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Twitter上のなりすまし犯を特定する方法|開示請求等の対応方法を解説

弁護士監修記事
ITトラブル
2023年04月27日
2024年04月22日
Twitter上のなりすまし犯を特定する方法|開示請求等の対応方法を解説
この記事を監修した弁護士
曾波 重之弁護士 (阪神総合法律事務所)
各種掲示板への書き込みや口コミの削除のほか、逮捕・犯罪歴の削除などに注力。プライバシーに配慮しながら迅速対応を行います。
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Twitterのなりすましは芸能人だけでなく一般のユーザーでも被害にあう恐れがある悪質な行為で、場合によっては犯罪として訴えることも可能です。

なりすまし被害にあった・なりすましをされているかもしれない方向けに、なりすましアカウントの特定方法やアカウント削除・情報開示請求手続きの方法などについて解説していきます。

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Twitterなりすまし犯特定のための情報開示請求の流れ

Twitterのなりすましアカウントを運営している人物を特定するための法的手段として、「発信者情報開示請求」(以下、開示請求)という手続きがあります。

開示請求とは、サイト運営者やプロバイダに対して情報の開示を求める手続きのことです。

Twitterを含むあらゆるインターネットで誹謗中傷等を行った人物の情報(住所や氏名など)を、プロバイダに対して情報の開示を求めることができます。

これから、開示請求に必要な手続きについて紹介していきます。

なりすましの証拠を集める

開示請求を通すには、プロバイダ責任制限法第5条が規定する条件に合致している必要があります。規定されている条件は下記のとおりです。

(発信者情報の開示請求) 第五条 
特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対し、当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報のうち、特定発信者情報(発信者情報であって専ら侵害関連通信に係るものとして総務省令で定めるものをいう。以下この項及び第十五条第二項において同じ。)以外の発信者情報については第一号及び第二号のいずれにも該当するとき、特定発信者情報については次の各号のいずれにも該当するときは、それぞれその開示を請求することができる。
一 当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
三 次のイからハまでのいずれかに該当するとき。
イ 当該特定電気通信役務提供者が当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報を保有していないと認めるとき。
ロ 当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報が次に掲げる発信者情報以外の発信者情報であって総務省令で定めるもののみであると認めるとき。
(1) 当該開示の請求に係る侵害情報の発信者の氏名及び住所
(2) 当該権利の侵害に係る他の開示関係役務提供者を特定するために用いることができる発信者情報
ハ 当該開示の請求をする者がこの項の規定により開示を受けた発信者情報(特定発信者情報を除く。)によっては当該開示の請求に係る侵害情報の発信者を特定することができないと認めるとき。
2 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときは、当該特定電気通信に係る侵害関連通信の用に供される電気通信設備を用いて電気通信役務を提供した者(当該特定電気通信に係る前項に規定する特定電気通信役務提供者である者を除く。以下この項において「関連電気通信役務提供者」という。)に対し、当該関連電気通信役務提供者が保有する当該侵害関連通信に係る発信者情報の開示を請求することができる。
一 当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
引用元:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律|e-Gov

かなり多くのことが記載されており、わかりにくいですが、Twitterのなりすましでは下記のようなケースがあったことを証明できれば、開示請求を通すことができます。

  • Twitter上で許しがたい侮辱があったとき
  • Twitter上で虚偽の噂話等により名誉毀損されたとき
  • Twitter上で個人情報(住所や電話番号など)等重要な情報を許可なく公開されたとき

これらの証拠を集めるために、投稿内容のスクリーンショット(URLが確認できるもの)を保存しておきましょう。

ポイントは、投稿日時・投稿内容がしっかり判別できるようにしておくこと・関連ツイート・リツートも抑えておくことです。

2023年2月以降、Twitter Blue(Twitterの有料サブスクリプション)のユーザーは最大4,000文字まで投稿が可能となり、1画面だと収まらないような場合も出てくる可能性があります。

この場合は複数回に分けてスクリーンショットをしておくか、パソコンでTwitterを開き、フルスクリーンショット機能を使うなどの方法も検討しておきましょう。

発信者情報開示命令事件に関する裁判手続

改正前のTwitterのなりすまし犯を特定するための手続きは、まずTwitter社からIPアドレスの取得を行い、その後プロバイダからIPアドレスの利用者であるなりすまし犯の情報(氏名や住所など)を取得するという流れでした。

