囲繞地通行権のトラブル事例と対処法!通路を塞がれたときの手順も解説
長年通ってきた隣地の通路に、ある日突然フェンスを立てられ、どう対応すればよいか困っていませんか。
公道に出られない土地(袋地)の所有者には、民法で「囲繞地通行権(いにょうちつうこうけん)」が認められています。
周りの土地の所有者は、原則として通行を拒否できません。
ただし、通れる範囲や車の通行、通行料には法律上の線引きがあり、当事者同士の思い込みがトラブルを大きくしがちです。
本記事では袋地の所有者の立場を中心に、囲繞地通行権でよくあるトラブル、通路の幅・車・通行料の線引き、通路を塞がれたときの5つの手順を解説します。
読み終えるころには、自分のケースで何を主張でき、何から手をつけるべきかを判断できるようになります。
囲繞地通行権とは|袋地の所有者が公道に出るための法律上の権利

囲繞地通行権とは、公道に通じない土地の所有者が、公道に出るために周りの土地を通行できる権利です。
民法210条にもとづく権利で、囲繞地(袋地を囲んでいる土地)の所有者の同意や契約がなくても、条件を満たせば当然に成立します。
通行に関するルールは、民法の「相隣関係」の規定にまとめられています。
| 条文 | 定めている内容 |
|---|---|
| 民法210条 | 公道に通じない土地の所有者は、周りの土地を通行できる |
| 民法211条 | 通行の場所・方法は必要で、かつ周りの土地の損害が最も少ないものを選ぶ。必要なら通路を開設できる |
| 民法212条 | 通行する土地の損害に対して償金(通行料)を支払う |
| 民法213条 | 土地の分割・一部譲渡で生じた袋地は、分割した相手方の土地だけを無償で通行できる |
| 民法213条の2 | 水道・ガスなどを引くために、他の土地に設備を設置できる |
相隣関係の規定は2023年4月1日施行の改正民法で見直され、ライフライン設備の設置権(213条の2)が新設されました。
囲繞地通行権が認められる土地|袋地と準袋地
囲繞地通行権が認められるのは、公道に通じない「袋地」と、公道に出るのが著しく難しい「準袋地」です。
準袋地とは、池・川・水路・海を通らなければ公道に出られない土地や、崖があって公道との高低差が大きい土地を指します(民法210条2項)。
民法210条の「公道」は、国や自治体が管理する道だけを指す言葉ではありません。
誰でも自由に通れる道であれば私道でも「公道」にあたるため、自由に通れる私道に出られる土地は、囲繞地通行権の対象外です。
反対に、公道にわずかに接していても、接している幅では土地の利用に見合う通行ができない場合は、袋地として扱われる可能性があります。
なお、建築基準法上の道路として指定された私道(位置指定道路など)は、囲繞地通行権とは別の考え方で守られる場合もある点に注意してください。
最高裁は、位置指定道路で日常生活に不可欠な通行を妨げられた人に、妨害の排除を求める権利を認めました(最判平成9年12月18日)。
通行地役権との違い|合意で決めるか法律で決まるか
通行地役権とは、土地の所有者同士の合意によって設定する通行の権利です。
囲繞地通行権が法律で当然に生じるのに対し、通行地役権は契約で通路の位置や幅、車の可否、通行料を自由に決められます。
| 項目 | 囲繞地通行権 | 通行地役権 |
|---|---|---|
| 成立 | 袋地であれば法律上当然に成立 | 当事者の合意(契約)で成立 |
| 対象の土地 | 公道に通じない袋地のみ | 制限なし |
| 通行の範囲 | 必要で、損害が最も少ない範囲 | 合意で自由に決める |
| 通行料 | 原則有償(例外あり) | 合意で決める(無償も可) |
| 登記 | できない | できる(第三者に主張するには原則として登記が必要) |
書面がなくても、長年の通行の経緯から黙示の合意(はっきり言葉にしていない合意)が認められる場合があります。
一定の条件を満たせば、時効によって通行地役権を取得できることもあります(民法283条)。
通行のトラブルでは、まず通行地役権の有無、次に囲繞地通行権の有無を確認するのが基本の順番です。
囲繞地通行権をめぐるよくあるトラブル6つ
囲繞地通行権のトラブルは、「通路の封鎖」「幅・場所」「車の通行」「通行料」「所有者の交代」「ライフライン」の6つに大きく分けられます。
| トラブル | 起きやすい場面 |
|---|---|
| 通路を塞がれる | 関係が悪化したとき、代替わりしたとき |
| 通路の幅・場所で対立する | 建て替え・増築を計画したとき |
| 車で通れるかで揉める | 車を購入したとき、駐車場を作るとき |
| 通行料で折り合わない | 突然請求されたとき、金額を改定されたとき |
| 所有者が変わり通行を拒まれる | 囲繞地が相続・売却されたとき |
