使用貸借とは?賃貸借との違いや返してもらう方法・相続での扱いを解説
親の土地に兄弟が家を建てて住んでいる、亡くなった親が知人にただで貸していた家を返してほしいなど、無償で貸し借りしている不動産のことで悩んでいませんか。
こうした無償の貸し借りは法律上「使用貸借」と呼ばれる契約で、口約束だけでも成立します。
賃料を払う賃貸借とは終わり方がまったく違い、借主の立場も賃貸借より弱いのが特徴です。
本記事では主に貸している側の立場から、賃貸借との違いや契約が終わるタイミング、相続時の扱い、返してもらう手順を解説します。
返還を求められた借主が知っておきたいポイントもあわせて紹介するので、読み終えるころには自分のケースでどう動けばよいかを判断できるようになります。
- 使用貸借とは|賃貸借との5つの違い
- 使用貸借になる不動産の代表的なケース4つ
- 使用貸借は口約束でも成立する|2020年4月1日施行の改正民法のポイント
- 使用貸借が終わるタイミングは「期間・目的・借主の死亡」で決まる
- 使用貸借の当事者が亡くなったときの扱い
- 使用貸借した不動産を返してもらう4ステップ
- 使用貸借が終わったときに借主が負う義務|原状回復と収去
- 返還を求められた借主は拒否できる?借主が知っておきたいポイント
- 使用貸借のトラブルを防ぐ対策3つ
- 使用貸借の返還を求めるときにやってはいけない3つの対応
- 使用貸借のトラブルで悩んでいるなら弁護士に相談するのがおすすめ
- 使用貸借のトラブルに関する悩みは「ベンナビ法律相談Q&A」で解決しよう
- 使用貸借に関するよくある質問
- まとめ
使用貸借とは|賃貸借との5つの違い
使用貸借(しようたいしゃく)とは、物を無償で貸し、借主が使い終わったら返すことを約束する契約です。
民法593条に定めがあり、貸す側を「貸主」、借りる側を「借主」と呼びます。
借主が持つ「無償で使う権利」は、使用借権(使用貸借権)と呼ばれます。
賃料を払う賃貸借との主な違いは、次の5つです。
| 項目 | 使用貸借 | 賃貸借 |
|---|---|---|
| 賃料 | なし(無償) | あり |
| 借地借家法の適用 | 適用されない | 適用される |
| 第三者への対抗力 | 主張できない | 登記などで主張できる |
| 契約の終わり方 | 期間満了・目的の終了・借主の死亡など | 普通借地・普通借家は更新が原則で、貸主からの更新拒絶・解約には正当事由が必要 |
| 借主が亡くなったとき | 契約は終了する | 相続人が借主の立場を引き継ぐ |
結論として、賃料を受け取らないぶん、使用貸借の借主は賃貸借の借主よりも法律上の保護が弱くなっています。
それぞれの違いを順に見ていきましょう。
1. 賃料の有無|固定資産税程度の負担なら使用貸借のまま
使用貸借と賃貸借を分けるのは、物を使うことの対価として賃料を払っているかどうかです。
賃貸借は、借主が賃料を支払うことを約束して成立する契約です(民法601条)。
一方、借主が土地や建物の固定資産税を代わりに負担しているだけでは、賃貸借にはなりません。
最高裁昭和41年10月27日判決は、借主が固定資産税などの公租公課を負担していても、使用の対価といえる特段の事情がなければ使用貸借にあたると判断しました。
国税庁も、固定資産税などの公租公課に相当する金額以下のやり取りしかない場合は、使用貸借として扱うとしています。
固定資産税を大きく超える金額を毎月受け取っている場合は、賃貸借と判断される可能性があります。
2. 借地借家法の適用|使用貸借には適用されない
借地借家法は、土地の賃借権や建物の賃貸借を対象とする法律で、使用貸借には適用されません。
賃貸借で建物を建てるために土地を借りた場合、普通借地権の存続期間は30年以上と定められています。
さらに、普通借地・普通借家で貸主が契約の更新を拒むには、正当事由(土地や建物を使う必要性や立退料の提供など)が必要です。
使用貸借にはこうした保護がないため、民法に定められた終了原因があれば契約は終わります。
借主が土地の上に家を建てていても、使用貸借である限り借地権は生じません。