しかし、2022年10月1日から改正プロバイダ責任制限法が施行されたため、現在はTwitter社とプロバイダへの同時請求が可能になっています。

以下で詳しく解説していきます。

Twitter社とプロバイダに対する発信者情報開示命令

改正プロバイダ責任制限法第15条において、「発信者情報開示命令」ではサイト管理者とプロバイダへ同時に開示請求を行うことが可能になりました。

以下で、Twitter社とプロバイダへの開示請求の流れを簡単に解説していきます。

Twitter社へプロバイダのログ提供命令

改正後の「提供命令」は、Twitter社に対して、プロバイダに投稿や各種データの提出を求めるよう命令を出すことができます。

おおまかな流れは下記のとおりです。

  • 東京地方裁判所にTwitter社への「発信者情報開示命令」の申し立て
  • 裁判官との面談(1~2回)
  • Twitter社から発信者が利用するプロバイダの社名と住所が開示
  • プロバイダに対して「発信者情報開示命令」の申し立て
  • プロバイダから発信者の情報が開示

開示請求の手続きについては、開示請求をする相手の所在地を管轄する地方裁判所で申し立てを行います。

Twitter社はアメリカの企業ですが、2022年以降は日本で法人登記を完了したので、東京地方裁判所にて手続きを行うことになります。

  • 発信者情報開示命令の必要書類

開示請求に必要な書類は下記のとおりです。

a) 申立書の写し 相手方の数と同数(規則3 条)
b) 申立てを理由づける具体的な事実ごとの証拠(非訟事件手続規則(以下「非訟規」という。)37 条3 項)(写し不要)
c) 当該申立てに係る会社の登記事項証明書(非訟規14 条、12 条、民事訴訟規則15 条前段)
d) 手続代理人の委任状(非訟規16 条1 項)
引用元:発信者情報開示命令申立て|裁判所

申立書は裁判所から入手できます。「c) 当該申立てに係る会社の登記事項証明書」とは、Twitter社及びプロバイダの登記事項証明です。

プロバイダは法務局から取り寄せることができます。

  • 「発信者情報開示命令の申立て」の記載方法

a) 事件の表示(非訟規1 条1 項3 号)   
事件名は「発信者情報開示命令申立事件」となる。
b) 申立年月日(非訟規1 条1 項5 号)
c) 裁判所の表示(非訟規1 条1 項6 号)
d) 申立人又は代理人(法定代理人及び手続代理人を含む。)の記名押印(非訟規1 条1 項柱書)
e) 当事者及び利害関係参加人の氏名又は名称及び住所(非訟法43 条2 項1 号、非訟規1 条1 項1 号)
f) 代理人の氏名及び住所(非訟法43 条2 項1 号、非訟規1 条1 項1 号)
g) 当事者、利害関係参加人又は代理人の郵便番号及び電話番号(ファクシミリ番号を含む。)(非訟規1 条1 項2 号)
h) 申立ての趣旨及び原因(非訟法43 条2 項2 号、非訟規37 条1 項)
i) 申立てを理由づける事実(非訟規37 条1 項)
j) 附属書類の表示(非訟規1 条1 項4 号)
k) (提供命令により氏名等情報の提供を受けたAPに対する申立ての場合)先行する発信者情報開示命令事件の有無及びその事件情報(規則2条)
引用元:発信者情報開示命令申立て|裁判所

裁判所で書類を入手したら、係員にわからない点があれば質問することもできます。

また、弁護士に依頼すれば代理で書類作成の手伝いもしてくれるので、必要に応じて検討してみましょう。

Twitter社とプロバイダへの発信者情報の消去禁止命令

「消去禁止命令の申立て」は、プロバイダやTwitter社に対して、投稿や各種データの削除を禁止するように求める手続きです。

Twitterは投稿内容の削除が可能ですので、開示請求中にもなりすまし被害が継続しているような場合、証拠隠滅のための投稿削除やアカウント削除といった逃亡の可能性もあります。

もしこれらの可能性をつんでおきたい場合、裁判所で「消去禁止命令の申立て」を行いましょう。

「提供命令/消去禁止命令の申立て」は、前述の「発信者情報開示命令の申立て」と同時に行うこともできます。

この申し立てが通れば、誹謗中傷・著作権侵害といったあらゆる証拠となる投稿内容のログが保存されるので、証拠隠滅の可能性をかなり抑えることが可能です。

Twitterなりすましアカウントを削除させる方法

Twitterにはなりすまし専用の報告窓口が存在し、Twitter社での審査のうえアカウントの凍結等の処置を求めることが可能です。

Twitterの公式窓口や相談方法・相談の流れなど、なりすまし報告と削除依頼の方法を解説します。

証拠収集

証拠収集は開示請求で使用したものと同様のデータがあれば十分です。開示請求と並行して進める場合は、相手の情報を取得してしっかり準備が整ってから削除要請をしましょう。

