占有移転禁止の仮処分とは?必要なケース・流れ・費用をわかりやすく解説
家賃を滞納している借主に明渡しを求めたいものの、訴訟中に誰かへ部屋を又貸しされないか不安を感じていませんか。
明渡し訴訟で勝っても、判決の前に住んでいる人が入れ替わっていると、借主への判決では強制執行できないおそれがあります。
こうした事態に備える手続きが「占有移転禁止の仮処分」です。
本記事では、占有移転禁止の仮処分の仕組みや必要になるケース、申立てから執行までの流れと費用の目安を、貸主の立場から解説します。
以下のいずれかに当てはまる方は、本記事を参考に弁護士への相談も検討してみてください。
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借主の家賃滞納が続き、明渡し訴訟を考えている
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契約者ではない人が物件に出入りしている
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借主と連絡がとれず、誰が住んでいるのかわからない
占有移転禁止の仮処分とは|明渡し訴訟の相手を固定する手続き
占有移転禁止の仮処分とは、明渡し訴訟を起こす前に物件の占有者を固定し、勝訴後の強制執行に備えるための手続きです。
民事保全法23条1項にもとづく「係争物に関する仮処分」の一種で、裁判所に申し立てて行います。
占有とは、物件を実際に使用・支配している状態のことです。
建物の明渡しの強制執行で相手となるのは、所有者や契約者ではなく、執行時点で物件を占有している人です。
訴訟の途中、審理が終わる前に借主が第三者へ部屋を引き渡すと、借主に勝訴しても、原則として新しい占有者には強制執行できません。
新しい占有者を相手に、訴訟をやり直さなければならないおそれもあります。
仮処分が認められた場合に裁判所が命じる主な内容は、次のとおりです。
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借主(債務者)は物件の占有を他人に移したり、占有名義を変えたりしてはならない
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物件は執行官が保管するが、借主はそのまま使い続けてよい
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執行官は、占有の移転が禁止されていることを物件に公示する
借主を追い出す手続きではなく、現状を固定する手続きだと理解しておきましょう。
当事者恒定効|仮処分の執行後に占有した人にも強制執行できる
仮処分を執行しておけば、その後に物件を占有した人に対しても、借主に対する判決のまま明渡しの強制執行ができます。
法律上の名称は「当事者恒定効(とうじしゃこうていこう・訴訟の相手方を固定する効果)」です。
民事保全法62条1項が強制執行の相手として定めているのは、次の2者です。
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仮処分の執行がされたことを知って物件を占有した人
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執行後に、執行を知らないまま借主の占有を引き継いだ人
さらに同条2項により、執行後に物件を占有した人は、執行を知って占有したものと推定されます。
たとえば、仮処分の執行後に借主が知人へ部屋を又貸ししても、貸主は借主への判決にもとづいて知人に対する明渡しの強制執行を進められます。
ただし、強制執行の申立て前に、知人を相手とする執行文(承継執行文)の付与を裁判所書記官から受けることが前提です。
訴訟中に占有者が入れ替わるたびに訴訟をやり直す必要がなくなる点が、占有移転禁止の仮処分の最大の効果です。
処分禁止の仮処分との違い|守るのは「占有」か「登記」か
占有移転禁止の仮処分と処分禁止の仮処分は、守る対象が「物件の占有」か「登記」かで使い分けます。
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項目 |
占有移転禁止の仮処分 |
処分禁止の仮処分 |
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守るもの |
物件を使用・支配している状態=占有 |
所有権などの登記 |
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主な場面 |
建物・土地の明渡しや引渡しを求めるとき |
所有権移転登記などを求めるとき |
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執行の方法 |
執行官が現地で公示書を掲示する |
法務局で処分禁止の登記をする |
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効果 |
