店舗の立ち退き料の相場は?内訳・計算例と提示額が妥当か確かめる方法を解説
貸主から「建物を建て替えるので退去してほしい」と告げられ、提示された立ち退き料が妥当なのか判断できずに迷っていませんか。
店舗の立ち退き料には法律で決まった相場がなく、「家賃何年分」という目安だけでは金額が妥当か判断できません。
移転費用・営業補償・借家権価格という内訳を自分の店の数字で積み上げれば、提示額と比べる基準を持てます。
本記事で解説するのは、店舗を借りている借主向けの立ち退き料の内訳と計算例、立ち退き料が出ないケース、提示額に納得できないときの交渉の進め方です。
読み終えるころには、提示された金額をそのまま受け入れてよいのか、交渉や相談に進むべきかを判断できるようになります。
- 店舗の立ち退き料の相場は「家賃何年分」では決まらない
- 店舗の立ち退き料が支払われる仕組み|正当事由を補う金銭
- 店舗の立ち退き料の内訳|3つの費目と原状回復の扱い
- 業種・立地で店舗の立ち退き料が変わるポイント
- 店舗の立ち退き料の計算例|月額賃料20万円の飲食店の場合
- 店舗の立ち退き料を提示されたら確認すべき4つのこと
- 店舗の立ち退き料に納得できないときの交渉の進め方|4ステップ
- 交渉がまとまらないときは調停・訴訟で店舗の立ち退き料が判断される
- 店舗の立ち退きでやってはいけない3つの対応
- 店舗の立ち退き料にかかる税金|所得税と消費税
- 店舗の立ち退き料を弁護士に相談するメリットと費用の目安
- 店舗の立ち退き料に関する悩みは「ベンナビ法律相談Q&A」で解決しよう
- 店舗の立ち退き料の相場に関するよくある質問
- まとめ
店舗の立ち退き料の相場は「家賃何年分」では決まらない
店舗の立ち退き料は、移転費用・営業補償・借家権価格を積み上げた額が目安になり、法律で決まった相場はありません。
金額は、貸主が立ち退きを求める理由の強さと、立ち退きによって借主が受ける損失の大きさで変わるためです。
インターネットでよく見かける目安と、目安だけでは判断しにくいケースは次のとおりです。
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よく見る目安 |
目安が当てはまりにくいケース |
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家賃の2〜3年分 |
内装に多額の投資をしている、常連客が多いなど、移転による損失が大きい店舗 |
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賃料10万円前後の小規模店舗で1,000万〜1,500万円程度 |
建物の老朽化が進み倒壊の危険が高いなど、貸主側の事情が強いケース |
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業種別の金額幅(飲食店は数百万〜数千万円など) |
同じ業種でも立地・営業年数・売上規模が大きく異なるケース |
たとえば東京地裁には、賃料10万円前後の居酒屋・ラーメン店・理髪店で、約970万〜1,560万円の立ち退き料を認めた裁判例があります。
ただし、いずれも個別の事情を積み上げた結果で、自分の店にそのまま当てはまるとは限りません。
住宅の立ち退き料は家賃の数か月分に引っ越し費用を足した程度にとどまることが多い一方、店舗は内装工事や休業による損失が加わるため、高額になりやすいのが特徴です。
提示額が妥当かどうかは、「家賃何年分か」ではなく、自分の店で実際に生じる損失と比べて判断しましょう。
店舗の立ち退き料が支払われる仕組み|正当事由を補う金銭
立ち退き料は、貸主の「正当事由」(立ち退きを求めるのに必要な正当な理由)が足りない部分を補うために支払われる金銭です。
普通借家契約(更新のある通常の賃貸借契約)では、貸主が更新を拒んだり解約を申し入れたりするには正当事由が必要とされています。
正当事由は、貸主と借主が建物を使う必要性や賃貸借の経緯、建物の利用状況・現況に加え、立ち退き料など金銭の申出も考慮して判断されます。
正当事由が弱いほど店舗の立ち退き料は高くなる
貸主の立ち退き理由が弱いほど、不足分を補う立ち退き料は高くなる関係にあります。
たとえば、耐震診断で倒壊の危険が高いと判定され、建て替え計画も具体的に決まっているなら、貸主側の事情は強いと評価されやすくなります。
反対に築年数が古いだけで耐震診断をしていない、建て替え計画が未定、売却資金を得たいだけといった場合は、事情が弱いと評価されやすいです。
また、申出額と大きな差がない範囲なら、裁判所は申出額を上回る立ち退き料と引き換えに明渡しを命じることもできます(最高裁昭和46年11月25日判決)。
ただし、貸主側に建物を使う必要性がほとんどない場合は、立ち退き料を積んでも正当事由は認められません。
貸主の提示額は「上限」ではなく、交渉の出発点にすぎないと考えておきましょう。
立ち退き料が出ない・少なくなるケース
次のような場合は、立ち退き料が支払われないか、少額になるのが原則です。