なお、開示請求においては証拠となる投稿やアカウントの削除を禁止し、提供を義務付けるよう申し立てる手続きも存在します。

なりすましアカウントの削除は開示請求や訴訟・示談が一通り済んでからでも対応できるので、証拠データはしっかり保存しておきましょう。

DMで削除要請

なりすましアカウントがDMを開放している場合、DMで削除要請を行いましょう。

ポイントとしては下記の点をしっかりと伝える事です。

  • 権利侵害をしていること
  • 法的措置も検討していること
  • 期日を決めること

権利侵害をしている証拠となるデータも同時に送付しておくとより効果的です。 ただし、あくまでもDMによる削除要請は相手方の任意によるもので、法的な拘束力はこの段階では発生しません。

Twitterへなりすまし報告

削除要望の期日までに動きがみられない場合、Twitterのなりすまし専門窓口に連絡をします。

プルダウンメニューで「あるアカウントが私又はほかの誰かに成りすましています」と「なりすましにあっています」を選択します。

続いて出てくる項目に下記の情報を記入しましょう。

  • 自身のメールアドレス
  • なりすましアカウントのユーザー名
  • 具体的ななりすまし被害

最後に身分証明ができる写真付きのコピー画像をアップロードします。免許証やパスポートをスキャナで取り込んでおきましょう。

弁護士や警察へ相談

Twitterへの報告を行ってもなかなか動きが出てこない場合、警察や弁護士に相談を検討しましょう。

特に、例えばあなたの作品のコピーをなりすまして販売していた、あなたになりすまして友達にフィッシングサイトのURLを送信していたなどの悪質な被害がある場合、早急な対応が必要です。

なお、このような悪質な犯罪行為がある場合、アカウントの削除要望よりも先に開示請求手続きを進めましょう。

DMをした段階で証拠隠滅をして逃亡される危険性があります。 親しい友人などには自分のなりすましが出たことを正式に報告し、開示請求による法的措置をすすめましょう。

Twitterの削除依頼についてはTwitterの書き込みやアカウントを削除依頼するには?削除依頼の方法を解説もご覧ください。

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Twitter上のなりすましはどんな犯罪になる?

Twitterを含むSNSでのなりすましは、その投稿内容などによって犯罪となり逮捕される可能性もあります。

ここではTwitterのなりすましによって認定される可能性のある罪状について解説していきます。

名誉毀損

名誉棄損は公の場でその人の周囲の評判を下げようとした場合に適用される可能性があります。

Twitterはインターネット上で不特定多数のユーザーがおり、公の場と判断されます。

名誉棄損は「事実の摘示」によって名誉を傷つける場合に適用されますが、仮に嘘だった場合でも名誉棄損となります。

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
引用元:名誉毀損罪 刑法230条|e-Gov

名誉毀損罪の「事実」については名誉毀損罪の「事実」って何?具体例を確認しながら意味を理解しようもご覧ください。

侮辱罪

名誉棄損と混同されがちなのが侮辱罪です。侮辱罪は名誉棄損と同様に公の場で人を侮辱した場合に適用されます。

ここでいう「侮辱」とは、いわゆる品性を欠くような誹謗中傷のことです。 名誉棄損との違いは名誉を傷つける「言葉の内容」です。

名誉棄損は「事実を摘示」ですので、誹謗中傷とは異なります。 例えば、「元詐欺師」といった言葉はその経歴が真実であれ虚偽であれ名誉棄損となります。

対して、「デブ」や「バカ」などの誹謗中傷は侮辱罪です。

事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
引用元:侮辱 刑法231条|e-Gov

誹謗中傷の相談はネットの誹謗中傷に悩むあなたへ|無料相談できる窓口と弁護士に依頼するメリットをご覧ください。

プライバシー権の侵害

プライバシー侵害における「プライバシー」とは、「個人の私生活のこと」「公開されたくないこと」「未公開のこと」の3つの要件を満たす事実を指します。

例えば、住所や結婚離婚歴・年収などの情報をなりすましアカウントが(虚偽であっても)流出させた場合はプライバシー侵害に該当する可能性があります。

プライバシー侵害に関しては、刑法上の規定は特にありません。

しかし、憲法により「個人として尊重される」ことを保障されており、これらの事実を自身の意思に反して(つまり尊重されず)公表されてしまうことは、権利侵害となるのです。

