遺言執行者の報酬相場は?誰がいつ支払うのか・トラブルを防ぐ対策を解説
遺言執行者(遺言書の内容を実現するために手続きを進める人)への報酬をどうするか、決めかねていませんか。
遺言執行者の報酬相場は、依頼先によって大きく変わります。そのため、相場を知らないまま支払うと、本来より高い金額を負担するおそれがあります。遺言書を作る側も、遺言書に報酬を書かないと残された家族に話し合いの負担を負わせてしまうかもしれません。
本記事では、依頼先別の遺言執行者の報酬相場や報酬の決まり方、誰がいつ支払うのか、請求額に納得できないときの対処法まで解説します。報酬をめぐるトラブルを避けるための参考にしてください。
遺言執行者の報酬相場|6つの依頼先別
遺言執行者の報酬相場は、誰が執行を担当するかによって大きく変わります。
主な依頼先は、弁護士・司法書士・行政書士・税理士・信託銀行・親族の6つです。同じ内容の執行でも、依頼先によっては数十万円の差が生まれます。まずは比較表で全体像をつかみ、金額が相場の範囲に収まっているか確認してみてください。
| 依頼先 | 報酬相場 | 対応できる主な業務 |
| 弁護士 | 30万円〜50万円または遺産額の1〜3% | 執行実務・相続人との交渉・訴訟対応 |
| 司法書士 | 20万円〜35万円または遺産額の1〜2% | 執行実務・相続登記 |
| 行政書士 | 10万円〜20万円または遺産額の1% | 執行実務・書類作成(登記と交渉は不可) |
| 税理士 | 20万円〜30万円または遺産額の1〜2% | 執行実務・相続税の申告 |
| 信託銀行 | 100万円〜または遺産額の1〜2% | 執行実務 |
| 親族 | 無報酬または10万円〜30万円の謝礼 | 執行実務 |
依頼先は金額だけでなく、相続財産の内容や親族間の関係をふまえて選びましょう。ここから、各依頼先の特徴をそれぞれ解説します。
弁護士の報酬相場と特徴
弁護士の遺言執行報酬は、30万円〜50万円または遺産額の1〜3%が相場です。
弁護士の報酬額は、事務所ごとに自由に設定されています。遺産額が大きい場合は、定額ではなく割合で計算する事務所も多くみられます。
実際の金額の目安になるのが、日本弁護士連合会が2008年度に会員へおこなったアンケートです。遺産総額5,000万円の設例で、遺言執行の手数料を「40万円」と答えた弁護士が27%で最多でした。
弁護士に依頼するメリットは、相続人同士の対立や遺留分の交渉まで一括で任せられる点です。遺産の分け方でもめた場合、代理人として交渉できるのは弁護士だけです。
行政書士に交渉の代理権はありません。認定司法書士も、代理できるのは簡易裁判所の訴額140万円以下の事件に限られます。費用はほかの依頼先より高い傾向にありますが、遺産の分け方でもめる見込みがあるなら、あらかじめ弁護士へ依頼するほうがおすすめです。
【参考記事】市民のための弁護士報酬ガイド 2008年度アンケート結果版(2009.8)|日本弁護士連合会
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司法書士の報酬相場と特徴
司法書士の報酬相場は、20万円〜35万円または遺産額の1〜2%程度です。
司法書士は不動産の相続登記に強く、主に不動産の名義変更や財産目録の作成、預貯金の解約といった業務を取り扱います。ただし、司法書士は相続人の代理人として交渉や裁判に関わることができません。
法務大臣の認定を受けた認定司法書士なら訴額140万円以下の簡易裁判所の事件を代理できますが、家庭裁判所で開かれる遺産分割調停の代理人にはなれません。そのため、親族間に争いがなく、不動産の名義変更が中心となる相続での依頼先に向いています。
行政書士の報酬相場と特徴
行政書士の報酬相場は、10万円〜20万円程度または遺産額の1%です。
行政書士には、預貯金の解約や自動車の名義変更といった書類作成をメインに依頼できます。ただし、行政書士に交渉の権限も登記の権限もありません。不動産の相続登記が必要なら司法書士へ、相続人どうしの争いがあるなら弁護士へ、それぞれ別に依頼が必要です。
遺言書に書かれた手続きが預貯金の解約や自動車の名義変更だけであれば、行政書士への依頼を検討しましょう。
税理士の報酬相場と特徴
税理士の報酬相場は、20万円〜30万円程度または遺産額の1〜2%です。
税理士に依頼するメリットは、遺言の執行と相続税の申告をまとめて進められる点です。窓口をひとつにまとめれば、財産資料のやり取りも一度で済みます。相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。
期限が迫るなかで別々の事務所とやり取りする手間を省けます。ただし、税理士に不動産の登記や相続人との交渉は任せられません。登記が必要なら司法書士へ、争いがあるなら弁護士へ依頼する必要があります。