執行後の占有者にも明渡しの強制執行ができる |
登記後に権利を取得した人に対抗できる |
賃貸物件の明渡しを求める貸主が使うのは、通常は占有移転禁止の仮処分です。
一方、売買した不動産の引渡しと登記の両方を求める場合のように、2つの仮処分を併せて申し立てるケースもあります。
どちらが必要かは求める権利によって変わるため、申立て前に整理しておくと安心です。
占有移転禁止の仮処分が必要になる4つのケース
占有移転禁止の仮処分は、借主以外の人に占有を移されるおそれがあるときに検討する手続きです。
明渡し訴訟のたびに必ず申し立てるものではなく、次のような事情があるかどうかで判断します。
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借主以外の人が物件に出入りしている
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借主と連絡がとれず、住んでいるかわからない
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法人の営業や又貸しなど、契約と違う使い方をしている
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占有者が誰なのか特定できない
どれにも当てはまらず、借主本人が住み続けていることが明らかな場合は、仮処分を省略して明渡し訴訟を起こすことも選択肢の1つです。
省略すれば費用と時間を抑えられますが、訴訟中に占有を移されるリスクは残ります。
それぞれのケースを詳しく見ていきましょう。
1. 借主以外の人が物件に出入りしている
契約者以外の人が出入りしている物件は、占有を移されるリスクが高いといえます。
たとえば、表札に契約者と違う名字が出ている、郵便受けに別の人の郵便物が届いている、といった状況です。
同居人が独立して物件を使っていると判断されると、同居人も占有者として扱われる可能性があります。
明渡し訴訟の相手を借主1人に絞ったままだと、判決後に「自分は別の占有者だ」と主張されるおそれがあります。
出入りの様子は、日付入りの写真や管理会社の記録として残しておきましょう。
写真や記録は、裁判所に「保全の必要性」(占有を移されるおそれ)を示す資料にもなります。
2. 借主と連絡がとれず、住んでいるかわからない
借主と連絡がとれず居住実態がわからないときは、誰が占有しているのかを固めておく必要があります。
家賃の滞納が長期化し、電話にも書面にも反応がない場合は、すでに別の人が住んでいる可能性もあるためです。
連絡がとれないからといって、貸主が合鍵で室内に入って確認することは避けてください。
借主の承諾なく立ち入ると、住居侵入などのトラブルに発展するおそれがあります。
外から確認できる範囲で、電気メーターの動きや郵便物のたまり具合などを記録しておくのが現実的です。
仮処分の執行で執行官に占有状況を確認してもらえば、訴訟の相手方を固めやすくなります。
3. 法人の営業や又貸しなど、契約と違う使い方をしている
個人に貸した部屋で法人が営業している、無断で又貸ししているといった使い方は、占有者が増えているサインです。
賃借人は、貸主の承諾なく部屋を転貸(又貸し)できません(民法612条1項)。
無断転貸があれば、貸主は契約を解除できる場合があります(同条2項)。
ただし、転借人(又貸しを受けた人)が物件を使っている以上、明渡しの強制執行はその人に対しても必要になります。
訴訟中にさらに別の人へ転貸されると、相手方がどんどん増えていきます。
契約外の使い方に気づいた段階で、仮処分の要否を弁護士に確認しておくと安心です。
4. 占有者が誰なのか特定できない
占有者が誰かわからない場合でも、一定の条件のもとで仮処分を申し立てられます。
民事保全法25条の2により、係争物が不動産で、執行前に債務者を特定することが困難な特別の事情があれば、裁判所は債務者を特定しないで仮処分命令を出せます。
たとえば、入居者が頻繁に入れ替わっていて、表札や郵便物から名前が判明しないケースです。
ただし、執行官が現地で占有を解く際に占有者を特定できなければ、執行はできません(同法54条の2)。
また、債務者不特定の仮処分は、通常の仮処分より執行官への予納金が高く設定されています。
申し立てる前に、現地調査で判明している情報を整理しておきましょう。
占有移転禁止の仮処分が認められる2つの要件
占有移転禁止の仮処分が認められるには、「被保全権利」と「保全の必要性」の2つを疎明する必要があります(民事保全法13条)。
疎明(そめい)とは、裁判官に「一応確からしい」と思わせる程度に資料で示すことです。
訴訟で求められる証明より軽い基準ですが、資料がなければ認められません。
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要件 |
意味 |
主な資料 |
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被保全権利 |