あくまで民事事件となりますので、警察への相談は難しい点に注意しましょう。

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
引用元:日本国憲法13条|e-Gov

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:不法行為による損害賠償 民法709条|e-Gov

住所を晒された場合はネットに住所を晒された場合の対処方法|削除依頼や特定の流れを解説をご覧ください。

肖像権の侵害

肖像権とはプライバシー権のうちの一つで、特に容姿や顔を公の場で使用することに関しての権利です。

名誉棄損・侮辱罪のような明確な法文は存在しませんが、憲法13条を根拠として認められています。

肖像権侵害が成立するには、写真や動画に映りこんでしまっており、さらにそれが許可なく公の場で公開されてしまった場合に成立します。あくまでも民事なので警察への相談は難しいです。

写真や動画の削除要請や損害賠償請求が可能ですので、弁護士に相談しましょう。

顔写真等を晒された場合ネットに顔を晒されたときの対処法|顔写真を削除する3つの方法もご覧ください。

パブリシティ権の侵害

パブリシティ権とは、「経済的価値ある人物」の利用のための権利です。「経済的価値ある人物」とは、その人物の名前や顔写真などによって「顧客を引き寄せる」ことができる人物を指します。

いわゆる芸能人や有名人・スター選手などがあげられるでしょう。 パブリシティ権の侵害が成立するには、「経済的価値ある人物」を「無断で」「商売のために」利用した場合に該当します。

肖像権と同じく民事であり、法律上明文化されているわけではありませんが、「経済的価値ある人物」の利用のための権利を独占する権利というのが判例で認められているのです。 

1 人の氏名,肖像等を無断で使用する行為は,(1)氏名,肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,(2)商品等の差別化を図る目的で氏名,肖像等を商品等に付し,(3)氏名,肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら氏名,肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,当該顧客吸引力を排他的に利用する権利(いわゆるパブリシティ権)を侵害するものとして,不法行為法上違法となる。
引用元:損害賠償請求事件 知的財産高等裁判所 平成20(ネ)10063|裁判所

アイデンティティ権の侵害

アイデンティティ権とは簡単に言うと「なりすまされない権利」のことです。

こちらも明確な法文は存在しませんが、過去の判例によりその概念が確立され、現在では当然の権利として運用されています。

肖像権などと同様、民事事件のため警察への相談はできません。

また、下記判例にもある通りなりすましと認められるには相応の証拠が必要となる点も注意しましょう。

第三者が原告になりすましてインターネット上の掲示板に投稿したことにより,原告のアイデンティティ権,プライバシー権,肖像権又は名誉が侵害されたとして,いわゆるプロバイダ責任制限法4条1項の発信者情報の開示請求がされたが,同項1号に該当すると認めることができないとして,請求が棄却された事案
引用元:発信者情報開示請求事件 大阪地方裁判所 平成27年(ワ)第10086号|裁判所

偽計業務妨害罪・威力業務妨害

偽計業務妨害とは刑法233条に定められており、摘発されれば逮捕の対象となる犯罪行為です。

嘘の情報を流したり重要な事実を伏せたままにしたりすることで、適切な判断をできなくさせ、業務を妨害した場合に該当します。

対して威力業務妨害は、威力によって業務を妨害した場合に該当します。例えば、Twitterのなりすましアカウントが脅迫などにより他人のビジネスを妨害した場合は威力業務妨害になります。

公式アカウントになりすまされ、ありもしない事実により評判を貶められ業務が妨害されてしまった場合は偽計業務妨害です。

(信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法233条|e-Gov

(威力業務妨害) 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
引用元:刑法234条|e-Gov

詐欺罪

詐欺罪は刑法で規定され、こちらも逮捕の対象となります。とくに判断力が未熟とされる未成年への詐欺行為は厳しく取り締まられています。

Twitterのなりすましにおいては、友人・知人へ詐欺的な内容のメッセージや、フィッシングサイトに誘導するようなメッセージが送られてしまう可能性があるため、注意が必要です。

なりすましに気がついたら、友人知人へなりすましアカウントの存在を周知徹底し、被害を抑えましょう。詐欺は例え未遂であっても「やろうとした」時点で未遂罪が成立する重大な犯罪行為です。

(詐欺) 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
引用元:刑法246条|e-Gov

(準詐欺) 未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。
引用元:刑法248条|e-Gov

Twitterのなりすまし犯に請求できる損害賠償や慰謝料の相場

Twitterのなりすましは、その犯罪行為や権利侵害行為が立証できれば、損害賠償や慰謝料の請求が可能です。「損害賠償や慰謝料の相場」は、なりすまし犯が行った行為によって様々です。