信託銀行の報酬相場と特徴
信託銀行の報酬相場は、100万円程度からまたは遺産額の1〜2%です。
信託銀行に依頼するメリットは、遺言書の作成相談から保管、執行までを一括で任せられる点です。多くの信託銀行は公正証書遺言での作成を条件としているため、方式の不備で無効になるリスクを避けられます。
また、法人が執行を引き受けるので、遺言執行者が亡くなっても手続きが止まりません。ただし、費用は6つの依頼先のなかでもっとも高い傾向にあります。
多くの信託銀行には最低報酬額が定められており、遺産が少なければ最低報酬額が適用されます。遺言書を預ける申込時の手数料や、預けている間の保管料も別に必要です。
資産規模が大きく、大手金融機関の安心感を優先したい方に向いています。
親族が担当する場合の報酬相場
親族が遺言執行者になる場合、無報酬または10万円〜30万円程度の謝礼が相場です。
遺言執行者の報酬を必ず支払う必要はありません。遺言書に定めがなく、相続人と執行者が合意すれば無報酬でも問題はありません。
ただし、遺言の執行には多くの手間がかかります。たとえば、相続財産の目録を作成して相続人へ交付する義務があるほか(民法1011条1項)、金融機関ごとの解約手続きも必要です。
遺言執行を無報酬で任せきりにすれば、引き受けた親族に不満が残ります。労力に見合った謝礼を支払うほうがよいでしょう。
遺言執行者の報酬の決め方
遺言執行者の報酬を決める方法には、遺言書の定め・相続人との協議・家庭裁判所の審判の3つがあります。最優先されるのは遺言書の定めです。記載がなければ相続人との協議で決め、まとまらなければ家庭裁判所に審判を申し立てます。
ここでは、3つの方法を順番に解説します。
遺言書で金額が指定されている場合
遺言書に報酬額の記載がある場合、記載された内容が最優先されます。
なお、記載された金額に納得できなければ、指定された人は遺言執行者の就任を断ることも可能です。断られた場合、相続人などの利害関係人が家庭裁判所へ遺言執行者の選任を申し立てます(民法1010条)。
家庭裁判所が選んだ遺言執行者には、遺言書に書いた報酬額は適用されません。報酬はあらためて協議か審判で決まるため、遺言者が想定した金額を上回る場合があります。
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相続人と話し合って決める場合
遺言書に報酬の記載がない場合、遺言執行者と相続人の協議で金額を決めます。
交渉の目安になるのが、「遺言執行者の報酬相場|6つの依頼先別」で紹介した依頼先別の相場です。執行の内容と照らし合わせれば、金額が妥当かどうか判断できるでしょう。
協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の審判に進みます。
家庭裁判所の審判で決める場合
遺言書に定めがなく、遺言執行者と相続人の協議もまとまらない場合、家庭裁判所は相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を決定します(民法1018条1項)。
審判を申し立てる場合、遺言執行者が、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立書を提出します。申立書の書式は、各家庭裁判所のホームページまたは窓口から入手可能です。
申立てには、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手の予納が必要です。郵便切手の金額と内訳は裁判所ごとに異なるため、申立先の家庭裁判所に確認してください。
遺言執行者の報酬の支払者と支払時期
遺言執行者の報酬の決まり方に加え、「誰が払うのか」「いつ払うのか」についても確認しておきましょう。
遺言執行者の報酬の支払者
遺言の執行に関する費用は相続財産の負担となるため、遺言執行者の報酬も相続財産から支払われます(民法1021条本文)。
支払いの流れは、以下のとおりです。
- 相続財産の総額を確定する
- 相続財産から遺言執行者への報酬を差し引く
- 残りの相続財産を各相続人へ分配する
つまり、相続人が受け取る財産は、あらかじめ遺言執行者への報酬分だけ減少します。
遺言執行者の報酬の支払時期
遺言執行者の報酬は、遺言の執行が全て終わったあとでなければ相続人に請求できないのが原則です(民法1018条2項、民法648条2項)。
ただし、契約で定めた場合は前払いが認められます。弁護士や司法書士に依頼するときには、着手金を先に支払う取り決めをするのが一般的です。なお、遺言執行者が辞任した場合、そこまでに対応した分の報酬を相続人へ請求できます(民法1018条2項、民法648条3項)。
