借地借家法とは?借主を守る5つのルールと民法との違いをわかりやすく解説
大家さんや地主から「契約を更新しない」「家賃を上げたい」と告げられ、借地借家法で守られるのか調べていませんか。
借地借家法は、建物や、建物を建てるための土地を借りる人を、民法よりも手厚く守るための法律です。
貸主の都合だけで契約を終わらせたり、一方的に条件を変えたりすることは、借地借家法で大きく制限される仕組みです。
本記事では、借りている側の立場から、借地借家法の基本と借主を守る5つのルール、借地・借家の期間と更新、トラブルの対処法を解説します。
読み終えるころには、自分の契約がどのルールで守られ、届いた通知にどう対応すべきかを判断できるようになります。
借地借家法とは|民法より借りる側を手厚く守る特別法
借地借家法とは、建物の賃貸借と、建物を所有するための土地の貸し借りについて、民法のルールを修正して借りる側を保護する法律です。
1992年8月1日に施行され、従来の借地法・借家法・建物保護に関する法律の3つを1本にまとめました。
賃貸借の基本ルールは民法にもありますが、民法だけでは貸主の立場が強く、借主が住まいや事業の拠点を突然失うおそれがあります。
そこで、期間や更新、貸主からの解約などについて、民法より借主に有利な特別のルールを定めたのが借地借家法です。
|
項目 |
民法だけの場合 |
借地借家法が適用される場合 |
|
期間満了時 |
原則として契約は終わる |
更新を拒む正当な理由がなければ更新される |
|
貸主からの解約 |
期間の定めがなければ申入れから一定期間で終了 |
正当な理由が必要で、建物は申入れから6か月 |
|
貸主が替わったとき |
賃借権の登記がなければ新所有者に対抗できない |
建物の引渡しや借地上の建物登記で対抗できる |
|
借主に不利な特約 |
原則として有効 |
無効になる |
借地借家法は民法の特別法にあたるため、両者の内容がぶつかるときは借地借家法が優先されます。
借地借家法に定めがない部分、たとえば敷金や修繕のルールには民法が適用される、という関係です。
借地借家法が適用される2つの契約|借地と借家
借地借家法が適用されるのは、借地と借家の2種類の契約です。
借地とは、建物を所有する目的で他人の土地を借りる契約を指し、借りる側の権利を借地権と呼びます。
たとえば、地主から土地を借りて自宅や店舗を建てているケースが典型的な借地です。
借家とは、建物の賃貸借のことで、アパート・マンション・一戸建ての賃貸のほか、店舗や事務所の賃貸も含まれます。
不動産会社が建物を一括で借り上げて転貸するサブリース契約にも借地借家法が適用される、というのが判例の立場です(最高裁平成15年10月21日判決)。
自分の契約が「借地」か「借家」かを契約書の表題と目的欄で確認しておくと、どのルールを見ればよいかがわかります。
借地借家法が適用されない契約|駐車場・資材置場・一時使用・無償の貸し借り
借地や借家に見える契約でも、建物を建てる目的のない土地の賃貸借、一時使用の契約、無償の貸し借りには借地借家法が適用されません。
月極駐車場、資材置場、家庭菜園のように、建物を所有しない目的で土地を借りる契約には、民法だけが適用されます。
イベント用の仮設店舗やモデルルームのように、一時使用のためであることが明らかな契約も対象外です。
一時使用かどうかは、契約書の名目ではなく、期間の長さや利用の実態から判断されます。
たとえば、契約書に「一時使用」と書かれていても、何年も住み続けている住宅であれば借地借家法の保護を受けられる場合もあるため、利用の実態が大切です。
親族から家賃なしで家を借りている場合は、民法の使用貸借にあたり、借地借家法の更新や正当事由のルールは使えません。
1992年8月1日より前の借地契約には旧借地法が適用される部分がある
1992年8月1日より前に設定された借地権には、更新や存続期間などについて旧借地法のルールが引き続き適用されます。
借地借家法の附則で、施行前の借地権の更新は「なお従前の例による」と定められているためです。
旧借地法では、建物が石造やコンクリート造などの堅固な建物か、木造などの非堅固な建物かで期間が異なりました。
|
建物の種類 |
期間の定めがない場合 |