3. 第三者への対抗力|売却されると借主は使い続けられない
使用借権は登記ができず、土地や建物が第三者に売られると、借主は新しい所有者に使用貸借を主張できません。
賃貸借であれば、賃借権の登記や、借地上の建物の登記によって新しい所有者にも権利を主張できます(借地借家法10条)。
使用貸借にはこうした対抗手段がないため、新しい所有者から明渡しを求められれば、原則として応じることになります。
新しい所有者の請求が嫌がらせ目的であるなど、権利の濫用として認められない例外もあります。
借主の立場にある方は、貸主から売却の話が出た段階で、早めに弁護士へ相談しておくと安心です。
4. 契約の終わり方|期間・目的・借主の死亡で終わる
使用貸借が終わるのは、期間の満了、目的に従った使用の終了、借主の死亡などのときです。
普通借地・普通借家の賃貸借は更新が原則で、貸主から終わらせるには正当事由が必要なため、簡単には終わりません。
一方、使用貸借では、民法597条と598条に定められた終了原因があれば、正当事由がなくても契約が終わります。
期間や目的の取り決めによって終わるタイミングが変わるため、契約時に何を決めたかを最初に確認しましょう。
【関連記事】立ち退き交渉の進め方は?6つのステップや立ち退き料の相場を解説
5. 費用の負担|通常の必要費は借主が負担する
使用貸借では、日常的な修繕費や維持費などの「通常の必要費」は借主が負担します(民法595条)。
たとえば、水回りの小さな修理や庭木の手入れにかかる費用がこれにあたります。
一方、大規模な修繕費や、建物の価値を高める工事の費用(有益費)は、返還するときに貸主へ支払いを求められる場合があります。
賃貸借では修繕の義務は原則として貸主にあるため、費用の負担も大きな違いです。
使用貸借になる不動産の代表的なケース4つ
親族間で土地や家を無償で使わせているケースの多くは、契約書がなくても使用貸借にあたります。
代表的なケースは、次の4つです。
- 親の土地に子が家を建てて住んでいる
- 親族や知人に家を無償で住まわせている
- 親と同居していた相続人が実家に住み続けている
- 土地を駐車場や家庭菜園として無償で貸している
1. 親の土地に子が家を建てて住んでいる
親の土地に子が家を建てて地代を払っていない場合は、土地の使用貸借にあたります。
建物は子の所有、土地は親の所有という関係です。
子が借地権の贈与を受けたとして贈与税がかかることは原則としてなく、国税庁は使用貸借による土地の使用権の価額を「零」として扱っています。
ただし、地代を払い始めると賃貸借と判断され、権利金を払っていなければ借地権の贈与として課税関係が生じる場合があります。
地代のやり取りを検討するときは、事前に税務署や税理士へ確認しておきましょう。
2. 親族や知人に家を無償で住まわせている
家賃を受け取らずに親族や知人を住まわせている場合は、建物の使用貸借にあたります。
たとえば、離婚して戻ってきた子や、仕事を失った兄弟に空き家を貸しているケースです。
口約束で始まり、いつまで住むのかを決めていないことも少なくありません。
期間や目的を決めていなければ貸主は返還を求めやすくなる一方、借主との認識の違いから争いになりやすい点に注意しましょう。
3. 親と同居していた相続人が実家に住み続けている
親の許しを得て同居していた相続人は、親が亡くなった後も、遺産分割が終わるまでは無償で住み続けられるのが原則です。
最高裁平成8年12月17日判決は、親と同居していた相続人との間には使用貸借の合意があったと推認されると判断しました。
合意の内容は、遺産分割が終わるまで同居の相続人に無償で使わせるというものです。
そのため、ほかの相続人は、遺産分割が終わる前に家賃相当額の支払いや明渡しを求めることが難しくなります。
なお、亡くなった方の配偶者には、配偶者短期居住権という別の制度による保護もあります(民法1037条)。
遺産分割で家を取得する人が決まった後は、取得者と住み続けている相続人との間で明渡しが問題になることがあります。
4. 土地を駐車場や家庭菜園として無償で貸している
