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後遺障害11級の認定基準や慰謝料相場・認定を受ける際の重要ポイントを紹介

弁護士監修記事
交通事故
2023年03月17日
2023年03月17日
後遺障害11級の認定基準や慰謝料相場・認定を受ける際の重要ポイントを紹介
この記事を監修した弁護士
阿部 由羅弁護士 (ゆら総合法律事務所)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

後遺障害11級には、脊柱の変形や手足の機能障害などの10の症状が該当します。

後遺障害が認定されると、慰謝料のほか、将来にわたる逸失利益の補償も受けられますが、適切な後遺障害等級が認定されないケースも少なくありません。

後遺障害等級が適切に認定されるか否かのカギを握るのが「後遺障害診断書」です。

そのため、後遺障害等級認定の申請を行う前に、後遺障害診断書の記載内容をよく確認する必要があります。

この記事では、後遺障害11級の認定基準や慰謝料の相場、認定を受ける際に重要なポイントを紹介します。

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後遺障害11級の認定基準

後遺障害11級に該当する後遺症の症状は以下のとおりです。

1号 両眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの
2号 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3号 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
4号 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5号 両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
6号 一耳の聴力が40㎝以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
7号 脊柱に変形を残すもの
8号 一手の人差し指、中指または薬指を失ったもの
9号 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
10号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

参考記事:後遺障害等級表

1号|両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

両方の眼のピントが合いにくい、動かせる範囲が狭くなった状態です。

  • 調節機能…近くや遠くを見る際の、ピント合わせる機能
  • 運動障害…頭を動かさず、眼だけで物を追える範囲「注視野」に障害がある状態

まとめると、両眼のピントを合わせる機能が2分の1以下になった状態、または、眼の動きだけで物を追える範囲が2分の1に制限されてしまった状態が、1号に該当します。

とはいえ、眼の機能は年齢とともに衰えるため、高齢の場合は「加齢によるもの」だとして認定されない可能性があるので注意しましょう。

なお、調節機能障害又は運動障害が片眼のみに残った場合は、後遺障害12級に該当します。

2号|両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

両方のまぶたが思うように動かない状態です。具体的には、以下のような症状です。

  • まぶたを開けているつもりでも、まぶたで瞳孔が隠れてしまう
  • まぶたを閉じているつもりでも、閉じられておらず瞳孔や角膜が露出してしまう

両眼のまぶたに症状がある場合は11級に認定されますが、片方のまぶたのみ症状が見られる場合は、後遺障害12級になります。

3号|一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

片目のまぶたが、全部あるいは大部分失われており、眼を閉じても角膜を覆えない状態です。

欠損の程度や、片目のまぶたか両目のまぶたかによって等級が変わります。

  • 黒目は隠せるが白目は隠せない場合…後遺障害12級
  • 両方のまぶたが失われている場合…後遺障害9級

4号|十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

交通事故によって、10本以上の歯に入れ歯や義歯などの治療を施した状態です。

なお本数は、治療のために削ったり抜いたりした場合も計上されます。

たとえば、交通事故により歯を7本失ったとします。

治療にあたり、他の歯も削ったり抜いたりする必要があるかもしれません。

差し歯を入れるために、他3本の歯を削ったとすると、合計10本の歯に治療が施されたことになり11級4号に該当します。

治療をした歯の本数によって、等級が変わります。

歯の本数 後遺障害
3歯以上 14級
5歯以上 13級
7歯以上 12級
10歯以上 11級
14歯以上 10級

5号|両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

1m以上離れた小声が聞こえない状態です。

具体的には、40dB以上の音でなければ聞こえない状態を示しています。

小声が聞こえない、できるだけ近くで話してもらわなければ聞き取れないなどの症状があり、聴力レベルでは難聴に分類されます。

【難聴の分類】
軽度の難聴 25dB以上40dB未満
中等度難聴 40dB以上70dB未満
高度難聴 70dB以上90dB未満
重度難聴 90dB以上

参考記事:日本聴覚医学会|難聴(聴覚障害)の程度分類について 4p

6号|一耳の聴力が40㎝以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

片耳で普通の話し声が聞こえない、もしくは聞こえても言葉を正しく聞き取れていない状態です。

具体的には、70dBから80dBに近い音でなければ聞こえない状態を指しています。

70dBから80dBとは、掃除機の音やセミの鳴き声、地下鉄の電車内などが挙げられ、高度難聴に該当します。

耳元で大きな声で話しかけられないとわからない、聞き間違いが多いなどの症状がある際は、耳鼻科に受診し、検査を受けましょう。

7号|脊柱に変形を残すもの

背骨がダメージを受けて変形した状態です。

認定されるには、レントゲン画像などで明らかに背骨が変形していることが確認できる必要があります。

以下のいずれかに当てはまる場合、7号に該当します。

  • 脊椎圧迫骨折や脱臼がレントゲン画像などで確認できる
  • 背骨をボルトなどで固定する手術を受け、人工関節を埋め込まれた
  • 3個以上の脊椎に対して、人工骨などで脊髄の圧迫を取り除く手術を受けた