更新後の期間 |
|
堅固な建物:鉄筋コンクリート造など |
60年 |
30年 |
|
非堅固な建物:木造など |
30年 |
20年 |
旧法の借地権は、契約を更新しても新法の借地権に自動で切り替わるわけではありません。
一方で借家については、施行前の契約にも原則として借地借家法が適用されます。
古い借地契約の場合は、最初に借地権が設定された時期を契約書や地代の領収書で確認しておくことが大切です。
借地借家法で借主が守られる5つのルール
借地借家法で借主を守る中心的なルールは、正当事由、法定更新、対抗力、賃料の増減請求、不利な特約の無効の5つです。
いずれも借地と借家の両方に共通する骨格で、貸主や地主から通知を受けたときに、どのルールが使えるかを判断する基準になります。
|
ルール |
内容 |
根拠条文 借地/借家 |
|
正当事由 |
貸主は正当な理由がなければ更新拒絶や解約ができない |
6条/28条 |
|
法定更新 |
期間が満了しても一定の場合は自動で更新される |
5条/26条 |
|
対抗力 |
貸主や地主が替わっても借り続けられる |
10条/31条 |
|
賃料の増減請求 |
家賃・地代が不相当になれば増減を請求できる |
11条/32条 |
|
不利な特約の無効 |
借主に不利な特約は無効になる |
9条ほか/30条ほか |
それぞれのルールについて、具体的に見ていきましょう。
1. 正当事由がなければ更新拒絶や解約はできない
貸主や地主が更新を拒んだり解約を申し入れたりするには、正当事由(せいとうじゆう・契約を終わらせるだけの正当な理由)が必要です。
正当事由があるかどうかは、次の事情を総合的に考えて判断されます。
-
貸主と借主のそれぞれが、建物や土地を使う必要性
-
これまでの契約の経過(家賃の支払状況、更新の回数など)
-
建物や土地の利用状況、建物の現況(老朽化の程度など)
-
立退料など、貸主が明渡しと引き換えに支払う財産上の給付の申出
中心になるのは、貸主と借主のどちらがより強くその物件を必要としているかです。
立退料は正当事由を補う要素であり、立退料を払えば必ず立ち退きが認められるわけではありません。
たとえば、建物の老朽化を理由に建替えを求められても、耐震性に大きな問題がなく借主の生活の拠点であれば、正当事由が否定されることもあります。
2. 期間が満了しても契約は自動的に更新される
借地借家法では、期間が満了しても、一定の場合には従前と同じ条件で契約が更新されたものとみなされます。
法律上当然に更新されるという意味で、法定更新と呼ばれる仕組みです。
借家の場合、貸主が期間満了の1年前から6か月前までの間に更新しない旨を通知しなかったときは、契約が更新されます。
通知をした場合でも、期間満了後に借主が住み続け、貸主がすぐに異議を述べなければ、同じく更新される仕組みです。
法定更新された借家契約は、期間の定めがない契約になります。
借地の場合は、借地上に建物があれば、借地人が更新を求めたり土地を使い続けたりすることで更新されます。
地主が更新を拒むには、すぐに異議を述べ、かつその異議に正当事由があることが必要です。
「期間満了=退去」ではないので、更新しないと言われてもすぐに荷物をまとめる必要はありません。
3. 貸主や地主が替わっても住み続けられる
建物の借主は引渡しを受けていれば、借地人は借地上に自分名義で登記した建物があれば、新しい所有者にも権利を主張できます。
新しい所有者に対しても借りる権利を主張できる力が、対抗力です。
たとえば、借りているマンションが売却されて大家が替わっても、すでに入居していれば新しい大家に退去を求められる理由はありません。
借地の場合は、土地の賃借権そのものを登記していなくても、借地上の建物を借地人の名義で登記していれば足ります。
注意したいのは、建物の登記名義が借地人本人ではなく家族になっているケースです。
判例では、家族名義の登記では借地権を第三者に対抗できないとされているため、相続や建替えの後は建物の登記名義を確認しておきましょう。
建物が火災などで滅失した場合も、一定の事項を土地に掲示すれば、滅失から2年間は対抗力が保たれます。
4. 家賃・地代が不相当になれば増減を請求できる