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家賃の長期滞納や無断転貸など、信頼関係を壊す契約違反があり、契約を解除された場合
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定期借家契約(更新がなく期間満了で終わる契約)で、期間が満了した場合
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借主の側から解約を申し入れた場合
定期借家契約では、期間が1年以上なら、貸主が期間満了の1年前から6か月前までに終了の通知をすれば、正当事由がなくても契約は終わります。
通知が遅れた場合は、通知から6か月が過ぎるまで終了を主張できないルールです。
自分の契約がどの種類にあたるかは、交渉を始める前に契約書で確かめておきましょう。
店舗の立ち退き料の内訳|3つの費目と原状回復の扱い
店舗の立ち退き料の内訳は、「移転費用」「営業補償」「借家権価格」の3つが基本です。
それぞれの中身と、金額の根拠にする資料をまとめると次のとおりです。
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費目 |
主な中身 |
根拠にする資料 |
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移転費用 |
新店舗の礼金・仲介手数料、内装工事、引っ越し、移転案内、家賃差額 |
内装業者・引っ越し業者の見積書、移転先候補の募集条件 |
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営業補償 |
休業中の営業利益・固定費・休業手当、常連客が離れることによる減収 |
決算書、月次の売上表、給与台帳 |
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借家権価格 |
その場所を借り続ける権利の価値 |
不動産鑑定士の鑑定評価書、周辺の賃料水準 |
退去時の原状回復や内装の扱いも、金額と並ぶ交渉材料になります。
1. 移転費用|新店舗の契約金・内装・引っ越し・案内費用
移転費用は、新しい場所で同じように営業を始めるために必要な実費です。
主に次の項目が含まれます。
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新店舗の礼金・仲介手数料
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新店舗の内装・設備工事費
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什器・在庫・厨房設備などの運搬費
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移転を知らせる案内状・看板・広告の費用
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新店舗の家賃が高い場合の家賃差額(一定期間分)
移転費用は見積書で金額を示しやすいため、提示額が少ない場合に増額を求めやすい費目です。
新店舗の保証金は退去時に返還される部分があるため、償却される部分(返ってこない部分)を中心に計上するのが一般的です。
2. 営業補償|休業中の利益・固定費と常連客が離れる損失
営業補償は、移転に伴う休業や客離れで失われる利益を補うものです。
具体的には、移転工事の期間に得られたはずの営業利益、休業中も支払う家賃以外の固定費や従業員の休業手当が対象になります。
さらに、移転によって常連客が離れ、売上が元の水準に戻るまでの減収分も、得意先を失う損失として考慮されることがあります。
たとえば、駅前で長年営業してきた飲食店が離れた場所へ移るケースは、客離れによる損失が大きいと評価されやすい典型例です。
金額の根拠になるのは決算書や月次の売上表なので、直近2〜3期分を手元にそろえておきましょう。
3. 借家権価格|その場所を借り続ける権利の価値
借家権価格とは、借主としてその建物を借り続けられる地位そのものの財産的な価値のことです。
算定方法には、土地建物の価格に一定の割合を掛ける方法や、新旧の賃料差額をもとにする方法などがあります。
ただし、借家権価格を立ち退き料に含めない裁判例も多く、必ず加算されるとは限らない費目です。
建物の老朽化が著しい場合などは、借家権価格を考慮しないと判断されることもあります。
金額が大きくなりやすい費目なので、請求に含めるかどうかは弁護士や不動産鑑定士の意見を聞いて決めることをおすすめします。
4. 原状回復・造作の扱い|金額ではなく退去条件で調整する
原状回復や内装の扱いは、立ち退き料の金額とは別に、退去の条件として調整するのが現実的です。
店舗の賃貸借では、内装をすべて撤去して借りたときの状態に戻す「スケルトン返し」の特約があることが多く、撤去費用が数百万円になる場合もあります。
