共有名義の不動産とは?できること・できないことやトラブルの解消方法を解説
相続した実家や夫婦で買った家が共有名義になっていて、売りたいのに他の共有者が同意してくれない、と悩んでいませんか。
共有名義の不動産は、自分の持分なら単独で処分できる一方、不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要です。
ただし、話し合いがまとまらなくても、共有物分割請求という裁判所の手続きで共有状態を解消できます。
本記事では、共有名義の不動産で単独でできること・できないこと、起こりやすいトラブル、共有名義を解消する方法と相談先について解説します。
読み終えるころには、自分のケースでどの解消方法を選べばよいかを判断できるようになります。
共有名義の不動産とは|1つの不動産を持分に応じて複数人で所有する状態
共有名義とは、1つの不動産を複数人がそれぞれの持分割合に応じて所有し、全員が登記簿に名義人として記載されている状態です。
持分(もちぶん)とは、不動産に対して各共有者が持つ所有権の割合のことです。
たとえば、夫が2分の1、妻が2分の1の持分で家を所有している場合、夫婦それぞれが家全体に対して半分ずつの権利を持っています。
持分は、法務局で取得できる登記事項証明書の「権利部(甲区)」で確認できます。
不動産が共有名義になる主なケースは、次の3つです。
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夫婦がお金を出し合って自宅を購入した
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親が亡くなり、複数の相続人が不動産を相続した
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親子や兄弟で資金を出し合って購入した、または持分の贈与を受けた
夫婦の共有名義には、要件を満たせば住宅ローン控除や売却時の特別控除をそれぞれが利用できるという利点があります。
一方で、出資額と持分割合が一致していないと、差額分が贈与とみなされ贈与税がかかる可能性がある点は押さえておきましょう。
共有名義の不動産で単独でできること・できないこと
共有名義の不動産では、行為の種類によって「単独でできる」「持分の過半数で決める」「全員の同意が必要」の3段階に分かれます。
ルールは民法で定められており、2023年4月1日施行の改正民法で内容が一部見直されました。
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行為の種類 |
具体例 |
必要な同意 |
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保存行為 |
雨漏りの修繕、不法占拠者への明渡し請求 |
各共有者が単独でできる |
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管理行為 |
短期の賃貸、軽微な変更、使用方法の決定 |
持分の価格の過半数 |
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変更・処分行為 |
不動産全体の売却、建て替え、大規模なリフォーム |
共有者全員の同意 |
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自分の持分の処分 |
持分の売却・贈与・放棄 |
単独でできる |
また、各共有者は持分に応じて不動産全体を使用できます。
それぞれの行為について詳しく見ていきましょう。
1. 保存行為|修繕などは各共有者が単独でできる
雨漏りの修繕など、不動産の現状を維持するための保存行為は、各共有者が単独で行えます。
不動産の価値を守る行為は、他の共有者にとっても利益になるためです。
たとえば、台風で破損した屋根を修理する場合や、無断で住み着いた第三者に退去を求める場合が保存行為の例です。
かかった費用は、持分に応じて他の共有者に負担を求められます。
2. 管理行為|賃貸や軽微な変更は持分価格の過半数で決める
第三者への短期の賃貸や、形状・効用を大きく変えない軽微な変更は、持分の価格の過半数で決められます。
過半数を数える基準は人数ではなく持分の割合で、持分2分の1の人と4分の1の人が賛成すれば合計4分の3です。
賃貸の場合、過半数で決められるのは建物なら3年以内、土地なら5年以内の短期賃貸借に限られます。