例えば名誉棄損であれば10万〜50万円程度・個人事業主や法人であれば50万〜100万円程度が損害賠償の相場といわれています。

また、プライバシー権の侵害であれば、慰謝料は50万円〜100万円程度と言われています。 侮辱罪の場合は刑事事件として立件されます。

ただし頻度が極端に少なかったり、内容が個人の感想にとどまるような場合は金額が少なくなるか、そもそも慰謝料を請求できない可能性があります。

侮辱的な書き込みはすべてリストアップして証拠として押さえておきましょう。 プライバシー権の侵害は民事事件となるため、民事裁判によってその金額が決定します。

公開された情報やその情報により被害者がどの程度の損害を被ったかによって金額が変わります。

Twitterなりすまし犯の特定に関するよくある質問

Twitterなりすまし被害でよくある疑問についてお答えしていきます。

ペンネーム・芸名でも訴えられる?

Twitterの登録名がペンネームや芸名の場合でも訴えることが可能です。ただし、そのためにはそのペンネームや芸名での一定の活動実績が認められる必要があります。

活動実績は実社会上に限らず、インターネット上のみでの活動であっても認められます。

例えば作家や芸能人のように、その名称がある種の商号・商品として認められるようなケースであれば、偽計業務妨害罪・威力業務妨害・パブリシティ権の侵害など様々な罪状で訴えることが可能です。

駆け出しの作家のようなケースでも、今後その名義での活動が難しくなるような投稿があれば訴えられる可能性があるので、あきらめず弁護士に相談してみましょう。

友人知人を被害から守る方法は?

Twitterのなりすましは、なりすまされた本人だけでなく、その親しい友人知人やフォロワーにも悪影響を及ぼす可能性があります。

中には詐欺・フィッシングサイトへの誘導など、悪質なモノもありますので、なりすましの疑いが出た場合はすぐ対応をしましょう。

具体的な対応としては、フォロワーや周りの友人になりすましの事実を伝えるということです。

アカウントのツイートを引用リツイートしてなりすましであると伝えるのでもよいですし、別のSNSのDMで個別に連絡を取るといった方法でも構いません。

より悪質ななりすまし犯の場合、なりすましに勘づかれた段階で全ての投稿・アカウントを削除し逃亡を図ることも考えられます。

厳正な処罰を求める場合、慎重に対応しましょう。

特定は必ずできる?

裁判所で行う開示請求手続きは一定の拘束力をもちますが、それでも確実になりすまし犯を特定できるとは限りません。

開示請求で得られる情報の保存期間が定められており、一定期間を過ぎると削除されてしまうためです。

保存期間はプロバイダによりますが、一般的には3ヵ月から半年程度が目安とされています。

プロバイダの情報が削除されてしまうと、IPアドレスに紐づくなりすまし犯の氏名や住所といった情報が得られなくなるので、特定ができなくなってしまうのです。

なりすましが発覚したら早急に開示請求手続きを進めましょう。

Twitterでのなりすまし被害の事例集

Twitterでなりすまし被害にあってしまった事例集を紹介します。

名誉棄損で損害賠償が認められた事例

2名の被告が、高校時代の同級生である被害者男性の写真と性的な内容や薬物依存症を示唆する内容と共に投稿する行為を複数回にわたり行った事例です。

一部の投稿は96万人のフォロワーを持つアカウントへの返信をするなど、社会的評価を低下させる内容・行為であると判断され、損害賠償命令の判決がでました。

SNSで児童買春・ポルノ禁止法違反として逮捕された事例

1人二役を演じることで児童買春・ポルノ禁止法違反と判決された事例です。

まず若い男性を演じて少女に近づき、わいせつな画像を入手。その後少女になりすましてわいせつな画像を販売していました。

電話番号が開示された事例

Twitter社に対して、アカウントに登録されている電話番号の開示命令が出た事例です。

対象のアカウントは被害者男性が通っていた学校名や名前・写真などを利用しながら、ユーザー名を俗悪な印象を与えるようなものにしていました。

男性をおとしめるために開設され、投稿も肖像権を侵害するなど違法なものと判断され、損害賠償請求を起こすために電話番号の開示が決定されました。

まとめ|適切な処罰を求めるなら弁護士に相談

なりすまし被害にあった場合は、まず証拠を収集し犯人の逃げ切りを阻止しましょう。Twitter社は海外の企業のため開示請求に少し手間がかかります。

適切な処罰を求めるなら、SNS問題に注力している弁護士を頼るのがおすすめです。

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本記事はベンナビを運営する株式会社アシロが企画・編集をおこないました。
  • ※ベンナビに掲載されているコラムは、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。
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