明渡しを求める権利があること |
賃貸借契約書、解除通知、家賃の入金記録 |
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保全の必要性 |
占有を移されるおそれがあること |
現地の写真、報告書、借主とのやり取りの記録 |
どちらか一方でも欠けると申立ては認められないため、両方の資料をそろえて臨みましょう。
被保全権利|建物の明渡しを求める権利があること
被保全権利とは、仮処分で守ろうとする権利のことで、占有移転禁止の仮処分では建物の明渡請求権を指します。
賃貸物件の場合は、賃貸借契約が終了したことにもとづく明渡請求権が典型的です。
不法占拠者が相手であれば、所有権にもとづく明渡請求権を主張します。
家賃滞納で契約を解除したときは、解除が有効かどうかがポイントです。
賃貸借の解除は、滞納の期間や金額などから貸主と借主の信頼関係が壊れたといえる場合に認められやすいとされています。
たとえば、1か月分の滞納だけでの解除は、有効と判断される可能性は低いです。
賃貸借契約書、内容証明郵便で送った解除通知、入金履歴をそろえておくと疎明がしやすくなります。
保全の必要性|占有を移されるおそれがあること
保全の必要性とは、今のうちに手を打たないと、明渡しの強制執行ができなくなったり著しく難しくなったりするおそれのことです(民事保全法23条1項)。
占有移転禁止の仮処分では、借主が第三者に占有を移すおそれを具体的な事情で示します。
判断の材料になるのは、次のような事情です。
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第三者の出入りや表札・郵便物の状況
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交渉時の借主の言動(「別の人に貸す」と言われた など)
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借主と連絡がとれない期間
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契約と違う使い方の有無
判断材料となる事情は、写真や日付入りのメモ、貸主または管理会社の報告書にまとめて提出します。
「なんとなく不安」ではなく、事実を記録した資料で示すことが重要です。
占有移転禁止の仮処分の流れ
占有移転禁止の仮処分は、裁判所が命令を出す「保全命令手続」と、命令を現地で実行する「保全執行手続」の2段階で進みます。
具体的な流れは次の6ステップです。
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申立書と疎明資料をそろえて裁判所に申し立てる
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裁判官との面接で事情を説明する
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裁判所が決めた担保金を法務局に供託する
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仮処分命令が発令される
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2週間以内に執行官へ執行を申し立てる
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執行官が現地で占有状況を確認し、公示書を掲示する
事案や裁判所の運用によって異なりますが、資料がそろっていれば申立てから執行まで2週間から1か月程度で進むことも少なくありません。
仮処分の執行が終わったら、本来の目的である明渡し訴訟に進みます。
ステップ1:申立書と疎明資料をそろえて裁判所に申し立てる
まずは、明渡し訴訟を起こす裁判所か、物件の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てます(民事保全法12条1項)。
明渡し訴訟の訴額によっては簡易裁判所が訴訟の管轄になるため、申立先は事前に確認しておきましょう。
申立書の書式は、東京地方裁判所などがウェブサイトで公開しています。
申立書と一緒に提出する主な資料は次のとおりです。
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賃貸借契約書の写し
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解除通知とその配達証明
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家賃の入金記録
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不動産登記事項証明書