2023年4月1日施行の改正民法により、外壁の塗り替えのような軽微な変更も管理行為として過半数で決められることが明確になりました。
3. 変更・処分行為|売却や建て替えは共有者全員の同意が必要
不動産全体の売却や建て替え、大規模なリフォームは、共有者全員の同意がなければ行えません。
共有者が1人でも反対すれば不動産全体は売却できない点が、共有名義の最も大きな制約です。
ただし、所在がわからない共有者がいる場合は、裁判所の決定を得て、残りの共有者の同意だけで変更を加えられる制度があります。
4. 自分の持分の処分|売却・放棄は単独でできる
自分の持分だけであれば、他の共有者の同意なく売却・贈与・放棄ができます。
所有者は自分の所有物を自由に処分できるという原則が、持分にも当てはまるためです。
ただし、持分だけを買っても不動産全体を自由に使えるわけではないため、買い手は限られます。
売却価格も、不動産全体を売った場合の持分相当額より低くなりやすい点も理解しておきましょう。
放棄された持分は、他の共有者のものになります。
共有名義の不動産で起こりやすいトラブル5つ
共有名義のトラブルは、売却・使い方・費用負担・相続・持分の第三者への譲渡の5つの場面で起こりやすいです。
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売却や建て替えに反対する共有者がいる
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共有者の1人が住み続けて家賃相当額を払わない
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固定資産税や修繕費を負担しない共有者がいる
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共有者が亡くなり相続人が増えて話し合いが進まない
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知らない間に持分が第三者に売却される
自分の状況がどれに近いかを確認しながら読み進めてください。
1. 売却や建て替えに反対する共有者がいる
共有者が1人でも反対すれば不動産全体は売却できないため、空き家のまま固定資産税だけを払い続ける状態になりがちです。
たとえば、兄弟3人で相続した実家を売りたいのに、1人が「思い出のある家だから残したい」と反対するケースがよくあります。
取るべき対応は、反対の理由が思い入れなのか、住み続けたいからなのか、売却価格への不満なのかによって異なるのが実際のところです。
まずは反対の理由を具体的に聞き取ることが、解決の糸口になります。
話し合いがまとまらない場合の手段は、持分の買取りや共有物分割請求による共有状態の解消です。
2. 共有者の1人が住み続けて家賃相当額を払わない
共有者の1人が不動産を独占して住んでいる場合、他の共有者は持分に応じた使用の対価(家賃相当額)を請求できます。
各共有者は持分に応じて不動産全体を使用できるため、住んでいること自体がただちに違法になるわけではありません。
一方で、2023年4月1日施行の改正民法には、持分を超えて使用している共有者が他の共有者に使用の対価を支払う義務が明記されました。
共有者間で無償とする合意がある場合は、対価を支払う義務は生じません。
たとえば、相場賃料が月10万円の家で持分2分の1の兄が住み続けている場合、持分2分の1の弟は月5万円程度を目安に請求を検討できます。
離婚後に元配偶者が共有名義の家に住み続けているケースも、同じ考え方で整理するのが基本です。
3. 固定資産税や修繕費を負担しない共有者がいる
固定資産税は共有者全員が連帯して納める義務を負い、修繕費などの管理費用は持分に応じて負担するのが原則です。
固定資産税の納税通知書は共有者の代表者1人に届くため、代表者が全額を立て替えたまま清算されないケースが少なくありません。
立て替えた税金や費用は、他の共有者に持分に応じて請求できる性質のものです。
さらに、共有者が1年以内に負担を果たさない場合は、相当の償金を支払って、負担しない共有者の持分を取得することも認められています。
4. 共有者が亡くなり相続人が増えて話し合いが進まない
共有者が亡くなると持分は亡くなった人の相続人に引き継がれるため、放置するほど共有者が増え、全員の同意を取ることが難しくなります。
たとえば、兄弟2人の共有だった土地で兄が亡くなり、兄の配偶者と子ども2人が相続すると、共有者は弟を含めて4人です。
世代が進むと、面識のない親族や連絡先がわからない人が共有者に加わることもあります。