建て替えで建物を解体する予定なら、原状回復の免除や残置物の撤去を貸主負担とする条件を合意に入れるよう求めましょう。
なお、借主が付けた設備を貸主に時価で買い取ってもらう「造作買取請求権」という制度もあります。
ただし、造作買取請求権は契約の特約で排除できるため、店舗の契約書では排除されていることが多いです。
業種・立地で店舗の立ち退き料が変わるポイント
店舗の立ち退き料は、場所と顧客の結びつきが強く、内装や設備への投資が大きい業種ほど高くなりやすい傾向があります。
業種ごとに金額を左右しやすい要素を整理すると、次のとおりです。
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業種 |
高くなりやすい要素 |
低くなりやすい要素 |
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飲食店 |
厨房設備・内装への投資、近隣の常連客 |
上層階の店舗、テイクアウト中心 |
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美容室・理髪店 |
固定客の多さ、給排水やセット面などの設備 |
予約制で客が移転先へ通いやすい |
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小売店 |
路面店の集客力、地域密着の固定客 |
通信販売の比率が高い |
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クリニック・歯科医院 |
医療機器の移設、通院患者との結びつき |
近隣に移転先が見つかりやすい |
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事務所 |
移転に伴う設備・通信工事 |
場所と顧客の結びつきが弱い |
実際の裁判例でも、賃料が同程度でも立ち退き料には幅があります。
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裁判例 |
店舗・賃料(月額) |
認められた立ち退き料 |
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東京地裁 平成30年7月20日判決 |
築47年のビルの居酒屋・約8万8,000円 |
約1,156万円 |
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東京地裁 平成30年3月7日判決 |
築40年超の木造建物のラーメン店・約13万9,000円 |
約1,556万円 |
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東京地裁 平成29年7月18日判決 |
築65年超の木造建物の理髪店・約12万3,000円 |
約973万円 |
居酒屋の例では移転費用と営業補償の合計が、ラーメン店の例では建物の耐震性の問題から借家権価格を除いた移転費用と営業補償の合計が、立ち退き料とされました。
裁判例の金額は個別事情の結果なので、自分の店の金額を見積もるときの参考にとどめておきましょう。
店舗の立ち退き料の計算例|月額賃料20万円の飲食店の場合
費目ごとに見積書と決算書の数字を当てはめれば、提示額と比べるための基準額を自分で出せます。
試算の前提は次のとおりです。
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月額賃料20万円・10坪の飲食店で、移転先の賃料は月22万円
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営業利益は月40万円、休業中も発生する固定費・休業手当は月30万円
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移転工事による休業期間は2か月
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費目 |
計算の前提 |
金額 |
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新店舗の礼金・仲介手数料 |
新賃料22万円×2か月分 |
44万円 |
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家賃差額 |
(22万円−20万円)×24か月 |
48万円 |
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内装・設備工事 |
坪50万円×10坪 |
500万円 |
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引っ越し・設備移設 |
業者見積もり |
100万円 |
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移転案内・広告 |