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物件の図面や現地の写真
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貸主や管理会社が作成した報告書
申立書には、当事者目録と物件目録も添付します。
物件目録の部屋番号や床面積が登記と食い違っていると、補正を求められて発令が遅れる原因になります。
ステップ2:裁判官との面接で事情を説明する
申立て後、多くの裁判所では申立人(または代理人の弁護士)が裁判官と面接し、事情を説明します。
面接で聞かれるのは、主に契約解除の経緯と占有移転のおそれについてです。
資料が不足していれば、追加の提出を求められることもあります。
裁判所によっては面接を行わず、書面だけで審理する場合もあります。
占有移転禁止の仮処分は、借主(債務者)を呼ばずに審理するのが通常です。
借主に知られると先に占有を移されるおそれがあるため、密行性(相手に知らせずに進めること)が重視されているからです。
面接で答えられるよう、滞納の経過や現地の状況を時系列で整理しておきましょう。
ステップ3:裁判所が決めた担保金を法務局に供託する
裁判所が仮処分を認める見込みになると、担保金の額と納付期限が示されます(民事保全法14条)。
担保金は、仮処分が不当だった場合に借主が受ける損害に備えるためのお金です。
金額は裁判所が個別に決めますが、建物の占有移転禁止の仮処分では、賃料の1〜3か月分程度が目安とされることが多く、事案によってはそれより高額になることもあるため、用意できる金額を事前に確認しておきましょう。
担保金は、期限までに法務局(供託所)へ供託します。
供託書の写しを裁判所に提出すると、発令の手続きに進みます。
担保金は手数料ではなく、明渡しが終わった後に所定の手続きで取り戻せるお金です。
ステップ4:仮処分命令が発令される
担保の提供が確認されると、裁判所が仮処分命令を発令します。
資料に不備がなければ、申立てから数日から1週間程度で発令されることもあります。
命令に記載されるのは、占有の移転禁止・執行官による保管・借主の使用許可・公示といった内容です。
申立人は仮処分命令の正本を受け取り、次の執行の申立てに使います。
命令の正本は、執行の申立てに欠かせない書類なので大切に保管してください。
ステップ5:2週間以内に執行官へ執行を申し立てる
仮処分命令を受け取ったら、申立人に命令が送達された日から2週間以内に、執行官へ執行を申し立てる必要があります(民事保全法43条2項)。
2週間を過ぎると執行できなくなるため、スケジュールには余裕を持たせておきましょう。
申立先は、物件の所在地を管轄する地方裁判所の執行官室です。
申立ての際には、執行官の手数料などにあてる予納金を納めます。
執行官とは日程を打ち合わせ、執行当日の立会いや鍵の手配について確認します。
なお、執行は仮処分命令が借主に送達される前でも行えます(同条3項)。
ステップ6:執行官が現地で占有状況を確認し、公示書を掲示する
執行当日は、執行官が物件に立ち入って占有者や占有状況を確認し、仮処分の内容を記載した公示書を掲示します。
公示書が貼られるのは、室内の見やすい場所などです。
借主が不在でも、執行官は解錠技術者の立会いのもとで室内に入ることができます。
執行が終わると執行調書が作成され、申立人は後日、調書の謄本を受け取ることが可能です。
執行調書には執行時の占有者が記録されるため、明渡し訴訟の相手方を決める重要な資料になります。
仮処分の執行後は、早めに明渡し訴訟を起こしましょう。
占有移転禁止の仮処分にかかる費用の目安
占有移転禁止の仮処分で必要になる実費は、申立手数料・郵便切手・担保金・執行官への予納金の4つです。
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費用 |
目安 |
備考 |
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申立手数料 |
2,000円 |
収入印紙で納める。民事訴訟費用等に関する法律 別表第一 |
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郵便切手 |
数千円程度 |
裁判所ごとに異なる |
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担保金 |
賃料の1〜3か月分程度が目安 |
裁判所が個別に決める。明渡し完了後に取り戻せる |
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執行官への予納金 |
東京地裁で3万円 |
債務者・物件が1つ増すごとに1万5,000円加算。債務者不特定のみの場合は6万円 |
予納金の額は東京地方裁判所執行官室の予納金額標準表(2020年3月版)によるもので、他の裁判所では異なる場合があります。
上記の実費とは別に、弁護士に依頼する場合は弁護士費用がかかります。