連絡がつかない共有者がいる場合に使えるのが、2023年4月1日施行の改正民法で設けられた裁判所の手続きです。
5. 知らない間に持分が第三者に売却される
共有者は自分の持分を自由に売却できるため、他の共有者が知らないうちに第三者が新たな共有者になることがあります。
持分を買い取った業者から、残りの持分の買取りを打診されたり、共有物分割請求の通知が届いたりするのが典型的なケースです。
通知が届いても、その場で提示された金額や条件に応じる必要はありません。
提示額が妥当か、ほかの分割方法を選べないかを、弁護士に確認してから対応を決めることをおすすめします。
【関連記事】不動産売却トラブルの原因と対処法
共有名義を解消する5つの方法
共有名義を解消する方法は、全体の売却・持分の売買・分筆・持分の放棄・共有物分割請求の5つで、話し合いでまとまる方法から検討するのが基本です。
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方法 |
他の共有者の協力 |
向いているケース |
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全員で売却して代金を分ける |
全員の同意が必要 |
誰も住む予定がなく、現金で分けたい |
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共有者間で持分を売買する |
相手の合意が必要 |
住み続けたい共有者がいる |
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土地を分筆する |
全員の同意が必要 |
ある程度の広さがある土地 |
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自分の持分を放棄する |
登記に協力が必要 |
対価はいらないので共有関係から抜けたい |
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共有物分割請求 |
不要(裁判所が判断) |
話し合いがまとまらない |
それぞれの方法の進め方と注意点を見ていきましょう。
1. 共有者全員で売却して代金を分ける
共有者全員が同意できるなら、不動産全体を売却して代金を持分に応じて分ける方法が、最も高い価格で現金化しやすい方法です。
売買契約や登記には共有者全員が売主として関わりますが、遠方に住む共有者は委任状で代理人に任せる方法もあります。
自宅として住んでいた共有者は、要件を満たせば居住用財産の3,000万円特別控除をそれぞれ利用できます。
売却価格や時期をめぐって後から対立しないよう、最低売却価格や代金の分け方を事前に書面で合意しておくと安心です。
2. 他の共有者と持分を売買して単独名義にする
共有者の1人が他の共有者の持分を買い取れば、不動産を手放さずに単独名義にできます。
実家に住み続けたい相続人が、他の兄弟の持分を買い取るのが典型的な例です。
買取価格は、不動産会社の査定や不動産鑑定士の鑑定を参考にして話し合います。
時価より著しく低い価格で売買すると、差額が贈与とみなされ買い取った側に贈与税がかかる場合があります。
3. 土地を分筆してそれぞれの単独名義にする
土地であれば、持分に応じて土地を分筆し、それぞれを単独名義にする方法があります。
分筆とは、登記上1つの土地を複数の土地に分ける手続きで、測量と分筆登記の依頼先は土地家屋調査士です。
建物は物理的に分けられないため、分筆は主に土地で使われます。
分け方によっては道路に面しない土地や狭すぎる土地ができ、価値が下がることもあるため、分割後の形状まで考えて協議することが重要です。
4. 自分の持分を放棄する
共有関係から抜けたいだけなら、自分の持分を放棄する方法もあり、放棄した持分は他の共有者に移ります。
放棄は単独の意思表示でできる一方、持分移転の登記は他の共有者との共同申請が原則です。
他の共有者が登記に協力しない場合は、登記手続きを求める訴訟が必要になることもあります。
また、持分を受け取った共有者には、贈与税が課される場合がある点も知っておきましょう。
5. 共有物分割請求で裁判所に分け方を決めてもらう
話し合いがまとまらない場合は、共有物分割請求により、最終的に裁判所に分割方法を決めてもらえます。
共有物の分割請求は各共有者の権利で、他の共有者は原則として拒めない点が特徴です。
例外として、5年を超えない期間で分割しないという契約を結んでいる場合は、契約期間中の請求はできません。