案内状・看板・広告 |
30万円 |
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休業中の営業利益 |
40万円×2か月 |
80万円 |
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休業中の固定費・休業手当 |
30万円×2か月 |
60万円 |
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客離れによる減収 |
営業利益の6か月分と仮定 |
240万円 |
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合計 |
1,102万円 |
上の試算では借家権価格を含めていないため、加算すべき事情があれば金額はさらに増えます。
たとえば、貸主の提示が「家賃1年分の240万円」なら、試算との差はおよそ860万円です。
一方で、裁判になった場合は貸主側の正当事由の強さによって金額が増減するため、試算額がそのまま認められるとは限りません。
試算は交渉の根拠として使い、最終的な見通しは弁護士に確認してもらうと安心です。
店舗の立ち退き料を提示されたら確認すべき4つのこと
返事をする前に、契約の種類・立ち退きの理由・提示額の内訳・退去条件の4つを確認しましょう。
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契約書で普通借家か定期借家かを確認する
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立ち退きの理由と根拠資料を確認する
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提示額の内訳と算定根拠を確認する
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退去時期・原状回復・保証金の扱いを確認する
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1. 契約書で普通借家か定期借家かを確認する
最初に、自分の契約が普通借家契約か定期借家契約かを契約書で確かめます。
普通借家契約なら貸主には正当事由が必要で、立ち退き料が問題になります。
定期借家契約は、書面で契約し、契約書とは別の書面で「更新がない」と事前に説明を受けていることが要件です。
契約書の表題に「定期」とあっても、事前説明の書面がなければ普通借家として扱われる可能性があるため、契約時の書類を探しておきましょう。
2. 立ち退きの理由と根拠資料を確認する
貸主には、立ち退きを求める理由と裏付けとなる資料の提示を求めましょう。
老朽化が理由なら耐震診断書や修繕の見積もり、建て替えが理由なら建築計画やスケジュールが根拠資料になります。
「古いから」という説明だけで資料が出てこない場合は、貸主側の事情が弱いと評価できる材料になります。
やり取りは、後から確認できるようメールや書面で残しておくことが重要です。
3. 提示額の内訳と算定根拠を確認する
提示された立ち退き料は、総額だけでなく費目ごとの内訳と算定根拠を書面で示してもらいましょう。
引っ越し代程度の金額しか示されていない場合は、内装工事や営業補償が含まれていない可能性があります。
内訳がわかれば、前の章の計算例と並べて、どの費目が足りないのかを具体的に指摘できます。
4. 退去時期・原状回復・保証金の扱いを確認する
金額だけでなく、退去日・原状回復の範囲・保証金(敷金)の返還も確認が必要です。
退去までの家賃の扱い、保証金の償却分、立ち退き料の支払時期によって、手元に残る金額は大きく変わります。
たとえば、立ち退き料が増えても原状回復費用を借主負担とされれば、差し引きで損をすることもあります。
金額と条件はセットで比べるようにしましょう。
店舗の立ち退き料に納得できないときの交渉の進め方|4ステップ
提示額に納得できないときは、自分の損失を数字にし、こちらから請求額を書面で示すのが基本です。
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見積書と決算書で損失を数字にする
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請求額と内訳を書面で伝える
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金額以外の条件も合わせて交渉する
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合意内容を合意書にまとめる
貸主の提示に対して少しずつ上乗せを求めるだけでは、貸主の金額を基準に話が進みやすくなるためです。
ステップ1:見積書と決算書で損失を数字にする
まず、内装工事や引っ越しの見積書と、直近2〜3期の決算書・月次売上をそろえます。
