家の相続で後悔しないために!手続きの流れやポイント、自分でするリスクまで解説
- 「家の相続はどうすればいい?」
- 「家を誰が相続するかはどうやって決めるの?」
家に限りませんが相続手続きは難しく、手続きに失敗したり相続人同士でトラブルになったりすることは少なくありません。
家の相続をスムーズにすすめるには、相続に関する基本的な知識を把握しておきたいところです。
本記事では家を相続する手続きの流れや、家を誰が相続するか決めるときのポイント、家の相続手続きを自分でできるかについて解説しています。
相続手続きに不備があり遺産分割が不公平で損をしたり、トラブルになったりすることは少なくありません。
本記事を読めば、家の相続で後悔しないための知識を理解できます。
家を相続する手続きのおおまかな流れ
家は遺産のひとつであり、それだけ独立しているわけではありません。
そのため家を相続する際は、全ての遺産について相続手続きを進める必要があるのです。
以下、家を含めた遺産を相続する手続きのおおまかな流れを紹介します。
相続全体に関する手続きについて詳しく知りたい場合は、以下記事を参照ください。
【関連記事】相続手続きの流れ|手順・期限・必要書類をわかりやすく解説
1.遺言書が存在するか確認する
まずは遺言書があるかを確認します。
遺言書が存在するのであれば、原則として遺言書に従って遺産を分割することになるためです。
2.相続人を確定する
遺言書が存在しないか遺言書で遺産分割の方法が決められないケースも少なくありません。
その場合は、法律で相続権が認められた相続人(=法定相続人)全員が協議して、どのように遺産を分けるか決めることになります。
そのため、法定相続人が誰かをまず調べて確定する必要があるのです。
遺産分割後に、新しい法定相続人が見つかった場合は、改めて協議をし直さなくてはなりません。
3.相続財産がどのくらいあるか調べる
家を含めて相続財産がどのくらいあるかを調べて、財産目録というリストを作成します。
相続財産に含まれる代表的なものは以下のとおりです。
- 家や土地をはじめとした不動産
- 現金や預貯金
- 株式や債券をはじめとした有価証券
- 住宅ローンなどの借金
ご覧の通り不動産をはじめとしたプラスの財産だけでなく、住宅ローンなどマイナスの財産も含まれる点は注意ください。
4.遺言書がない場合は遺産分割協議をおこない家を誰が引き継ぐか決める
遺言書がない場合は、法定相続人全員の協議によって遺産をどのように分け合うかを決めます。
このとき家を誰が引き継ぐかも決めることになるのです。
遺産の分け方について合意ができたら、その内容を遺産分割協議書にまとめ相続人全員が署名・捺印します。
5.相続税を申告する(発生する場合)
家を含め遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続税が発生します。
そのため相続開始を知った日(基本は被相続人が亡くなった日)の翌日から10ヵ月以内に、相続税申告をすることが必要です。
基礎控除額は、以下の計算式にて算出できます。
| 3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=基礎控除額 |
たとえば法定相続人が3人であれば、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円になります。
相続税の詳しい計算方法や節税対策については、以下記事を参照ください。
【関連記事】
【早見表付き】相続税の税率は何%?計算方法・節税対策を解説
土地・不動産の相続税はいくら?計算方法や節税対策・注意点を解説
6.相続登記をおこなう
相続財産の分割方法が決まったら、家の名義を被相続人から相続する方へ変えなくてはなりません。
この手続きを相続登記と呼びます。
相続登記は2024年4月に義務化されており、放置すると過料が科せられる可能性があるので注意してください。
相続登記の方法については、以下の記事が参考になります。
【関連記事】相続登記の手続きは自分でやれる?必要書類や費用の目安、注意点などを解説
家を誰が相続するか決める際のポイント
家を誰が相続するかはどのように決めるのでしょうか。
以下、家の相続方法を決める際のポイントを見ていきましょう。
遺言書がないときは「法定相続人」が家を含む財産を相続するのが一般的
まずは、家を誰が引き継ぐかを見ていきましょう。
遺言書があれば、遺言書の内容に従い家を誰が引き継ぐかが決まります。
一方で遺言書がない場合は、民法で定められた「法定相続人」が家を含む遺産を引き継ぐのが一般的です。
法定相続人が誰になるかは、以下のように対象者と順位が民法で決められています。

配偶者は常に法定相続人となり、それ以外は最も相続の順位が高い人が法定相続人になります。
上図のとおり第1順位が子ども、第2順位が父母、第3順位が兄弟姉妹です。