建物を建てない利用でも、無償で土地を使わせていれば使用貸借です。
たとえば、隣人に空き地を駐車場として使わせているケースがあてはまります。
借主は決められた使い方を守る義務があり、無断で別の用途に使ったり第三者に又貸ししたりすれば、貸主は契約を解除できます(民法594条)。
貸すときは、使う範囲や用途を書面で決めておきましょう。
使用貸借は口約束でも成立する|2020年4月1日施行の改正民法のポイント
2020年4月1日施行の改正民法により、使用貸借は貸主と借主が合意するだけで成立する契約になりました。
改正前は、物を実際に引き渡したときに初めて成立する契約とされていました。
改正後は、合意の時点で契約が成立し、契約書がなくても有効です。
その代わり、書面を作らずに使用貸借を約束した場合、貸主は借主が物を受け取るまでであれば契約を解除できます(民法593条の2)。
たとえば、「来月から実家の離れを使っていい」と口頭で約束しただけであれば、引き渡し前に撤回できます。
一方、すでに引き渡して使わせている場合は、口約束でも契約は有効で、貸主の都合だけで一方的に取り消すことはできません。
後から「そんな約束はしていない」と争いになるのを防ぐためにも、期間や目的を書面に残しておくことが重要です。
使用貸借が終わるタイミングは「期間・目的・借主の死亡」で決まる
使用貸借がいつ終わるかは、契約時に期間や目的を決めたかどうかで変わります。
| 取り決め・事情 | 使用貸借が終わるタイミング | 根拠 |
|---|---|---|
| 期間を決めた | 期間が満了したとき | 民法597条1項 |
| 期間は決めず、目的を決めた | 目的に従った使用を終えたとき。使用するのに足りる期間を経過すれば、貸主は解除できる | 民法597条2項・598条1項 |
| 期間も目的も決めていない | 貸主はいつでも解除できる | 民法598条2項 |
| 借主が亡くなった | 借主の死亡で終了する | 民法597条3項 |
| 借主が用法を守らない・無断で又貸しした | 貸主は解除できる | 民法594条3項 |
| 借主から終わらせたい | 借主はいつでも解除できる | 民法598条3項 |
親族間の使用貸借では、目的が「家を建てて住むため」などと決まっていることが多く、「使用するのに足りる期間」を経過したかどうかが争点になります。
最高裁平成11年2月25日判決は、経過した年数や無償で貸した事情、その後の人間関係の変化、貸主が土地を使う必要性などを比べて判断すべきとしました。
判決の事案では、土地の使用開始から約38年8か月がたち、当事者の関係も大きく変わっていました。
そのため、借主にほかに住む場所がないことなどを理由に、終了を否定することはできないと判断されています。
また、最高裁昭和42年11月24日判決は、親子の信頼関係を前提とした使用貸借で貸主の解除を認めています。
借主が親の扶養をやめ、兄弟とも交際を絶つなど、信頼関係が壊れていたケースです。
期間の経過や関係の変化をどう評価するかは事案ごとに異なるため、判断に迷う場合は弁護士に確認してもらうと安心です。
使用貸借の当事者が亡くなったときの扱い
使用貸借は借主が亡くなると終わりますが、貸主が亡くなっても終わりません。
| 亡くなった人 | 使用貸借の扱い |
|---|---|
| 借主 | 契約は終了し、借主の相続人は物を返す |
| 貸主 | 契約は続き、貸主の相続人が貸主の立場を引き継ぐ |
それぞれのケースを詳しく見ていきます。
借主が亡くなった場合|使用貸借は終了し、相続人は返還する
借主が亡くなると、使用貸借は終了し、借主の相続人は借主の立場を引き継ぎません(民法597条3項)。
使用貸借は、貸主と借主の個人的な関係にもとづいて無償で貸すものだからです。
そのため、借主と同居していた家族がいても、貸主は原則として返還を求められます。
ただし、借主の死亡後も家族が住み続けることを前提にした合意があったと認められる場合など、例外的に終了しないと判断されることもあります。