あわせて、移転先候補の賃料や礼金を不動産会社で調べておくと、家賃差額や契約金を具体的に示せます。
休業期間の見込みは、内装業者に工事日数を確認して決めましょう。
ステップ2:請求額と内訳を書面で伝える
数字がそろったら、費目ごとの金額と合計を書面にまとめて貸主へ伝えます。
口頭だけで済ませると、後から「そんな話は聞いていない」と言われるおそれがあるためです。
送った事実と内容を証拠に残したい場合は、内容証明郵便を使う方法もあります。
ステップ3:金額以外の条件も合わせて交渉する
立ち退き料の総額で折り合わないときは、金額以外の条件を組み合わせると合意しやすくなります。
たとえば、退去時期の延長や家賃の免除、原状回復の免除、移転先の紹介などが交渉材料になります。
条件ごとに金額へ換算して総額で比べると、どの案が有利か判断しやすいです。
ステップ4:合意内容を合意書にまとめる
合意できたら、退去日・立ち退き料の金額と支払時期・原状回復・保証金・残置物の扱いを合意書に明記します。
立ち退き料は、明渡しと引き換えに支払う形や、一部を先に受け取り残りを明渡し時に受け取る形が一般的です。
署名する前に、合意書の内容を弁護士に確認してもらうと、記載漏れによるトラブルを避けやすくなります。
交渉がまとまらないときは調停・訴訟で店舗の立ち退き料が判断される
当事者同士で合意できない場合は、貸主が調停や明渡しを求める訴訟を起こし、裁判所が正当事由と立ち退き料を判断します。
民事調停は、裁判所の調停委員を交えて話し合いで解決を目指す手続きです。
訴訟では、正当事由が認められると、立ち退き料の支払いと引き換えに明渡しを命じる判決が出されることがあります。
訴訟は判決まで1年以上かかることも珍しくなく、その間も店舗の営業は続けられますが、家賃の支払いは続ける必要があります。
実際には、訴訟の途中で裁判所の勧めにより和解し、立ち退き料と退去時期を決めるケースが多いです。
店舗の立ち退きでやってはいけない3つの対応
立ち退きを求められたときは、内容を確認せずに署名する・家賃の支払いを止める・通知を放置するの3つを避けましょう。
1. 内容を確認せずに合意書へ署名する
金額や条件を確かめないまま合意書に署名すると、合意によって契約が終わったものとして扱われ、後から増額を求めるのが難しくなります。
「とりあえず署名だけ」と求められても、その場で応じる必要はありません。
2. 不満の意思表示として家賃の支払いを止める
立ち退き料に納得できないからといって家賃を払わずにいると、家賃の滞納を理由に契約を解除され、立ち退き料を受け取れなくなるおそれがあります。
支払おうとしても貸主が家賃を受け取らない場合は、法務局に家賃を供託(法務局に預けて支払いに代えること)すれば、支払ったのと同じ扱いになります。
3. 更新拒絶や解約の通知を放置する
期間の定めがある契約では、貸主が期間満了の1年前から6か月前までに更新しない旨を通知し、正当事由が認められれば、期間満了で契約が終わる場合があります。
期間満了後も店舗を使い続け、貸主がすぐに異議を述べなかったときは、契約は更新されたものとみなされる仕組みです。
通知を放置すると、交渉の時間が足りないまま調停や訴訟に進むことになりかねません。
通知が届いたら、早めに内容を確認し、返答の方針を決めておくことが重要です。
店舗の立ち退き料にかかる税金|所得税と消費税
個人の借主が受け取る立ち退き料は、中身によって譲渡所得・事業所得・一時所得に分かれ、消費税は原則としてかかりません。
所得税の扱いは、国税庁の通達で次のように整理されています。
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立ち退き料の中身 |
所得の区分 |
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借家権が消滅することの対価 |
譲渡所得 |
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休業による収入の減少や、休業中の給与など必要経費を補う部分 |
事業所得など(その業務の所得) |
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上記以外(移転費用の補償など) |
一時所得 |
消費税については、借主が契約の解除に伴って受け取る立ち退き料は、資産の譲渡などの対価にあたらないというのが国税庁の取扱いです。
ただし、借主の地位を貸主以外の第三者に譲って受け取るお金は、借家権を譲渡した対価として消費税の対象になります。
法人の場合、受け取った立ち退き料は原則として益金(法人の収益)です。
合意書に内訳を書いておくと所得区分を判断しやすくなるため、申告の前に税理士へ確認しておくと安心です。
店舗の立ち退き料を弁護士に相談するメリットと費用の目安
弁護士に相談すると、立ち退き料の算定から書面での交渉、訴訟になった場合の対応まで任せられます。
主なメリットは次の3つです。