8号|一手の人差し指、中指又は薬指を失ったもの

片手の人差し指・中指・薬指のうち、いずれか1本の指を失ってしまった状態です。

指先の先端だけではなく、第二関節から指の根本にかけての箇所を切断された場合に該当します。

9号|一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの

第一の足指とは「親指」を指し、用を廃したとは「本来の部位の動きができなくなる」ことを意味します。

つまり、片足の親指を含む2本以上の指を失くした、もしくは動かしにくくなった状態です。

以下の症状が9号に該当します。

  • 親指の指先の骨が半分以上なくなった
  • 親指以外の指のうち1本以上、第一関節から指の付け根までの間で切断した
  • 指を動かせる範囲が2分の1以下に制限された

10号|胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

交通事故によって、内臓に後遺症が残り、仕事に大きな支障が出ている状態です。

内臓には以下の臓器が含まれます。

  • 肺などの呼吸器
  • 心臓などの循環器
  • 胃腸などの消化器
  • 肝臓
  • 腎臓
  • 泌尿器
  • 生殖器

たとえば、息切れや脈拍が変化して苦しくなる呼吸不全や、胃腸の切除などにより消化機能に障害が残ったケースなどが該当します。

後遺障害11級認定までの流れ

後遺障害認定を申請するには、2通りの方法があります。

  • 自分で手続きを行う「被害者請求」
  • 相手方の保険会社に手続きを任せる「事前認定」
【申請の手順】
事前認定の場合 被害者請求の場合
✓症状固定の診断を受ける
✓医師に後遺障害診断書を作成してもらう
✓相手方の保険会社に診断書を渡す
✓相手方の保険会社が書類を機関に提出
✓機関から相手方保険会社に通知が届き、相手方保険会社から被害者へ結果が通知される
✓症状固定の診断を受ける
✓医師に後遺障害診断書を作成してもらう
✓交通事故証明書など、診断書以外に必要な書類を集め、自分で機関に提出・申請する
✓後日、認定結果が通知される

事前認定の際は、後遺障害診断書を相手方の保険会社に提出し、審査結果を待つだけのため、手間がかからない点がメリットです。

被害者請求の際は、診断書の他にも必要な書類を複数集めて、自分で機関に提出するため、手間がかかるのがデメリットです。

しかし、後遺障害の認定を受けるには、後遺障害診断書などの書類の内容が重要になります。

なぜなら、審査する機関は、書類をもとに認定の可否や等級を判断するからです。

相手方の保険会社に任せた場合、書類内容の確認や追加の書類提出ができないため、被害者請求に比べて、適正な後遺障害等級が認定されないリスクが高くなります。

メリット・デメリットの両面を考慮したうえで、被害者請求と事前認定のどちらがよいか選択しましょう。

後遺障害11級の賠償金

後遺障害等級が認定されると、被害者は加害者側に対して、後遺障害慰謝料と逸失利益の損害賠償を請求できます。

後遺障害11級の慰謝料相場と、逸失利益の計算方法について紹介します。

慰謝料の相場

後遺障害慰謝料の算定基準は、3種類あります。

基準 概要 後遺障害11級の慰謝料相場
自賠責基準 運転者に加入が義務付けられている「自賠責保険」の保険金を算定する基準 136万円
*2020年3月までに起こった交通事故の場合は135万円
任意保険基準 任意保険会社が独自に定めた基準 保険会社によって異なるが、自賠責基準より少し高く、弁護士基準よりかなり低い傾向
弁護士基準 裁判例に基づいて損害額を算出する基準。裁判所基準とも呼ばれる 420万円

同じ症状でも、算定基準が違うと慰謝料の金額も大きく変わってきます。

弁護士に相談すると、弁護士基準で請求ができるため、慰謝料を増額できる可能性があります。

逸失利益

逸失利益とは、本来得られるはずであった収入が、事故を理由に減ってしまったことに対する補償です。

被害者の基礎収入や、どのくらいの期間働けないか、などを数値化して金額を求めます。

【逸失利益の計算式】
逸失利益=1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

逸失利益は、被害者の年齢や、収入額などによって一人ひとり異なります。

自分はどのくらいもらえるのか気になる方や、少しでも多く慰謝料を請求したい方は、弁護士へ相談しましょう。

【参考記事】
国土交通省|労働能力喪失率表
国土交通省|就労可能年数とライプニッツ係数表

後遺障害11級の場合、障害者手帳の交付は受けられる?