税金や土地の価格、近隣の相場と比べて家賃や地代が不相当になったときは、貸主・借主のどちらからでも増減を請求できます。
ただし、増額の請求を受けても、借主がその額に同意する義務はないのが原則です。
話し合いがまとまらない間は、借主が相当と考える額(通常は従来の家賃)を払い続ければ足ります。
最終的に裁判で増額が認められた場合は、不足分に年1割の利息を付けて支払う仕組みです。
たとえば、月10万円の家賃を11万円に上げると請求され、裁判で10万5,000円と確定すれば、月5,000円の差額と利息を払うことになります。
「一定期間は家賃を上げない」という特約は有効ですが、「家賃を下げない」という特約があっても減額請求は可能です。
賃料の増減を裁判で争う前には、原則として調停を申し立てる必要があります(調停前置主義)。
5. 借主に不利な特約は無効になる
借地借家法の更新や正当事由に関するルールに反する特約のうち、借主に不利なものは契約書に書かれていても無効です。
たとえば、次のような特約は無効になる可能性が高いといえます。
-
貸主から求められたら、いつでも明け渡す
-
期間が満了したら、正当事由がなくても契約は終了する
-
大家が替わったら、借主は退去しなければならない
一方で、退去時に造作(エアコンや畳など、借主が付け加えた設備)の買取りを求めない特約は、法律上有効とされる代表例です。
契約書にサインしているからといって、すべての条項に従わなければならないとは限りません。
気になる条項があれば、契約書を手元に用意して弁護士に確認してもらうと安心です。
借地借家法の「借地」のルール
借地権には、更新のある普通借地権と、更新のない3種類の定期借地権があります。
自分の借地権がどれにあたるかで期間や契約終了時の扱いが大きく変わるため、まず自分の借地権の種類を確かめることが先決です。
|
種類 |
存続期間 |
更新 |
建物買取請求 |
契約の方式 |
|
普通借地権 |
30年以上・更新後は20年、以降10年 |
あり |
できる |
制限なし |
|
一般定期借地権 |
50年以上 |
なし |
しない特約が可能 |
書面または電磁的記録 |
|
事業用定期借地権 |
10年以上50年未満 |
なし |
なし |
公正証書 |
|
建物譲渡特約付借地権 |
30年以上 |
なし・建物を地主に譲渡して終了 |
— |
制限なし |
定期借地権の契約は、契約書の表題に「定期借地権設定契約」などと書かれ、公正証書で作られていることが多いため、契約書で見分けられます。
普通借地権|更新があり、更新されなければ建物買取請求ができる
普通借地権は、存続期間が最低30年で、最初の更新後は20年、2回目以降は10年ずつ続く借地権です。
契約で30年より長い期間を定めた場合は、契約で定めた期間が適用されます。
地主が更新を拒むには正当事由が必要なため、借地上に建物がある限り、借地人は長く土地を使い続けられるのが通常です。
正当事由が認められて契約が更新されなかった場合でも、借地人は地主に建物を時価で買い取るよう請求できます(建物買取請求権)。
建物買取請求権があるおかげで、借地人が建物を取り壊して更地で返すだけ、という結果を避けられるわけです。
建物買取請求権に反する特約で借地人に不利なものは無効とされています。
一般定期借地権|存続期間50年以上で更新なし
一般定期借地権は、存続期間を50年以上とし、更新や建物買取請求をしない特約を書面で定めた借地権です。
期間が満了すると、借地人は原則として建物を取り壊し、更地にして土地を返します。
分譲マンションや戸建ての敷地に使われることが多く、土地を買うより安く住宅を取得できる点が特徴です。
特約は公正証書などの書面で結ぶ必要がありますが、2022年5月18日施行の改正で、電磁的記録(電子契約)でも結べるようになりました。
定期借地権付きの住宅を買う場合は、残りの期間と期間満了時の解体費用の負担を確認しておきましょう。
事業用定期借地権|事業用建物のみで10年以上50年未満
事業用定期借地権は、店舗や倉庫など専ら事業に使う建物のために、10年以上50年未満の期間で設定する借地権です。
住宅を建てる目的では設定できず、社員寮のような居住用の建物も対象外です。