弁護士費用は事務所ごとに自由に設定されているため、明渡し訴訟や強制執行とセットでいくらになるのか、依頼前に見積もりで確認しておきましょう。
占有移転禁止の仮処分で注意したい4つのポイント
占有移転禁止の仮処分を進めるうえでは、自力で追い出さないこと、仮処分の後の手続きまで見通しておくことが重要です。
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注意点 |
内容 |
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自力救済はしない |
鍵の交換や荷物の撤去は貸主でもできない |
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仮処分だけでは終わらない |
明渡しには訴訟と強制執行が必要 |
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本案訴訟を起こす |
起こさないと仮処分が取り消されることがある |
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担保金の取戻し |
取消し手続きをしないと戻らない |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 鍵の交換や荷物の撤去など自力救済はしない
明渡しを急ぐあまり、貸主が自分で鍵を交換したり荷物を運び出したりすることは避けてください。
法的な手続きを経ずに権利を実現する「自力救済」は、原則として認められていません。
借主から損害賠償を請求されたり、住居侵入罪や器物損壊罪などに問われたりするおそれがあります。
契約書に「滞納したら鍵を交換できる」と書かれていても、条項だけを根拠に実行するのは危険です。
明渡しは、仮処分・訴訟・強制執行という裁判所の手続きで進めることが前提です。
2. 仮処分だけでは明渡しは実現しない
占有移転禁止の仮処分は占有者を固定するだけで、借主を退去させる効果はありません。
仮処分の執行後も、物件を使い続けるのは借主のままです。
実際に明渡しを実現するには、明渡し訴訟で勝訴判決を得て、強制執行を申し立てる必要があります。
全体の流れは「仮処分→明渡し訴訟→判決→強制執行」です。
仮処分の段階で借主が任意に退去し、和解で解決するケースもあります。
仮処分は明渡しまでの準備段階と位置づけ、訴訟までのスケジュールを立てておきましょう。
3. 明渡し訴訟を起こさないと仮処分が取り消されることがある
仮処分の執行後に明渡し訴訟(本案訴訟)を起こさずにいると、仮処分が取り消されるおそれがあります。
借主が申し立てると、裁判所は貸主に対し、一定の期間内に本案訴訟を起こしてその証明書を提出するよう命じます(民事保全法37条1項)。
提出期間は2週間以上で裁判所が定め、期間内に書面を提出しなければ、借主の申立てにより仮処分は取り消されます(同条2項・3項)。
取り消されると、占有者を固定した効果も失われます。
仮処分の申立てと同時に、明渡し訴訟の訴状の準備も進めておくと安心です。
4. 担保金は明渡しが終わった後に取消し手続きで取り戻す
担保金は自動的には戻らず、「担保取消し」の手続きをして取り戻します。
担保取消しは、民事保全法4条2項が準用する民事訴訟法79条にもとづく手続きです。
勝訴判決が確定した場合や、借主の同意を得た場合などに、裁判所へ申し立てます。
裁判所の決定を受けたら、法務局で供託金の払渡しを請求します。
明渡しが終わると手続きを忘れがちなので、事件が終わった段階で担保取消しまで済ませておきましょう。
占有移転禁止の仮処分を受けた借主・占有者はどうなる?
仮処分の執行を受けても、借主はそのまま物件に住み続けられますが、第三者に占有を移すことはできなくなります。
相手方に何が起きるのかを知っておくことは、貸主にとっても交渉の見通しを立てるうえで有益です。
執行官が掲示した公示書をはがしたり破いたりすると、民事保全法66条の公示書等損壊罪にあたります。
法定刑は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、拘禁刑は2025年6月1日施行の改正刑法により懲役から変わったものです。
行為の態様によっては、刑法96条の封印等破棄罪に問われる可能性もあります。
一方で、借主や占有者にも不服を申し立てる手段があります。
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仮処分命令そのものに不服がある場合の保全異議(民事保全法26条)
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執行文付与に対する異議(同法63条)
執行文付与に対する異議とは、借主への判決で自分に強制執行されることに対し、第三者が異議を述べる手続きです。
正当な権原で占有している、仮処分の執行を知らず借主の占有を引き継いだわけでもない、といった事情があれば主張できます。