相続した不動産で遺産分割がまだ終わっていない場合は、共有物分割請求ではなく、家庭裁判所での遺産分割の手続きを先に進めるのが原則です。
ただし、相続開始から10年を経過すると、遺産分割を経ずに共有物分割請求の中で分けられる場合があり、相続人が期間内に異議を申し出たときは遺産分割の手続きによります。
共有物分割請求の流れ|協議・調停・訴訟の3ステップ
共有物分割請求は、共有者間の協議から始め、まとまらなければ調停や訴訟に進むのが一般的な流れです。
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共有者間で分割方法を協議する
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簡易裁判所の民事調停を利用する
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共有物分割請求訴訟を起こす
訴訟になると、最終的には裁判所が分割方法を判断するため、自分の希望どおりの結果になるとは限りません。
ステップ1:共有者間で分割方法を協議する
まずは共有者全員で、売却・買取り・分筆のどの方法で分けるかを話し合います。
話し合いを申し入れる際は、内容証明郵便を使うと、いつ協議を求めたかの記録が残ります。
合意できた場合は、分割方法や代金の支払時期を記載した合意書を作成しておきましょう。
裁判所への分割請求は、協議が調わないとき、または協議ができないときに認められるものです。
ステップ2:簡易裁判所の民事調停を利用する
当事者だけで話がまとまらないときは、簡易裁判所の民事調停で、調停委員を交えて話し合う方法があります。
共有物分割で訴訟の前に調停を経ることは必須ではないものの、親族間で関係を壊したくない場合に向いた手続きです。
調停の申立手数料は訴訟より低く抑えられます。
調停が成立すると調停調書が作成され、確定判決と同じ効力を持ちます。
【参考】民事調停|裁判所
ステップ3:共有物分割請求訴訟を起こす
協議や調停で解決しない場合は、裁判所に共有物分割請求訴訟を起こし、判決で分割方法を決めてもらいます。
裁判所が選ぶ分割方法は、次の3つです。
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分割方法 |
内容 |
選ばれやすいケース |
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現物分割 |
不動産そのものを持分に応じて分ける |
分筆しても価値が大きく下がらない土地 |
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賠償分割 |
共有者の1人が不動産を取得し、他の共有者に持分の対価を支払う |
取得を希望する共有者に支払い能力がある |
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換価分割(競売) |
不動産を競売にかけ、売却代金を分ける |
現物分割も賠償分割もできない |
2023年4月1日施行の改正民法で、賠償分割が分割方法として明文化されました。
競売になると市場で売るより価格が低くなりやすいため、訴訟の途中で和解し、任意売却や持分の買取りで決着するケースも少なくありません。
共有名義の不動産で連絡がつかない共有者がいるときの対処法
所在がわからない共有者がいる場合でも、2023年4月1日施行の改正民法により、裁判所の手続きを使って不動産の変更・管理や持分の取得ができるようになりました。
対象となるのは、住民票や戸籍などで必要な調査を尽くしても、氏名や所在がわからない共有者(所在等不明共有者)です。
申立先は不動産の所在地を管轄する地方裁判所で、一定期間の公告などの手続きを経て判断されます。
利用できる制度は、変更・管理を決める裁判と、持分を取得・譲渡する裁判の2つです。
【参考】所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し|法務省
不明共有者以外の同意で変更・管理を決める裁判
裁判所の決定を得れば、所在等不明共有者を除いた共有者の同意だけで、変更や管理を行えます。
決め方は、変更行為なら残りの共有者全員の同意、管理行為なら残りの共有者の持分の過半数です。
管理行為については、所在が判明していても、期間を定めた問い合わせに賛否を明らかにしない共有者を除いて決める裁判も利用できます。
たとえば、行方のわからない兄弟がいて実家の大規模な修繕ができない場合などに活用できる制度です。