契約は必ず公正証書でしなければならず、私的な契約書だけでは事業用定期借地権として認められません。
期間が30年以上の場合は更新や建物買取請求をしない特約を結ぶことができ、30年未満の場合は法律上当然に更新がありません。
建物譲渡特約付借地権|30年以上経過後に建物を地主へ譲渡して終わる
建物譲渡特約付借地権は、設定から30年以上たった時点で、借地上の建物を地主に相当の対価で譲渡することで借地権が消滅する借地権です。
地主は建物を買い取って賃貸物件として活用でき、借地人は建物の代金を受け取れます。
借地権が消滅した後も借地人や建物の入居者が使い続けたいと求めれば、期間の定めのない借家契約が結ばれたものとみなされます。
そのため、入居者がすぐに退去を迫られるわけではない点も安心材料です。
実務での利用例は少ないものの、契約書に建物譲渡の特約がある場合は、建物譲渡特約付借地権にあたるかを確認する必要があります。
借地借家法の「借家」のルール
建物の賃貸借には、原則として更新される普通借家契約と、期間満了で終了する定期借家契約の2種類があります。
|
項目 |
普通借家契約 |
定期借家契約 |
|
期間 |
1年以上・1年未満は期間の定めなしとみなす |
制限なし・1年未満も可 |
|
更新 |
あり・正当事由がなければ更新 |
なし・再契約は合意しだい |
|
貸主からの終了 |
正当事由が必要 |
期間満了で終了・1年以上は終了通知が必要 |
|
借主からの中途解約 |
契約書の定めによる |
200㎡未満の居住用でやむを得ない事情があれば可能 |
|
家賃の改定特約 |
減額しない特約があっても減額請求できる |
改定特約に従う |
契約書の表題に「定期建物賃貸借契約」とあり、契約前に別の説明書面を受け取っていれば、定期借家契約の可能性が高いといえます。
普通借家契約|更新しない通知は期間満了の1年前から6か月前まで
普通借家契約で貸主が更新を拒むには、期間満了の1年前から6か月前までに通知し、かつ正当事由があることが必要です。
通知期間内に通知がなければ、契約は法定更新されます。
期間の定めがない契約の場合、貸主の解約申入れから6か月がたった時点で契約が終わるのが原則です。
ただし、期間の定めがない契約でも、貸主からの解約申入れには正当事由が求められます。
借主から解約する場合は、契約書に定められた予告期間に従うのが一般的で、1か月前とする例が一般的です。
「来月末で出ていってほしい」と言われても、通知期間と正当事由の両方を満たさなければ、退去に応じる義務はありません。
定期借家契約|書面と事前説明がなければ普通借家として扱われる
定期借家契約は、書面での契約に加え、契約前に「更新がなく期間満了で終わる」ことを別の書面で説明しなければ、定期借家契約として認められません。
事前説明がなかった場合、更新しないという定めは無効になり、普通借家契約として扱われます。
2022年5月18日施行の改正で、契約は電子契約でも結べるようになり、事前説明の書面も借主の承諾があれば電子メールなどで交付できるようになりました。
期間が1年以上の契約では、貸主は期間満了の1年前から6か月前までに、契約が終了する旨を借主へ通知しなければなりません。
通知が遅れた場合、貸主が契約の終了を主張できるのは、通知した日から6か月がたった後です。
床面積200㎡未満の住宅で、転勤や療養、親族の介護などやむを得ない事情があるときは、借主から中途解約を申し入れられ、1か月後に契約が終わります。
借地借家法が問題になる4つのトラブルと対処法
借地借家法が関係するトラブルは、契約書と通知の内容を確認し、法律上の根拠を確かめたうえで交渉し、まとまらなければ調停や訴訟に進むのが基本の流れです。
主なトラブルは、次の4つです。
-
更新拒絶や立ち退きを求められた
-
家賃・地代の値上げを求められた
-
更新料や承諾料を請求された
-
定期借家の期間満了で退去を求められた
どのトラブルでも、相手とのやり取りはメールや書面で残しておくと、後で事実関係を説明しやすくなります。
管理会社を通じた話し合いで解決しないときは、自治体が開く無料の法律相談や、収入が一定以下なら法テラスの無料法律相談も選択肢です。