借主が土地の上に自分名義の家を建てていた場合は、家を取り壊すのか、貸主が買い取るのかなど、建物の扱いを話し合いましょう。
貸主が亡くなった場合|相続人が貸主の立場を引き継ぐ
貸主が亡くなっても使用貸借は終わらず、貸主の相続人が貸主の立場を引き継ぎます。
相続人が返還を求められるのは、期間の満了や目的の終了など、民法に定められた終了原因があるときです。
裏を返せば、相続したからといって、すぐに借主へ明渡しを求められるわけではありません。
なお、相続税の計算では、使用貸借で貸している土地は自分で使っている土地(自用地)と同じ評価です。
賃貸している土地のような評価減は受けられない点に注意してください。
遺産分割で誰が土地を取得するかを決めるときは、使用貸借を続けるかどうかもあわせて話し合っておきましょう。
使用貸借した不動産を返してもらう4ステップ

使用貸借した不動産を返してもらうには、終了原因の確認→話し合い→内容証明郵便での通知→調停・訴訟の順に進めるのが基本です。
- 契約内容と終了原因を確認する
- 返還してほしい理由と期限を伝えて話し合う
- 内容証明郵便で解除・返還を通知する
- 調停・訴訟で明渡しを求める
それぞれの進め方を解説します。
ステップ1:契約内容と終了原因を確認する
まずは期間や目的の取り決め、貸した経緯、使用期間を整理し、民法上の終了原因にあたるかを確認します。
契約書がなければ、当時のメールや手紙、固定資産税の支払い状況など、貸した経緯がわかる資料を集めましょう。
取り決めの記録が残っていない場合は、いつ・誰に・何のために貸したのかを思い出せる範囲で書き出しておくと、交渉や相談の場で役立ちます。
ステップ2:返還してほしい理由と期限を伝えて話し合う
終了原因を確認できたら、返還してほしい理由と時期を具体的に伝えて話し合います。
借主にも生活があるため、転居先を探す期間として数か月程度の猶予を示すと、話し合いがまとまる可能性が高まります。
状況によっては、引っ越し費用の一部を負担するなどの譲歩案を用意しておくのも一つの方法です。
合意できたら、返還の時期や建物・荷物の扱いを書いた合意書を作りましょう。
ステップ3:内容証明郵便で解除・返還を通知する
話し合いに応じてもらえない場合は、内容証明郵便で契約の解除と返還を求めます。
内容証明郵便は、いつ・どのような内容の文書を送ったかを日本郵便が証明するサービスです。
通知書には、対象の物件、使用貸借が終わった理由、返還の期限を記載します。
弁護士の名前で送ると、相手が問題を真剣に受け止め、話し合いが進むケースもあります。
ステップ4:調停・訴訟で明渡しを求める
それでも返還されない場合は、民事調停や明渡請求訴訟で明渡しを求めます。
民事調停は裁判所で調停委員を交えて話し合う手続きで、親族間のように関係を保ちたい場合に向いている方法です。
調停で合意できなければ、明渡しを求める訴訟を起こしましょう。
借主が自分の家を建てている場合は、建物を取り壊して土地を明け渡すよう求める「建物収去土地明渡請求」です。
判決が出ても借主が応じないときは、判決にもとづいて強制執行を申し立てれば、明渡しを実現できます。
使用貸借が終わったときに借主が負う義務|原状回復と収去
使用貸借が終わったとき、借主は借りた後に取り付けた物を取り除き、自分の責任で生じた損傷を元に戻して返す義務を負います(民法599条)。
たとえば、借主が設置した物置やエアコンは、借主が取り外して返すのが原則です。
ただし、建物と一体化して取り外せない物や、取り外しに多額の費用がかかる物は、収去の義務の対象外です。
損傷についても、借主の責任によらない損傷は元に戻す必要がありません。
用法違反による損害の賠償や、借主が支出した費用の返還を求める期限は、貸主が物の返還を受けてから1年以内です(民法600条)。
返還を受けたら、建物や土地の状態をすぐに確認し、写真で記録しておくと、損傷をめぐる話し合いで役立ちます。
返還を求められた借主は拒否できる?借主が知っておきたいポイント
返還を求められた借主は、終了原因がなければ返還を拒めますが、終了原因があれば原則として返還する必要があります。