「後遺障害11級に認定されたら身体障害者手帳の交付を受けたい」と思う方もいるでしょう。

身体障害者手帳には、医療費の助成や高速道路の料金割引など、受けられるメリットもいくつかあるため、可能であれば交付を受けたいところです。

身体障害者手帳の交付を受けるには、「身体障害者障害程度等級表」の1級から7級のいずれかに該当することが必要です。

同等級表に照らすと、後遺障害11級に該当する症状が、身体障害者1級から7級に該当するケースは少ないと考えられます。

たとえば、後遺障害11級5号の認定基準は、「40dB以上の音でなければ聞こえない状態」ですが、身体障害者障害程度等級の認定基準は次のようになっています。

【聴覚又は平衡機能の障害】6級

  1. 両耳の聴力レベルが70デジベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの)
  2. 一側耳の聴力レベルが90デジベル以上、他側耳の聴力レベルが50デジベル以上のもの

引用元:身体障害者障害程度等級表 一部抜粋

後遺障害等級11級5号の基準を満たしている方でも、70dBの音は聞こえるため、「障害者障害程度等級の基準は満たせていない」ということになるのです。

しかし、障害が2つ以上重なった場合など、具体的な症状によっては身体障害者等級の認定を受けられる可能性もあります。

後遺障害認定に弁護士への相談をおすすめする理由

後遺障害認定の申請をする際は、弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士に相談すべき理由は、主に以下の2点です。

  • 後遺障害診断書の記載内容を確認してもらえる
  • 書類作成や示談交渉を一任できる

後遺障害診断書の記載内容を確認してもらえる

理由の1つめは、弁護士に依頼すると後遺障害診断書の記載内容を確認してもらえるからです。

「後遺障害診断書」は、後遺障害等級の認定を大きく左右する重要な書類です。

作成は医師が行いますが、後遺障害等級認定の手続きに精通しておらず、内容が簡素になってしまうケースもあります。

記載内容が不十分だと、適正な後遺障害等級が認定されない恐れがあるため、後遺障害診断書には十分な記載を盛り込む必要があります。

弁護士に依頼すると、書類に記入漏れや説明不十分などがないか、被害者にとって不利な内容ではないかを見てもらえます。

その結果、残存した後遺症の症状が認められやすくなり、適正な後遺障害等級の認定が期待できます。

書類作成や示談交渉を一任できる

理由の2つめは、書類作成や示談交渉を一任できるからです。

後遺障害認定を申請する際は、診断書のほか、さまざまな書類を揃えなければなりません。

たとえば、交通事故証明書や、事故発生状況報告書、検査の画像などです。また、賠償金を請求する際には、示談書や訴状の作成なども必要になります。

自分で考えながら書類を集めたり作成したりするのは、時間と手間がかかります。

弁護士に依頼すれば、専門的・実務的なアドバイスやサポートにより、被害者本人の時間と手間が省けるため、治療に専念できるでしょう。

さらに、示談交渉の代理人になってもらうと、相手と直接会わずに済むので、精神的負担も軽くなります。

弁護士費用が心配な方は、現在契約している自動車保険や火災保険の「特約」を確認してみてください。

弁護士費用を保険会社が負担する「弁護士費用特約」がついているかもしれません。

まとめ|後遺障害認定の悩み・困りごとは弁護士に相談しよう

交通事故のケガが完治せずに後遺症が残った場合、仕事や生活への影響は計り知れません。

身体的な苦痛はもちろん、精神的負担も大きいものでしょう。

交通事故の後遺症が残った場合は、後遺障害等級の認定を申請しましょう。

ただし、きちんと書類を揃えて申請しなければ、適正な後遺障害等級が認定されないおそれがあるため、弁護士へのご相談がお勧めです。

交通事故について適正な補償を受けるとともに、少しでも精神的負担を減らし、治療に専念できるよう、弁護士に相談してみませんか。

きっと、心強い味方になってもらえるはずです。

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