不明共有者の持分を取得・譲渡する裁判
裁判所の決定を受ければ、所在等不明共有者の持分を時価相当額の供託(法務局に金銭を預けること)と引き換えに取得したり、第三者に譲渡する権限を得たりできます。
持分の取得は、申し立てた共有者が不明共有者の持分を自分のものにする制度です。
譲渡権限の付与は、不明共有者以外の共有者全員が持分を譲渡する場合に限り、不明共有者の持分もまとめて第三者に売却できる制度です。
ただし、不明共有者の持分が相続財産に属し、相続人の間で遺産分割をすべき場合は、相続開始から10年を経過しないと利用できません。
供託金(法務局に預けるお金)の額は裁判所が定めるため、手続きの見通しや費用を事前に弁護士へ確認しておくと安心です。
共有名義の不動産でやってはいけない3つの対応
共有名義の不動産では、無断での処分・相続登記の放置・住んでいる共有者の強制的な追い出しの3つは避ける必要があります。
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他の共有者に無断で全体を売却・賃貸・リフォームする
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相続登記をせずに共有状態を放置する
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住んでいる共有者を力ずくで追い出す
どれも、自分の立場を不利にしたり、新たな紛争を生んだりする原因になります。
1. 他の共有者に無断で全体を売却・賃貸・リフォームする
他の共有者の同意なく不動産全体を処分しても、他の共有者の持分を有効に処分することはできず、損害賠償を求められるおそれがあります。
無断で建物を解体したり長期の賃貸借契約を結んだりした場合に想定されるのは、他の共有者からの原状回復や損害賠償の請求です。
売買契約を結んだ買主との間でも、約束どおり引き渡せないことによるトラブルに発展します。
2. 相続登記をせずに共有状態を放置する
2024年4月1日から相続登記が義務化され、正当な理由なく期限内に登記しないと10万円以下の過料の対象になります。
期限は、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内です。
2024年4月1日より前に発生した相続も対象で、施行前の相続の期限は2027年3月31日までです。
遺産分割の話し合いがまとまらない場合は、相続人であることを申し出る「相続人申告登記」を行えば、ひとまず義務を果たしたことになります。
3. 住んでいる共有者を力ずくで追い出す
住んでいる共有者を鍵の交換や荷物の撤去で追い出すと、違法な自力救済として、逆に損害賠償を求められるおそれがあります。
自力救済とは、裁判などの手続きによらず、自分の力で権利を実現することです。
共有者には持分に応じて不動産全体を使用する権利があります。
持分が多い共有者であっても当然には明渡しを求められないとするのが、最高裁の考え方です(最高裁昭和41年5月19日判決)。
取れる手段は、使用の対価の請求、使い方についての協議、共有物分割請求などの法的手続きです。
感情的な対立が深まっている場合は、弁護士に間に入ってもらい、冷静に交渉を進めることを検討しましょう。
共有名義のトラブルはどこに相談する?
共有者ともめている場合や分割請求をしたい(された)場合は弁護士、登記手続きだけなら司法書士、価格の目安を知りたいなら不動産会社が主な相談先です。
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相談先 |
できること |
向いているケース |
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弁護士 |
共有者との交渉、調停・訴訟の代理、所在等不明共有者の手続き |
共有者と対立している、分割請求の通知が届いた |
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司法書士 |
相続登記・持分移転登記、140万円以下の民事事件の代理(認定司法書士) |
合意はできていて登記だけ必要 |
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土地家屋調査士 |
測量、分筆登記 |
土地を分けて単独名義にしたい |
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不動産会社 |
査定、売却の仲介 |