まずは、貸主の主張する終了原因が本当にあるのかを確認することが先決です。
目的を決めた使用貸借では、まだ使用貸借は終わっていないと反論できる場合があります。
反論の材料は、主に次のような事情です。
- 貸した経緯
- 使用している期間
- 当事者の関係
- 建物の価値
- 互いにその不動産を使う必要性
使用貸借には借地借家法が適用されないため、貸主に立退料を支払う法律上の義務はないのが原則です。
ただし、交渉の中で引っ越し費用などの解決金を受け取って明け渡し、早期に解決するケースも見られます。
自分で建てた家がある場合は、原則として家を取り壊して土地を返すことになり、負担が大きくなりがちです。
返還を求められた段階で弁護士へ相談し、取りうる選択肢を確認しておきましょう。
使用貸借のトラブルを防ぐ対策3つ
使用貸借のトラブルを防ぐには、契約書の作成、家族への共有、地代を受け取る前の確認の3つが有効です。
| 対策 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 契約書の作成 | 期間・目的・返還条件を書面にする | 返還の時期や条件をめぐる争いを防げる |
| 家族への共有 | 誰に何を貸しているかを家族と共有する | 相続後に相続人と借主が対立するのを防げる |
| 地代を受け取る前の確認 | 賃貸借になるリスクと税金を確認する | 意図せず借主の権利が強くなるのを防げる |
すでに口約束で貸している場合も、今から書面を作っておけます。
1. 契約書で期間・目的・返還条件を決めておく
使用貸借の契約書には、何を何のためにいつまで貸し、どのような条件で返すかを書いておきましょう。
主な記載事項は、次のとおりです。
- 対象の土地・建物(所在地、地番、面積など)
- 無償で貸すこと
- 使用貸借の期間
- 使用の目的(例:自宅の敷地として使用する)
- 禁止事項(又貸し・用途の変更・増改築など)
- 返還時の原状回復や建物の取扱い
期間を決めておけば期間の満了で使用貸借が終わるため、返還の時期をめぐる争いを防ぎやすくなります。
なお、書面で契約すると、貸主は物を引き渡す前であっても、書面によらない場合のように自由に解除することはできなくなります。
2. 家族や相続人に使用貸借していることを共有する
貸主は、誰に何をいつまで貸しているのかを家族と共有しておくことが大切です。
事情を知らない相続人が、相続後にいきなり借主へ明渡しを求め、争いになるケースがあるためです。
遺言で土地を誰に相続させるか、使用貸借を続けるかを決めておくと、相続後の対立を避けやすくなります。
借主の側も、貸主の家族と日ごろから関係を保っておくと、相続が起きた後も話し合いの窓口を保てます。
3. 地代を受け取る前に賃貸借になるリスクを確認する
善意で始めたお礼のやり取りでも、固定資産税を超える地代を受け取ると、賃貸借と判断される可能性があります。
賃貸借になると借地借家法が適用され、貸主は正当事由がなければ返還を求められません。
また、権利金を受け取らずに地代だけを受け取ると、借主が借地権の贈与を受けたとして課税される場合もあるので注意しましょう。
お金のやり取りを始める前に、弁護士や税理士へ確認してください。
使用貸借の返還を求めるときにやってはいけない3つの対応
返還を求めるときは、借主の同意なく実力で明渡しを実現しようとする「自力救済」をしてはいけません。
具体的に問題になるのは、次の3つの対応です。
- 鍵を交換する、電気や水道を止める
- 借主の荷物を勝手に運び出す、建物を取り壊す
- 借主の家族や勤務先に連絡して圧力をかける
使用貸借が終わっていても、実力で明け渡させようとすれば借主から損害賠償を請求されるおそれがあります。
さらに、住居侵入罪や器物損壊罪などの刑事責任を問われる可能性もあるため、絶対に避けてください。
借主の家族や勤務先への連絡も、名誉毀損やプライバシー侵害として違法と判断される場合があります。
借主が明渡しに応じない場合は、調停や訴訟を通じて、判決にもとづく強制執行で明渡しを実現するのが正しい進め方です。