遺言執行者の報酬トラブルを防ぐ生前対策3つ
報酬をめぐる争いは、遺言者が生前に手を打っておけば防げるでしょう。主な対策は3つあるため、順番に解説します。
生前に遺言執行者の候補者から同意を得る
遺言書に遺言執行者の候補者を書く前に、事前に候補者に報酬額を伝えて同意を得てください。
遺言執行者に指定された人には就任を断る自由があるため、報酬額に納得できなければ辞退されるかもしれません。辞退された場合、相続人などの利害関係人が家庭裁判所へ遺言執行者の選任を申し立てます(民法1010条)。
申立てから選任までに1ヵ月程度かかることもあるため、相続手続きが遅れてしまいます。手続きを止めないためにも、候補者には財産の内容や相続人の人数まで説明したうえで、引き受けてもらえるか確認しましょう。
遺言書や契約書に金額や支払条件を記載する
遺言書や契約書に、金額・支払時期・実費の負担まで書いておくと、報酬をめぐる争いを防げます。
遺言書に記載すべきは、報酬の金額と、実費を報酬とは別に支払う旨の2点です。報酬の金額の書き方には「定額指定」と「割合指定」の2つがあります。
| 書き方 | 内容 | 記載例 |
| 定額指定 | 遺産額にかかわらず一定の金額を支払う方法 | 「遺言執行者の報酬は50万円とし、相続財産から支払う。」 |
| 割合指定 | 遺産額に決められた割合をかけて金額を出す方法 | 「遺言執行者の報酬は亡くなった日の相続財産評価額の2%とし、相続財産から支払う。ただし最低30万円とする。」 |
あわせて、「遺言執行に要した交通費、戸籍謄本の取得費用などの実費は、報酬とは別に相続財産から支払う。」といった一文を加えてください。報酬の金額しか記載されていないと、交通費や登記費用の扱いをめぐって相続人と執行者の認識がずれる可能性があります。
なお、弁護士や司法書士に遺言の執行を任せる場合は、執行の範囲・着手金の有無・追加費用が発生する条件まで委任契約書に残しておきましょう。
【関連記事】自筆証書遺言の書き方の基本|よくある文例や作成手順などをわかりやすく紹介
遺言書の作成から執行まで弁護士に任せる
遺言書の作成段階から弁護士に依頼するのもおすすめです。
遺言書に不備があると、遺言そのものの有効性が争われます。弁護士が作成に関与すれば、日付の欠落や署名押印の漏れといった形式面の不備を防げるでしょう。
また、弁護士をそのまま遺言執行者に指定しておけば、相続人への説明や連絡を任せられます。法律にもとづいて執行の内容を説明してもらえるため、遺族同士が直接やり取りする負担も減らせます。
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遺言執行者の報酬に納得できないときの対処法3つ

請求された報酬に納得できない場合、相続人が取れる手段は3つあります。ここでは、使える場面と合わせて、順番に解説します。
報酬の内訳と根拠の説明を求める
遺言書に定めがなければ、相続人が合意しない限り報酬額は決まりません。金額に合意するかを判断するために、計算根拠の説明を求めましょう。
確認する項目は、以下の4つです。
- 報酬の計算方法(定額か遺産額に対する割合か)
- 遺産額を評価する基準(相続開始時か遺言執行の完了時か)
- 実費の内訳(登録免許税・戸籍の取得費用など)
- 消費税の扱い(税込か税抜か)
説明を受けても納得できなければ、次に解説する減額の交渉に進みましょう。
遺言書に定めがなければ協議で減額を求める
遺言書に報酬の記載がなく、請求された金額に納得できない場合は遺言執行者との協議で報酬の減額を求めましょう。
「遺言執行者の報酬相場|6つの依頼先別」で紹介した報酬相場と、実際の執行内容を照らし合わせてください。手続きが少ないにもかかわらず相場より高い金額を請求されているのなら、交渉の余地があります。
また、合意した内容を証拠として残すため、合意内容は「報酬に関する合意書」に残しましょう。記載すべき主な項目は、以下のとおりです。
- 報酬額と計算根拠(定額か遺産額に対する割合か)
- 支払時期
- 実費(交通費・戸籍の取得費用など)の取り扱い
- 合意日と署名押印
弁護士に報酬額の妥当性を確認してもらう
協議がまとまらない場合は、相続が得意な弁護士へ相談してください。
弁護士は、具体的な執行状況をもとに、遺言執行者の報酬が妥当か判断できます。相続人の代理人として遺言執行者と直接交渉できるため、感情的な対立を避けながら減額の話し合いを進められます。
相談するときは、遺言書の写しや報酬額の請求書、財産目録をなるべく持参してください。財産目録は、遺言執行者が相続人へ交付する義務を負う書面です(民法1011条1項)。手元になければ、相談の前に遺言執行者へ交付してもらいましょう。
遺言執行者の報酬トラブルを防ぐには、「ベンナビ相続」で弁護士を探そう!