| 水道管・ガス管の工事を断られる | 新築・建て替えで引き込みが必要なとき |
複数の類型が重なっているケースも珍しくない点に注意してください。
自分のトラブルがどれにあたるかを整理すると、争点になる条文や判例が見えてきます。
1. 通路を塞がれる・通行を拒否される
もっとも多いのが、囲繞地の所有者が通路にフェンスや車、植木鉢などを置いて通行を妨げるトラブルです。
長年黙認されていた通路が、隣人との関係悪化や相続による代替わりをきっかけに、突然塞がれるケースが典型です。
しかし、囲繞地通行権が成立している限り、囲繞地の所有者は通行そのものを拒否できません。
通行を妨げられた袋地の所有者は、障害物の撤去を求める妨害排除請求や、損害が生じた場合の損害賠償請求をおこなえます。
たとえば、通路を塞がれて車庫から車を出せず、毎日タクシーを使うことになった場合、タクシー代が損害として問題になり得ることも知っておいてください。
ただし、袋地にあたるかどうかや、どこまでが通行できる範囲かは個別の事情で変わります。
まずは相手の主張と自分の土地の状況を、落ち着いて確認しておきましょう。
2. 通路の幅や場所で対立する
囲繞地通行権の通路の幅や場所は、通行する側に必要で、かつ囲繞地の損害が最も少ないものに限られます(民法211条1項)。
そのため、袋地の所有者は広くて使いやすい通路を、囲繞地の所有者は土地の端の狭い通路を求め、対立が起きやすくなります。
幅は一律に何mと決まっているわけではなく、徒歩だけなら人が安全に行き来できる程度で足りると判断されることが多いです。
特に問題になりやすいのが、建て替えの場面です。
建築基準法43条は、建物の敷地が幅4m以上の道路に2m以上接することを求めており、袋地のままでは原則として建て替えができません。
ところが、裁判では、接道義務を満たす目的だけで囲繞地通行権による2m幅の通路を求めることは、認められにくい傾向があります。
建て替えのために幅を確保したい場合は、囲繞地の所有者と通行地役権の設定や土地の買い取りを話し合うのが現実的です。
3. 車で通れるかどうかで揉める
車の通行は、囲繞地通行権で当然に認められるものではなく、個別の事情で判断されます。
徒歩での通行は認めるものの、車は危ないから困るという囲繞地の所有者と、生活に車が欠かせない袋地の所有者との間で、争いになりやすい論点です。
最高裁は、車の通行を認める必要性や周辺の土地の状況、囲繞地の所有者が受ける不利益などを総合的に考えて判断すべきだとしました(最判平成18年3月16日)。
同じ事件では、差戻し後の東京高等裁判所(平成19年9月13日判決)で車の通行が認められています。
たとえば、高齢の家族の通院に車が不可欠である、周辺の住宅も車で出入りしているといった事情は、車の通行を認める方向に働く事情です。
反対に、通路が囲繞地の庭先を通る、通学路で子どもの通行が多いといった事情は、車の通行を否定する方向に働きます。
また、通路での駐車や転回まで求めるのは、損害が最も少ない範囲を超えるとして、認められにくい傾向です。
車の必要性を示す資料(通院記録や周辺の状況の写真など)をそろえておくと、交渉でも裁判でも説明しやすくなります。
4. 通行料(償金)を請求される・金額で折り合わない
囲繞地通行権で通行する袋地の所有者は、原則として通行する土地の損害に対する償金(通行料)を支払う必要があります(民法212条)。
通路を開設したことで生じた損害は一時金で、通行による損害は1年ごとに支払うこともできます。
一方で、土地の分割や一部の譲渡によって袋地が生じた場合は、分割した相手方の土地だけを通行でき、償金は不要です(民法213条)。
袋地を生み出した当事者に、通行の負担を引き受けさせる趣旨です。
トラブルになりやすいのは、長年無償で通っていたのに突然通行料を請求されたり、相場とかけ離れた金額を示されたりするケースです。
通行料には法律で決まった相場がありません。
近隣の地代や通路部分の固定資産税、通路の面積などを手がかりに妥当な金額を話し合い、まとまらなければ調停や訴訟で裁判所に判断してもらうことになります。
5. 相続や売買で所有者が変わり、通行を認めないと言われる
囲繞地の所有者が変わったことをきっかけに、「通路を使わせる約束は聞いていない」と通行を拒まれるトラブルも目立ちます。
しかし、囲繞地通行権は登記をしなくても主張でき、囲繞地の所有者が変わっても消えません。
最高裁は、袋地の所有者は所有権の登記がなくても囲繞地の所有者に通行権を主張できると判断しています(最判昭和47年4月14日)。
さらに、土地の分割で生じた袋地の無償の通行権(民法213条)も、通行される土地が第三者に売られた後まで存続するとしました(最判平成2年11月20日)。