使用貸借のトラブルで悩んでいるなら弁護士に相談するのがおすすめ
使用貸借をめぐるトラブルは、親族や知人との間で起きることが多く、当事者同士の話し合いだけでは感情的になって進まないことが少なくありません。
弁護士に相談すれば、使用貸借がすでに終わっているかどうかの見通しを、経緯や証拠をもとに法的に整理してもらえます。
内容証明郵便の作成から相手方との交渉、調停・訴訟の対応まで任せられる点も大きなメリットです。
なお、不動産の名義変更などの登記は司法書士、相続税や贈与税の相談は税理士が得意とする分野です。
費用面が心配な場合は、法テラスや自治体が開く無料の法律相談を利用する方法もあります。
返還を求める貸主、返還を求められた借主のどちらであっても、早い段階で弁護士への相談を検討してください。
【関連記事】不動産トラブルは弁護士に相談できる?種類・費用・選び方を解説
使用貸借のトラブルに関する悩みは「ベンナビ法律相談Q&A」で解決しよう
使用貸借のトラブルは、親族間の感情的な対立に発展しやすく、使用貸借が終わっているかどうかや建物の扱いによって、解決までの道のりが大きく変わります。
早い段階で弁護士に相談することで、返還を求められるかどうかの見通しから、交渉の進め方まで、具体的な選択肢が見えてきます。
とはいえ、「家族の問題で弁護士に相談すべきレベルの話なのか」判断がつかない方も、少なくないのが現状です。
ベンナビ法律相談Q&Aでは、質問を投稿すると、不動産トラブルなどの分野を得意とする弁護士が無料で回答してくれるため、解決に向けた具体的な対処方法がわかります。
まずは自分の状況に近いQ&Aを探すところから始めてみましょう。
使用貸借に関するよくある質問
さいごに、使用貸借についてよく寄せられる質問を紹介します。
使用貸借の土地の固定資産税は誰が払う?
固定資産税は、土地や建物の所有者である貸主に課税されます。
借主が代わりに負担することもでき、固定資産税程度の負担であれば使用貸借のままとされるのが判例です。
ただし、固定資産税を大きく超える金額を受け取ると賃貸借と判断される可能性があるため、負担の取り決めは書面に残してください。
使用貸借に期間の上限はある?20年以上でも大丈夫?
使用貸借の期間には、法律上の上限はありません。
20年や30年といった長い期間を決めることもでき、決めた期間が満了すれば使用貸借は終了です。
ただし、期間を決めずに長年貸していると、使用するのに足りる期間を経過したかどうかが争いになりがちです。
使用貸借のデメリットは?
貸主にとっての主なデメリットは、期間や目的を決めていると返してほしいときにすぐ返してもらえない点と、相続税で貸している土地の評価減を受けられない点です。
借主にとっては、借地借家法の保護がなく、借主の死亡や土地の売却によって住み続けられなくなるおそれがある点がデメリットです。
どちらの立場でも、期間や目的を書面で決めておくことがトラブル防止につながります。
長年借りていた土地は時効で自分のものになる?
使用貸借で借りている土地は、長年使っていても原則として時効で自分のものにはなりません。
所有権の取得時効には「所有の意思をもって」占有することが必要で、借りているという認識で使っている場合はこの要件を満たさないためです。
まとめ
使用貸借は、土地や建物を無償で貸し借りする契約で、賃料がないぶん借地借家法の保護がなく、借主の立場は賃貸借より弱くなっています。
使用貸借が終わるのは期間の満了、目的に従った使用の終了、借主の死亡などのときで、貸主が亡くなっても契約は続きます。
返還を求めるときは、終了原因を確認したうえで、話し合い→内容証明郵便→調停・訴訟の順に進めましょう。
鍵の交換や荷物の撤去といった自力救済は、使用貸借が終わっていても許されません。
親族間の使用貸借は感情的な対立に発展しやすいため、一人で抱え込まず、早めに専門家へ相談することで、こじれる前に解決の道筋を立てられる可能性が高まります。
使用貸借が終わっているかどうかの判断や、返還の進め方に不安がある方は、ベンナビ法律相談Q&Aをご活用ください。