子どもがいない場合は孫が、父母がいない場合は祖父母が、兄弟姉妹がいない場合は甥姪がその権利を受け継ぎます。
たとえば配偶者と子どもがいる場合は、父母や兄弟姉妹がいても、法定相続人になるのは配偶者と子どものみです。
法定相続人が「法定相続割合」の分だけ財産を相続する
家を含む遺産は、遺言書がない場合は法定相続人が引き継ぐのが一般的であることを見てきました。
次に問題となるのは、各法定相続人がそれぞれどのくらいずつ引き継ぐかです。
民法では法定相続人ごとに、遺産を受け継ぐ割合(法定相続割合)が以下のとおり決められています。

ご覧のように、法定相続人の組み合わせによって割合がかわる仕組みです。
配偶者には常に1/2以上の法定相続分が割り当てられ、組み合わせによって配偶者の法定相続分は全て・1/2・2/3・3/4となります。
配偶者がいない場合は、最も高い順位の法定相続人に対し全てが割り当てられるのです。
また、同順位の法定相続人が複数いれば、法定相続分を均等に分け合います。
たとえば法定相続人が配偶者+子ども3人(長男・長女・次男)の場合を考えてみましょう。
このケースでは、子ども3人に割り当てられる1/2を、長男・長女・次男が均等に分け合うことになります。
つまり長男・長女・次男は、それぞれ1/2×1/3=1/6ずつ法定相続分が割り当てられることになるのです。
家を含む不動産の分け方4種類
最後に知っておくべきポイントは、家を含む不動産の分け方です。
たとえば遺産が現金のみ1億円で、自分の法定相続分が1/4だったとします。
この場合は、自分が相続できる分は1億円×1/4=2,500万円であると簡単に算出できるでしょう。
次に遺産が現金8,000万円と、2,000万円の価値がある家(土地+建物)だった場合はどうでしょうか。
不動産は現金と違って、簡単に分けられません。
そこで家を含む不動産は、以下にあげる4つの方法で分けることになります。
現物分割|不動産などをそのままのかたちで相続人のひとりが相続する方法
現物分割とは不動産などの遺産を、かたちを変えることなく相続人のひとりがそのまま相続する方法です。
たとえば遺産に家が含まれているなら、相続人のひとりが家をそのまま相続します。
また土地を分筆して(複数に分割して)分け合う方法も、現物分割のひとつです。
現物分割はわかりやすく、ほかの分割方法に比べ手間のかからない点はメリットといえます。
一方で公平な分割が難しい場合が少なくない点がデメリットです。
たとえばひとつの不動産(土地+建物)が遺産の大部分を占めていて、法定相続人が2人以上いるとしましょう。
このとき、ひとりの法定相続人がそのままのかたちでその不動産を相続してしまったら、公平な相続ができなくなってしまうのです。
代償分割|不動産などを相続する代償として代償金を支払う方法
代償分割とは、特定の相続人が不動産を相続する代わりに、代償金を支払う方法です。
たとえば、以下の条件で考えてみます。
- 相続財産:5,000万円の価値がある家+3,000万円の預貯金(合計8,000万円)
- 法定相続人:子ども2人(兄+弟)
この場合、兄と弟それぞれの法定相続分は1/2ずつで、それぞれ8,000万円÷2=4,000万円ずつ相続する権利があります。
代償分割では、たとえば兄が家を相続する代わりに代償金として1,000万円を払うわけです。
こうすれば、弟も3,000万円の預貯金+代償金1,000万円=4,000万円を受け取ることになり、公平に相続ができることになります。
代償分割のメリットは、家など思い入れがある遺産をそのまま残せることと、公平な分割が可能である点です。
一方で、家などを相続する相続人が、高額な代償金を用意しなければならない点は、デメリットとしてあげられます。
また不動産などは、相続人同士で評価額で揉める可能性がある点も注意しなくてはなりません。
評価額によって、代償金の額も変わるためです。
換価分割|不動産などを現金化し分け合う方法
換価分割とは、不動産などを現金化して相続人間で分け合う方法です。
改めて、以下の条件で考えてみます。
- 相続財産:5,000万円の価値がある家+3,000万円の預貯金(合計8,000万円)
- 法定相続人:子ども2人(兄+弟)
この場合、換価分割では家を売却し、売却額5,000万円+3,000万円の預貯金=8,000万円を1/2ずつ(4,000万円ずつ)分け合うわけです。
このように換価分割は、公平に遺産を分配しやすいことがメリットと言えます。
一方で家などの不動産を売却することになり、手元に残らない点はデメリットです。
売却に時間がかかったり、売却のためにコストと時間がかかったりすると、相続人間でトラブルになる可能性もあります。
共有分割|不動産などを共有する方法
共有分割とは、不動産などを共有名義とする分割方法です。
たとえば家を相続する場合、その家を相続人間の共有名義とします。
共有分割のメリットは、公平に遺産を分割しやすい点です。