売却価格や持分の価値の目安を知りたい |
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法テラス |
収入が一定以下の人向けの無料法律相談、弁護士費用の立替え |
費用面で弁護士への依頼をためらっている |
司法書士が代理できる紛争は、目的の価額が140万円以下の民事事件に限られるため、不動産の共有をめぐる交渉は多くの場合で弁護士の領域になります。
弁護士費用は、相談料が30分5,000円〜1万円程度が目安で、初回相談を無料にしている事務所もあります。
着手金と報酬金は、日本弁護士連合会の旧報酬基準をもとに、取得する持分の価額などの経済的利益に応じて算定する事務所が多いです。
たとえば旧基準では、経済的利益が300万円を超え3,000万円以下の場合、着手金は「5%+9万円」、報酬金は「10%+18万円」が目安とされています。
費用は事務所によって異なるため、依頼前に見積もりを確認しておきましょう。
共有名義の不動産に関する悩みは「ベンナビ法律相談Q&A」で解決しよう
共有名義のトラブルは、親族間の話し合いだけでは感情的な対立に発展しやすく、持分の割合や選ぶ分割方法によって、手元に残るお金や住まいが大きく変わります。
早い段階で弁護士に相談することで、持分の買取価格の妥当性から共有物分割請求の見通しまで、具体的な選択肢が見えてくるのが利点です。
とはいえ、「弁護士に相談すべきレベルの話なのか」判断がつかない、という方も少なくありません。
ベンナビ法律相談Q&Aでは、質問を投稿すると、不動産トラブルなどの分野を得意とする弁護士が無料で回答してくれるため、解決に向けた具体的な対処方法がわかります。
まずは無料相談を活用し、自分の状況で何ができるのかを確認してみましょう。
共有名義の不動産に関するよくある質問
さいごに、共有名義の不動産についてよく寄せられる質問を紹介します。
共有名義にすると固定資産税は安くなる?
安くはなりません。固定資産税は不動産全体に対して課税され、共有者全員が連帯して納付義務を負います。納税通知書は代表者1人に届くため、持分に応じた負担額は共有者同士で清算するのが一般的です。
共有名義の不動産を売却したら3,000万円控除は使える?
自宅として住んでいた共有者は、要件を満たせばそれぞれ3,000万円特別控除を利用できます。たとえば夫婦で住んでいた共有名義の家を売却した場合、夫婦それぞれの譲渡所得から最大3,000万円ずつ控除できます。住んでいない共有者は対象外です。
離婚したら共有名義の家はどうなる?
離婚しても共有名義は自動的には解消されず、財産分与の話し合いで、どちらが取得するか、売却して代金を分けるかを決めます。財産分与の請求期限は、2026年4月1日以降に成立した離婚であれば原則として離婚から5年以内、2026年3月31日以前の離婚は2年以内です。住宅ローンが残っている場合は、名義の変更に金融機関の承諾が必要になる点にも注意しましょう。
共有名義の片方が死亡したらどうなる?
亡くなった共有者の持分だけが相続財産となり、亡くなった人の相続人に引き継がれます。たとえば夫婦共有の家で夫が亡くなった場合、夫の持分を妻と子どもが相続すると、共有者は妻と子どもの合計人数です。持分を取得した相続人には、3年以内に相続登記を申請する義務が課されています。
住宅ローンが残っていても共有名義は解消できる?
解消できますが、持分の移転について金融機関の承諾が必要になるのが一般的です。ローンの契約では、担保になっている不動産の名義を無断で変更することが禁止されているためです。名義を変える前に、借入先の金融機関に相談しましょう。
共有名義の片方が死亡したとき、相続放棄はできる?
できますが、不動産の持分だけを選んで放棄することはできず、預貯金なども含めたすべての相続財産を放棄することになります。相続放棄は、原則として自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述して行います。共有者との関係から抜けたいだけであれば、相続したうえで持分を売却・放棄する方法と比べて検討しましょう。
まとめ
共有名義の不動産は、自分の持分なら単独で処分できる一方、全体の売却や建て替えには共有者全員の同意が必要です。
使用の対価や費用の負担、所在がわからない共有者への対応など、民法には共有者の利害を調整するためのルールが用意されています。
話し合いでまとまらない場合でも、共有物分割請求によって共有状態を解消できます。
自分のケースでどの方法を選ぶべきか迷ったら、早めに弁護士へ相談することが、親族間の対立を長引かせない近道です。