相手が弁護士を立ててきた場合や、調停・訴訟が見えてきた段階では、早めに弁護士へ相談することで不利な合意を避けやすくなります。
1. 更新拒絶や立ち退きを求められた
更新拒絶や立ち退きを求められても、正当事由が認められるか、借主が合意しない限り、退去する義務はありません。
まずは、通知が期間満了の1年前から6か月前までに届いているか、どのような理由が書かれているかを確認しましょう。
建替えや自己使用などの理由が示されていても、借主の事情と比べて正当事由が認められるかは別問題です。
退去してもよいと考える場合は、引っ越し費用や新居の初期費用などを踏まえて、立退料の額を交渉できます。
合意書にサインする前に、明渡しの期限と立退料の支払時期を必ず確認してください。
交渉の進め方や立退料の相場は以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】立ち退き交渉の進め方は?6つのステップや立ち退き料の相場を解説
2. 家賃・地代の値上げを求められた
家賃や地代の値上げを求められても、借主がその額に同意する義務はなく、従来の額を払い続けて交渉できます。
値上げの理由として、固定資産税の上昇や近隣相場との比較が示されているかを確認し、根拠の資料を求めるところから始めましょう。
大家が従来の額での受け取りを拒んだ場合は、法務局に家賃を供託(きょうたく・家賃を預けて支払ったのと同じ扱いにする手続き)することで、滞納扱いを防げます。
話し合いがまとまらなければ、貸主が簡易裁判所に調停を申し立て、それでも合意できなければ訴訟で額が決まります。
拒否する場合の伝え方や調停の流れは以下の記事をご覧ください。
【関連記事】賃料の値上げは拒否できる?認められる条件と交渉・調停になったときの対応を解説
3. 更新料や承諾料を請求された
更新料は法律上当然に支払う義務があるものではなく、契約書に明確な定めがあり、額が高すぎない場合に支払義務が生じます。
最高裁平成23年7月15日判決は、契約書に明記された更新料条項は、高額すぎるなどの特段の事情がなければ有効と判断しました。
借地では、借地権を第三者に譲渡したり建物を建て替えたりする際に、地主から承諾料を求められることがあります。
地主が正当な理由なく承諾しないときは、裁判所に申し立てて、地主の承諾に代わる許可を得られる制度があります。
許可の際に裁判所が借地人に一定の財産上の給付を命じることもあるため、承諾料の相場観を持って交渉に臨むことが大切です。
請求された額が契約書の定めや相場と比べて妥当かを確認してから、支払うかどうかを決めましょう。
4. 定期借家の期間満了で退去を求められた
定期借家の期間満了で退去を求められたら、契約書の書面、事前説明の書面、終了通知の時期の3点を確認します。
契約前に別の書面で説明を受けた記憶がなければ定期借家契約は成立していない可能性があり、その場合は普通借家契約と同じ扱いです。
終了通知が期間満了の6か月前を過ぎてから届いた場合は、通知の日から6か月がたつまで退去を求められません。
要件を満たした定期借家契約であれば、期間満了で契約は終わり、再契約するかどうかは貸主と借主の合意しだいです。
住み続けたい場合は、期間満了の前に再契約の条件を貸主に打診しておきましょう。
貸主・地主が知っておきたい借地借家法のポイント
貸主や地主の立場では、正当事由の補強、定期契約の要件の確認、賃料改定の手順を押さえておくことで紛争を避けやすくなります。
立ち退きを求める場合は、期間満了の1年前から6か月前という通知期間を守り、建替えの必要性を示す資料を用意しておくことが基本です。
借主の事情によっては、正当事由を補うために立退料の提示を検討する必要もあります。
定期借家契約や定期借地権を使う場合は、書面や公正証書、事前説明の手順を一つでも欠くと更新のない契約として認められないため、手順を省かないようにしましょう。
事前説明書面を交付した記録や借主の受領の署名を残しておくと、後の争いを防ぎやすくなります。
賃料を上げたいときは、固定資産税の推移や近隣の賃料相場などの根拠を示して協議し、まとまらなければ調停を申し立てるのが基本の流れです。
借主が相当な額の家賃を支払っている間は、値上げに応じないことを理由に契約を解除することは原則としてできません。
