増額できたとしても、弁護士費用がそれを上回る可能性が高いでしょう。
物損事故にはこのような事情があるため、弁護士に依頼しても断られてしまうケースがあります。
被害者の過失割合が大きいとき
交通事故の被害者となった場合でも、自分の急ブレーキが事故を誘発していたり、赤信号の横断歩道を横断していたりすると、当然ながら過失割合は高くなります。
被害者にも過失があれば、その割合に応じて過失相殺されるため、賠償金が大幅に減額されてしまい、弁護士に依頼しても十分な費用対効果を期待できなくなります。
このようなケースは相談の段階でわかるため、自分にも明らかな過失があった場合は必ず弁護士に伝えておきましょう。
ただし、後遺障害が残ってしまい、自分側の保険会社から保険金を受け取る場合、後遺障害等級が支払額に大きく影響します。
弁護士が関わると後遺障害等級が認定されやすくなるため、むちうちによる後遺症などが残った場合は相談しておくべきでしょう。
後遺障害に強い弁護士については後遺障害に強い弁護士の特徴とは?探すための4つの方法も解説をご覧ください。
被害者が軽傷のとき
被害状況が全治1~2週間程度の軽傷であれば、慰謝料が増額されたとしてもわずかです。
費用倒れはほぼ確実なので、加害者への憎しみなど、感情論だけで弁護士に依頼しないように注意してください。
加害者が任意保険に加入していない
加害者が任意保険未加入であれば、自賠責保険しか適用されません。
自賠責保険には以下の上限が設定されています。
- 人身事故:120万円
- 死亡事故や後遺障害:3,000万円
- 常時介護が必要な後遺障害:4,000万円
甚大な被害があったとしても自賠責保険が賄ってくれない部分は被害者本人に請求するしかないため、加害者によほどの資力がない限り、弁護士に依頼しても費用倒れになってしまいます。
交通事故の弁護士費用を安くする方法
弁護士に依頼すると十分な費用効果を期待できますが、できれば少しでも安く抑えたいところです。
交通事故の被害者であれば尚更といえるでしょう。
以下のように対処すれば、弁護士費用を安くできます。
また、法外な料金を請求される可能性も低くなるので、ぜひ参考にしてください。
見積りをきちんと確認する
弁護士費用の体系は事務所によって異なるため、相見積もりをとって複数の弁護士を比較してみるのも一つの方法です。
料金設定を教えてくれない弁護士や極端に安い弁護士は、後から高額な費用を請求される可能性が高いため、依頼先の候補から外しておくべきでしょう。
正式に依頼する弁護士を決めた後も、見積りに不明な点があれば必ず問い合わせてください。
相場より高いと感じる費用であっても、根拠が明確であれば安心して依頼できます。
弁護士費用の総額を把握する
弁護士費用を安く済ませたいと考えて着手金なしの弁護士に依頼したものの、総額にはそれほど差がなかった、または却って高くなったというケースもあります。
着手金相当額を別の費用に組み入れている場合もあるので、弁護士に依頼するときは、トータル費用を把握しておくことも重要です。
できるだけ早めに相談する
ある程度示談交渉が進んだ段階で弁護士に依頼すると、相手側の保険会社から「過失割合は納得してもらったはずだ」などと、交渉中の発言を後から証拠として引き出される可能性があります。
時間が経てば事故状況を証言してくれる人の記憶も曖昧になり、ケガと事故の因果関係も証明しにくくなるでしょう。
このような状況で弁護士に依頼すると対応項目が増えてしまい、結果的に弁護士費用が高くなることがあります。
早めに弁護士へ相談しておけば、正式に依頼したときの弁護士費用を安く抑えられます。
交通事故の弁護士費用は一部を加害者に請求できる
原則として、加害者に弁護士費用を負担させることはできません。
ただし、裁判に勝訴したときは損害賠償額の10%程度を上乗せして請求が認容されるので、予備知識として知っておいてください。
弁護士特約を利用すれば弁護士費用が無料になる
弁護士特約とは、自動車保険や火災保険、クレジットカードのオプション機能です。
交通事故や法律問題が発生したときに、弁護士費用を保険会社が負担してくれるサービスです。
保険料は月300円程度が相場なので、誰でも利用しやすくなっています。
メリットや注意点は保険会社によって様々ですが、概ね以下のような内容になります。
- 300万円までの弁護士費用が無料
- 弁護士特約を利用しても保険料は上がらない
- 家族の交通事故でも弁護士特約を利用できることがある
- 弁護士特約は補償の対象範囲に気を付ける
次の項目でそれぞれ詳しく解説します。
300万円までの弁護士費用が無料
弁護士特約に加入すると、10万円までの相談費用と300万円までの弁護士費用を保険会社が負担するため、実質的に無料で弁護士に依頼できます。
保険会社によっては無料の弁護士紹介サービスもあり、交通事故であれば交通事故専門の弁護士を紹介してくれるので、自分で探す必要がありません。
また、遺産相続やパワハラ問題など、交通事故以外にも対応している保険会社もあり、弁護士に相談しても一定回数や一定時間までは無料になるケースがほとんどです。
自分側の保険会社が示談交渉できない「もらい事故」にも対応できるので、交通事故への備えもより強固になるでしょう。
弁護士特約を利用しても保険料は上がらない
通常、保険を使って事故により破損した車両などを修理すると、翌年の等級が下がって保険料が上がります。
しかし、弁護士特約を使っても翌年の等級に影響はないので、保険料が上がる心配はありません。
また、弁護士特約を活用して賠償額を増額したとしても、自動車保険の等級は下がらず、翌年の保険料が上がることもないので、結果として出費を抑える効果もあります。
家族の交通事故でも弁護士特約を利用できる
弁護士特約は家族が遭遇した交通事故にも対応できるため、1人が加入しておけば家族全員に補償が適用されます。
ただし、基本的には同居家族だけが補償の対象になるため、別居中の家族や、同乗していた第三者には弁護士特約を使えない可能性があります。
弁護士特約は補償の対象範囲に気を付ける
火災保険やクレジットカードの弁護士特約には、自動車や原付の事故に対応していないものが多いので、補償の対象範囲は必ず確認してください。
基本的には被害者になったときの補償なので、自分が加害者になってしまうケースにも備えるときは、個人賠償責任も付帯しておくことをおすすめします。
交通事故の被害で困ったときは早めに弁護士へ相談!
保険会社の担当者は示談交渉に手慣れており、過失割合などの算定方法も熟知していますが、基本的には自社の利益を優先します。
被害者に有利な条件はまず提示されないため、交通事故や法律の知識がないまま交渉に応じると、相場よりもかなり低い示談金になるでしょう。
しかし、弁護士が交渉相手になると、加害者側には大きなプレッシャーがかかるため、強引に示談交渉を進められる可能性はなくなります。
十分な慰謝料を獲得できるケースも多いので、交通事故の被害に遭ったときは、少しでも早く弁護士に相談しておきましょう。
なお、弁護士探しには、ベンナビ交通事故が便利です。
地域と内容を選択するだけで、自宅や職場の近くで活躍する弁護士を簡単に検索できます。ぜひ活用してください。