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裁判例を踏まえて、営業補償や借家権価格を含めた請求額の根拠を整理できる
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代理人として貸主と交渉してもらえるため、営業を続けながら対応できる
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訴訟になった場合の見通しを踏まえて、提示額で合意すべきか判断できる
一方で、弁護士費用がかかる点はデメリットです。
増額が見込める金額と費用を比べ、依頼するかどうかを判断しましょう。
費用の目安は次のとおりです(旧日弁連〔日本弁護士連合会〕の報酬基準をもとにした一般的な目安で、事務所によって異なります)。
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費用項目 |
目安 |
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相談料 |
30分5,000円程度(初回無料の事務所もある) |
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着手金 |
経済的利益が300万円超3,000万円以下の場合、5%+9万円 |
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報酬金 |
経済的利益が300万円超3,000万円以下の場合、10%+18万円 |
たとえば、交渉で立ち退き料が500万円増えた場合、増額分を経済的利益とすると報酬金の目安は68万円です。
認定司法書士が代理できるのは簡易裁判所で扱う訴額140万円以下の民事事件に限られるため、高額になりやすい店舗の立ち退き料では弁護士への相談が現実的です。
【関連記事】立ち退き交渉の進め方は?6つのステップや立ち退き料の相場を解説
店舗の立ち退き料に関する悩みは「ベンナビ法律相談Q&A」で解決しよう
店舗の立ち退きは、貸主との話し合いだけでは感情的な対立に発展しやすく、正当事由の強さや営業補償の算定によって、受け取れる金額が大きく変わるテーマです。
早い段階で弁護士に相談することで、請求額の根拠づくりから交渉、訴訟になった場合の対応まで、具体的な選択肢が見えてきます。
とはいえ、「弁護士に相談すべきレベルの話なのか」判断がつかず、相談をためらう方もいます。
ベンナビ法律相談Q&Aでは、質問を投稿すると、立ち退き問題を得意とする弁護士から無料で回答をもらえるのが特長です。
まずは自分の状況に近いQ&Aを探し、提示額についてどう考えればよいかを確認してみましょう。
店舗の立ち退き料の相場に関するよくある質問
さいごに、店舗の立ち退き料についてよく寄せられる質問を紹介します。
店舗の立ち退き料が100万円なのは妥当?
店舗で100万円は、移転の実費にも届かないことが多い金額です。
内装工事だけで数百万円かかるケースも多いため、「店舗の立ち退き料の計算例」の手順で自分の店の損失を見積もり、提示額と比べてみてください。
老朽化を理由にした店舗の立ち退きは断れる?
老朽化だけでは正当事由として不十分とされることが多く、すぐに退去に応じる必要はありません。
ただし、倒壊の危険が客観的な資料で示されている場合は、相応の立ち退き料と引き換えに明渡しが認められる可能性があります。
再開発や道路拡張で立ち退く場合も同じ計算になる?
道路拡張などの公共事業では、事業者が国の損失補償基準にもとづいて移転料や営業補償を算定するのが原則です。
民間の建て替えや再開発で貸主から退去を求められる場合は、借地借家法の正当事由と立ち退き料の考え方が当てはまります。
立ち退き料はいつ支払われる?
明渡しと引き換えに全額を受け取るか、合意時に一部を受け取り、残りを明渡し時に受け取るのが一般的です。
支払時期は合意書に明記しておきましょう。
貸主が変わったら立ち退き料の交渉はどうなる?
建物の引渡しを受けて営業している借主は、新しい貸主に対しても賃借権を主張でき、契約はそのまま引き継がれます。
新しい貸主が立ち退きを求める場合も正当事由が必要で、立ち退き料の考え方は変わりません。
店舗兼住宅の場合の立ち退き料は?
店舗部分の移転費用や営業補償に加えて、住居部分の引っ越し費用や新居の契約金も考慮されます。
住まいと仕事の両方を移すことになるため、店舗だけを借りている場合より損失が大きいと評価されやすいです。
まとめ
店舗の立ち退き料に決まった相場はなく、移転費用・営業補償・借家権価格を積み上げた額が目安になります。
貸主の提示額は上限ではないため、契約の種類と立ち退きの理由を確かめ、自分の店の数字で試算してから返事をすることが大切です。
提示額に納得できない場合は、こちらから内訳つきの請求額を書面で示し、金額以外の条件も含めて交渉しましょう。
一人で判断せず、早めに専門家へ相談することが、納得できる条件で移転する近道です。