貸主側の主張に無理があると、仮処分が取り消されたり担保金から損害を賠償することになったりするため、要件は慎重に検討しましょう。
占有移転禁止の仮処分は弁護士に相談するのがおすすめ
占有移転禁止の仮処分は、申立書の作成から執行、その後の明渡し訴訟まで一貫して進める必要があるため、弁護士に相談するのがおすすめです。
貸主本人が申し立てることもできますが、被保全権利と保全の必要性の疎明や、物件目録の正確な記載には法律の知識が求められます。
弁護士に依頼した場合に任せられる主な対応は、次のとおりです。
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契約解除が有効かどうかの判断
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申立書と疎明資料の作成
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裁判官との面接への対応
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執行官との打ち合わせと執行への立会い
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明渡し訴訟と強制執行
司法書士は申立書などの書類作成を依頼できますが、地方裁判所での代理はできません。
費用面に不安がある場合は、法テラスの民事法律扶助(無料の法律相談や弁護士費用の立替え)も選択肢です。
収入などの条件を満たせば利用できるため、確認してみてください。
相談の際は、契約書・解除通知・滞納の記録・現地の写真を持参すると、話がスムーズに進みます。
【関連記事】立ち退き交渉の進め方は?6つのステップや立ち退き料の相場を解説
占有移転禁止の仮処分に関する悩みは「ベンナビ法律相談Q&A」で解決しよう
占有移転禁止の仮処分は、申し立てるべきかどうかの判断が難しく、資料のそろえ方や担保金の額によって、明渡しまでの期間と費用が大きく変わります。
早い段階で弁護士に相談することで、仮処分の要否から明渡し訴訟・強制執行までの見通しを具体的に立てることが可能です。
とはいえ、「弁護士に相談すべきレベルの話なのか」判断がつかない、という方も少なくありません。
ベンナビ法律相談Q&Aでは、質問を投稿すると、不動産トラブルなどの分野を得意とする弁護士が無料で回答してくれるため、解決に向けた具体的な対処方法がわかります。
まずは無料相談を活用し、自分の状況で何ができるのかを確認してみましょう。
占有移転禁止の仮処分に関するよくある質問
さいごに、占有移転禁止の仮処分についてよく寄せられる質問を紹介します。
占有移転禁止の仮処分の弁護士費用はいくら?
弁護士費用は事務所ごとに自由に定められており、一律の金額はありません。
仮処分だけでなく、明渡し訴訟や強制執行とまとめて着手金・報酬金を設定する事務所もあります。
依頼前に、どこまでの手続きが含まれるのかを見積もりで確認しましょう。
土地にも占有移転禁止の仮処分を申し立てられる?
はい、建物だけでなく土地も対象になります。
たとえば、契約が終わった駐車場や資材置き場を明け渡してもらえない場合や、不法占拠されている場合に利用されます。
占有移転禁止の仮処分の申立ては取り下げられる?
はい、申し立てた側はいつでも取り下げられ、相手方の同意も必要ありません(民事保全法18条)。
借主が任意に退去して和解が成立した場合などに取り下げます。
すでに執行が済んでいる場合は、執行官に公示書を取り除いてもらう手続きもあわせて必要です。
動産の占有移転禁止の仮処分とは?
自動車や機械などの動産について、占有の移転を禁止する仮処分です。
不動産と違い、債務者に使用を認めず執行官が保管する形がとられることもあります。
占有移転禁止の仮処分の根拠となる条文は?
中心となるのは、民事保全法の次の3つの条文です。
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23条1項:係争物に関する仮処分の要件
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25条の2:債務者を特定しないで出す仮処分
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62条:仮処分の効力
条文の全文は、e-Gov法令検索の民事保全法のページで確認できます。
まとめ
占有移転禁止の仮処分は、明渡し訴訟の前に占有者を固定し、勝訴後の強制執行に備えるための手続きです。
借主以外の出入りや連絡不通、無断転貸など、占有を移されるおそれがあるときに検討します。
申立てから執行までは2週間から1か月程度が目安で、担保金と執行官への予納金を準備する必要があります。
仮処分だけでは明渡しは実現しないため、明渡し訴訟と強制執行までの見通しを立てておくことが大切です。
申し立てるべきか迷ったら、早めに弁護士へ相談することが、明渡しまでの負担を軽くする近道です。