遺言執行者の報酬に関するトラブルを弁護士に相談したい場合は、「ベンナビ相続」をご活用ください。
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解決事例や弁護士費用の相場も掲載されているので、複数の弁護士を比べたうえで相談先を決められます。一人で判断せず、報酬の妥当性を確かめるところから始めてみてください。
遺言執行者の報酬のよくある質問
さいごに、遺言執行者の報酬に関するよくある質問に回答します。
遺言執行費用は報酬とは別にかかる?
遺言執行費用と遺言執行者の報酬は、別々に発生します。
遺言執行者の報酬は、遺言執行者の働きに対する対価です。一方で、遺言執行費用は手続きそのものにかかった実費を指します。
遺言執行費用にあたるのは、以下のような費用です。
- 不動産の名義変更にかかる登録免許税
- 戸籍謄本や住民票の取得費用
- 金融機関の相続手続きにかかる手数料
- 郵送費、交通費
遺言執行費用も遺言執行者の報酬と同じく、相続財産から支払われます(民法1021条)。遺言執行者から請求書や見積もりを受け取ったら、遺言執行費用が報酬に含まれているかを確認してください。
遺言執行者の報酬に税金はかかる?
遺言執行者の報酬は相続税の債務控除の対象外です。一方で、報酬を受け取った側には所得税がかかります。
債務控除できるのは、被相続人が亡くなったときにあった債務です。報酬は相続開始後に発生するため、債務控除対象から外れます。
注意したいのが、親族が遺言執行者になったケースです。受け取った報酬は雑所得にあたるため、給与以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。
また、弁護士や信託銀行へ支払う報酬には消費税が上乗せされるため、見積書に記載の金額が税込か税抜かを確認してください。
遺言執行者代理人の費用相場は?
遺言執行者代理人を依頼する費用は、遺言執行者の報酬と同じ水準です。代理人の報酬は原則として遺言執行者が自分の報酬から支払うため、相続人が二重に負担するわけではありません。
遺言執行者代理人とは、遺言執行者から任務を任され、代わりに手続きを進める人です。たとえば親族が遺言執行者に指定された場合でも、弁護士に遺言執行者代理人となってもらえば遺言執行業務を引き継げます(民法1016条1項)。
ただし、遺言書で再委任を制限している場合は、遺言者の意思が優先されます。代理人を立てる前に、遺言書の内容を確認してください。
まとめ|遺言執行者報酬の相談は弁護士へ
遺言執行者の報酬相場は、依頼先によって数十万円の差が出ます。請求額に納得できない場合は、まず内訳と計算根拠の説明を求めてください。相場と執行内容を照らし合わせ、手続きが少ないのに高ければ減額を求めましょう。
一方、これから遺言書を作る方は、報酬の金額と実費の扱いを書き残しておきましょう。金額を決めておけば、残された家族が話し合いに時間を取られません。
進め方に不安があれば、弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士に相談すれば、減額の交渉を任せられるほか、遺言書の書き方まであわせて確認できます。
「ベンナビ相続」なら、相続が得意な弁護士を相談内容・地域別に絞り込めます。報酬を決める、または遺言書を書き上げる前に、まずは弁護士に相談してみてください。