借地借家法のトラブルでやってはいけない3つの対応
借地借家法をめぐるトラブルで、借主がとってはいけない対応は、通知の放置、家賃の不払い、内容を理解しないままの合意書への署名の3つです。
-
通知や書面を放置する
-
値上げに納得できないからと家賃の支払いを止める
-
内容を十分に理解しないまま合意書にサインする
通知を放置すると、貸主が調停や訴訟を申し立て、裁判所から呼出状が届く段階まで事態が進むことがあります。
家賃の支払いを止めると、借主側の債務不履行として契約を解除され、明渡しと遅延損害金を請求される原因になります。
値上げに納得できない場合でも、従来の家賃は期日どおりに支払うか、受け取りを拒まれたら供託してください。
立ち退きの合意書にいったんサインすると、後から正当事由がなかったと主張しても、合意を覆すことは困難です。
借地借家法に関する悩みは「ベンナビ法律相談Q&A」で解決しよう
借地借家法をめぐるトラブルは、正当事由の有無や契約書の特約の有効性、旧法・新法のどちらが適用されるかによって、取るべき対応が大きく変わります。
退去に応じるべきか、立退料や家賃をどこまで交渉できるかまで具体的な選択肢を整理できるのが、早い段階で弁護士に相談する利点です。
とはいえ、「自分のケースは弁護士に相談すべきレベルの話なのか」判断がつかない、という方も少なくありません。
ベンナビ法律相談Q&Aでは、質問を投稿すると、借地借家・賃貸トラブルなどの分野を得意とする弁護士が無料で回答してくれるため、解決に向けた具体的な対処方法がわかります。
まずはQ&Aを活用し、自分の状況で何ができるのかを確認してみましょう。
借地借家法に関するよくある質問
さいごに、借地借家法についてよく寄せられる質問を紹介します。
借地借家法の読み方は?
借地借家法は「しゃくちしゃっかほう」と読むのが一般的です。
e-Gov 法令検索の読み仮名では「しゃくちしゃくやほう」とされており、どちらの読み方も使われています。
借地借家法はいつできた?廃止された?
借地借家法は1991年に成立し、1992年8月1日に施行されました。
廃止されたのは旧借地法・旧借家法・建物保護に関する法律の3つで、借地借家法自体は現在も有効です。
駐車場やトランクルームにも借地借家法は適用される?
月極駐車場は建物を所有する目的の土地の賃貸借ではないため、借地借家法は適用されません。
トランクルームは、契約の内容が建物の一部を借りる賃貸借か、荷物を預ける契約かによって判断が分かれます。
自分の借地が旧法か新法かはどう見分ける?
最初に借地権が設定された日が1992年8月1日より前であれば旧法、同日以降であれば新法の借地権です。
更新や地主の代替わりがあっても、最初の設定日で判断します。
契約書が見当たらない場合は、地代の領収書や地主とのやり取りから設定時期を確認しましょう。
退去するとき、エアコンなどの造作を買い取ってもらえる?
貸主の同意を得て取り付けたエアコンや畳などの造作は、退去時に時価で買い取るよう請求できます。
ただし、造作買取請求権は特約で排除でき、多くの賃貸借契約書に「造作の買取りを請求しない」という条項が入っているため、契約書の確認が欠かせません。
借主が亡くなったら賃貸借契約はどうなる?
民間の賃貸住宅では、借主が亡くなっても賃貸借契約は終わらず、借家権は相続人に引き継がれます。
相続人がいない場合は、事実上の夫婦や親子として同居していた人が、居住用建物の借主の権利を引き継げます。
まとめ
借地借家法は、建物や建物を所有するための土地を借りる人を、民法より手厚く守る法律です。
貸主や地主は、正当事由がなければ更新を拒んだり解約したりできず、借主に不利な特約も無効になります。
家賃の値上げにも同意する義務はなく、従来の額を払い続けながら交渉できます。
一方で、定期借家契約や定期借地権のように、要件を満たせば期間満了で終わる契約もあるため、まずは契約書で自分の契約の種類を確かめることが出発点です。
通知を受けたまま放置したり、内容を理解しないまま合意したりすると、本来使えた選択肢を失いかねません。
借地借家法をめぐる対応に迷ったら、ベンナビ法律相談Q&Aで、早めに弁護士の意見を聞いてみることが、納得のいく解決への近道です。