また売却などの手間がかからないことから、売却できなかったりコストがかかったりしてトラブルになることもありません。
一方で共有名義にすると、不動産などの売却や活用がし辛くなる点は注意する必要があります。
共有名義の不動産を売却したり活用したりするには、共有者全員の合意が必要です。
互いに意見が割れて、売却も活用もできず不動産が塩漬け状態になることが少なくありません。
また共有者の誰かが亡くなり相続が発生すると、不動産の権利者が増えてさらに売却や活用が難しくなります。
不動産の共有名義は、このように大きなデメリットがあることからおすすめできません。
家の相続では「配偶者居住権」にも注意が必要
家の相続については、2020年4月から設定できるようになった「配偶者居住権」にも注意しなくてはなりません。
配偶者居住権とは、相続開始時点で被相続人の配偶者が相続対象の不動産(家)に住んでいた場合、相続後も無償で住み続けられる権利です。
被相続人の配偶者は、配偶者居住権を遺贈か遺産分割協議、請求で取得できます。
以前は法定相続分に従い配偶者が家を相続した場合、以下例のようにその分だけ相続できる現金・預貯金が少なくなってしまいました。
【例】
- 被相続人:夫
- 相続人:妻・子ども(長男・長女)
- 相続遺産:市場評価額2,000万円の家と3,000万円の預貯金(合計5,000万円)
- 法定相続分:妻→1/2(2,500万円),長男・長女→1/2×1/2=1/4ずつ(1,250万円ずつ)
- この場合、妻が家を相続すると預貯金は2,500万円-2,000万円=500万円しか受け取れない
一方で配偶者居住権を取得すれば、家の所有権を子どもに渡したとしても、妻は一定期間もしくは終身的に家へ住み続けられるのです。
配偶者居住権が設定されていると、当然ですが家を処分するのが難しくなります。
たとえば配偶者居住権が登記されていれば、仮に家が売却されても配偶者はその家に住み続けられるのです。
買主が配偶者に対して、家賃を請求することもできません。
家を相続したあとの名義変更(=相続登記)に必要な書類
家の相続後に名義変更(相続登記)をするには、多くの書類が必要になります。
以下、ケース別で必要書類を見ていきましょう。
遺言書に従い相続した場合
遺言書に従って、家を相続した場合は以下の書類が必要になります。
- 遺言書※公正証書遺言及び遺言書保管法に基づく遺言書でない場合は、家庭裁判所の検認も必要
- 被相続人の除籍謄本※出生から死亡まで全てのもの
- 被相続人の住民票除票
- 家を相続する人の戸籍謄本※被相続人死亡日以降に発行されたもの
- 家を相続する人の住民票・固定資産課税証明書
- 登記申請書
- 相続関係説明図※戸籍の原本を還付してもらう必要がなければ不要
法定相続分どおりに相続した場合
法定相続分どおりに遺産分割をおこない、家を相続した場合は以下の書類が必要です。
- 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍※出生から死亡まで全てのもの
- 被相続人の住民票除票もしくは戸籍附票※登記簿上の住所から死亡時の住所への履歴がわかるもの
- 法定相続人全員の戸籍謄本・住民票・固定資産課税証明書
- 登記申請書
- 相続関係説明図※戸籍の原本を還付してもらう必要がなければ不要
遺産分割協議で遺産の分割方法を決定した場合
遺産分割協議によって遺産分割をおこない、家を相続した場合は以下の書類が必要です。
- 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍※出生から死亡まで全てのもの
- 被相続人の住民票除票もしくは戸籍附票※登記簿上の住所から死亡時の住所への履歴がわかるもの
- 法定相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書・固定資産課税明細書
- 家を相続する人の住民票
- 登記申請書
- 相続関係説明図※戸籍の原本を還付してもらう必要がなければ不要
- 遺産分割協議書
家を相続したあとの名義変更(=相続登記)にかかる費用
相続登記をする場合は、どのような費用がかかるのでしょうか。
以下、自分でおこなう場合と専門家(司法書士)に任せる場合にわけて見ていきましょう。
自分でおこなう場合
相続登記を自分でおこなう場合は、以下2つの費用がかかります。
【登録免許税】
- 家の固定資産税評価額×0.4%
※固定資産税評価額が5,000万円なら5,000万円×0.4%=20万円
【書類取得費】
- 数千円~3万円程度
※必要となる書類の種類と量による
専門家(司法書士)に任せる場合
相続登記の専門家である司法書士に任せる場合は、自分で手続きをする場合の費用に加え司法書士へ払う報酬がかかります。
司法書士に相続登記を依頼する場合の報酬相場は5万円~15万円程度です。
家の相続手続きは自分でできる?リスクは?
家の相続手続きは自分でできますが、リスクがあるのは否めません。
以下、具体的にどのようなリスクが考えられるか解説します。
必要書類の収集など手続きにはたいへんな時間と手間がかかる
調査や手続きに必要な書類を集めるためには、役所などで手続きをしなければなりません。
相続人が多くなるほど、時間と手間がかかり自分だけで対応するのはたいへんになるでしょう。
また役所の開庁時間は、たいてい平日日中に限られます。
会社員などで平日は普段働いている方の場合、わざわざ休みを取って手続きをしなくてはなりません。
被相続人が預貯金や保険、債券などをいくつも所有している場合、その情報を調べる手間もかかります。
相続人が多かったり争いがあったりすると手続きをすすめられなくなる
相続人が多かったり、相続人の間で争いがあったりすると、遺産相続の手続きをなかなかすすめられなくなります。
自分たちだけで合意をはかり、手続きをすすめるのが難しい場合が少なくないでしょう。
相続人同士の協議で合意できず、調停や審判といった裁判所の手続きまで必要になると、さらに時間と手間がかかることになります。
相続手続きでは難しい法知識が求められるシーンが少なくない
相続の手続きでは、難しい法知識が必要になるシーンが少なくありません。
相続の権利に関連する知識(相続権・遺留分など)や遺産分割協議書や登記申請書といった書類の作成方法など、求められる知識が多いです。
これらの知識が不足していると、知らないところで大きな損をしてしまったり、手続きに失敗してトラブルに発展したりしてしまいます。
手続きにミスがあり、やり直しになるなどで負担が増えることも多いでしょう。
いろいろな手続きに期限があり急がなくてはならない
相続手続きにはいろいろな期限があり、対応を急がなくてはならないケースも少なくありません。
相続手続きに関わる期限の代表的な例として、以下があげられます。
- 相続放棄の判断:相続開始から3ヵ月以内
- 準確定申告:相続開始から4ヵ月以内
- 相続税の申告及び納税:相続開始から10ヵ月以内
- 相続登記:相続で不動産を取得してから3年以内
仕事などで忙しい方などは、これら期限に間に合わせるため負担も大きくなるでしょう。
相続税を払い過ぎたり不公平な遺産分割に合意したりしてしまうリスクもある
相続税を節約できる特例などの優遇措置は複数あり、知らずに手続きをすすめれば相続税を払い過ぎたりしてしまいます。
また相続に関する自分の権利をきちんと把握していないと、遺産分割の内容が不公平でも気付かず合意して損をしてしまうこともあるでしょう。
交渉力が不足していて、利害関係のあるほかの相続人に言いくるめられ、損をすることも考えられます。
家の相続手続きを専門家へ任せたほうがよいケースの例
たとえば法定相続人が自分と母親だけなど少なかったり、平日などに時間が取れたりするなら、自分で手続きをしても問題ないかもしれません。
一方で、以下にあげるようなケースであれば、家の相続手続きを自分だけで進めるのはリスクが大きいです。
弁護士などの専門家へ、手続きについて相談・依頼することが強く推奨されます。
| 相続人が多い/相続人間で争いがある | 相続人の数が多かったり相続人の間で争いがあったりすると、相続手続きに時間がかかるうえに手続きがすすまなくなるおそれもあります。 |
|---|---|
| 忙しくて手続きの時間が確保できない | 相続手続きは時間がかかるうえに、手間もかかります。平日日中に役所などへ行く機会も多いので、忙しくて手続きの時間が取れない方は自分でおこなうのは難しいでしょう。 |
| 遺言書の内容が不公平 | 遺言が不公平であると、トラブルや争いになりやすいです。専門家へ相談してアドバイスを求めた方がよいでしょう。 |
| プラスの遺産だけでなく、借金などマイナスの遺産も多い | 被相続人が借金を残した場合、相続人はプラスの財産だけでなくそれも相続することになります。相続放棄には期限があり速やかに決める必要があるうえに、その判断は難しいです。 |
さいごに|家の相続手続きは専門家へ相談を!
家を相続するには、家を含む相続財産全体の手続きを進めなくてはなりません。
家の相続手続きをスムーズに進めるためには、相続全体の流れなど相続に関する基本的な知識が求められます。
また相続人同士でトラブルになったり相続財産が多かったりする場合は、より専門的な知識や高い交渉力が必要になることも少なくありません。
自分だけで手続きをすると、トラブルが大きくなったり相続手続きがすすまなくなったりすることもあります。
不公平な遺産分割に合意してしまうこともあるでしょう。
そのため相続問題については、弁護士に相談・依頼することが強く推奨されます。
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初回の無料相談が可能な弁護士も多いのでぜひ活用ください。