一方で、袋地ではない土地のために口約束で通路を借りていた場合、通行の権利は通行地役権や使用貸借(無償で借りる契約)にとどまります。
通行地役権は、登記がなければ新しい所有者に主張できないのが原則です。
ただし、通路として使われていることが外から見て明らかで、買主もそれを認識できた場合は例外です。
最高裁は、通路の存在を買主が認識できた場合には登記がなくても通行地役権を主張できると判断しました(最判平成10年2月13日)。
自分の通行が法律上の権利にもとづくのか、合意で上乗せした条件なのかを分けて確認することが、交渉の出発点になります。
6. 水道管・ガス管を通す工事を断られる
袋地で新築や建て替えをする際、水道管やガス管を隣地に通す工事を断られるトラブルもあります。
2023年4月1日施行の改正民法で、ライフラインの設備を設置する権利が明文化されました(民法213条の2)。
他の土地に設備を置かなければ電気・ガス・水道を受けられない土地の所有者は、必要な範囲で他の土地に設備を設置できます。
設置する場所と方法は、他の土地の損害が最も少ないものを選び、あらかじめ目的・場所・方法を土地の所有者などに通知する必要があります。
設置によって生じた損害には償金を支払いますが、分割・一部譲渡で生じた土地の場合は、他の分割者の土地にだけ設置でき、償金は不要です(民法213条の3)。
通知をしても相手が工事に協力しない場合は、工事への妨害をやめるよう求める訴訟などの法的手続きで解決を図ることになります。
囲繞地通行権のトラブルが起きたときの対処法

囲繞地通行権のトラブルは、記録→袋地かどうかの確認→話し合い→内容証明→調停・仮処分・訴訟の順に進めるのが基本です。
救急車が入れないなど生活に差し迫った支障があるときは、早めに弁護士へ相談し、仮処分の検討を並行して進めましょう。
ステップ1:通行妨害の状況を写真・メモで記録する
最初にすべきことは、通行を妨げられている状況を、日付がわかる形で記録することです。
記録しておきたい内容は、次のとおりです。
- 障害物の種類・位置・設置された日時(写真・動画)
- 囲繞地の所有者とのやり取りの日時と内容(メモ・メール・手紙)
- 通行できないことで生じた支障(タクシー代、配達や工事の中止など)
あわせて、長年その通路を使ってきたことを示す資料も集めておきましょう。
古い写真や航空写真、近隣住民の証言などは、通行地役権の黙示の合意や時効取得を主張する際の手がかりにもなります。
記録は、後の話し合い・内容証明・調停・訴訟のどの段階でも土台になります。
ステップ2:公図・登記・測量図で袋地にあたるかを確認する
次に、自分の土地が法律上の袋地にあたるかを、客観的な資料で確認します。
法務局では、公図、登記事項証明書(登記簿謄本)、地積測量図を取得できます。
手数料は書類の種類によって異なりますが、1通数百円程度が目安です。
公図で公道との接し方を確認し、登記事項証明書で土地が分筆(1つの土地を分けること)された経緯をたどります。
分筆によって袋地が生じていれば、民法213条により分割の相手方の土地を無償で通行できる可能性があります。
境界がはっきりしない場合は、土地家屋調査士に測量を依頼して現況を確認しておきましょう。
ステップ3:通行の条件を話し合い、合意書にまとめる
資料がそろったら、囲繞地の所有者と通行の条件を話し合い、合意できた内容を書面に残します。
話し合いで決めておきたい項目は、次のとおりです。
- 通路の位置と幅(図面で特定する)
- 車の通行の可否、通行できる時間帯
- 通行料の金額と支払い方法、改定のルール
- 通路の舗装や修繕の費用負担
合意書には、通路の位置を示した図面を添付しましょう。
さらに、通行地役権として設定し登記しておけば、囲繞地の所有者が変わっても合意した条件を主張できます。
登記の手続きは、司法書士に依頼するのが一般的です。
感情的な対立がある場合は、当事者同士で直接話すより、弁護士などの第三者を間に入れたほうがまとまりやすくなる場合があります。
ステップ4:内容証明郵便で妨害の中止を求める
話し合いに応じてもらえない場合は、内容証明郵便で障害物の撤去と通行妨害の中止を求めます。
内容証明郵便とは、いつ誰が誰にどのような内容の文書を送ったかを、日本郵便が証明するサービスです。
文書に記載する主な内容は、次のとおりです。
- 自分の土地が袋地であり、囲繞地通行権があること
- 通行が妨げられている事実と日時
- 障害物の撤去を求める期限
- 期限までに対応がない場合は法的手続きを検討すること
内容証明郵便そのものに強制力はありませんが、正式な意思表示の証拠になります。
弁護士の名前で送ると、相手が事態を重く受け止め、話し合いに応じるきっかけになることもあります。
ステップ5:民事調停・仮処分・訴訟で解決を図る
それでも解決しない場合は、民事調停・仮処分・訴訟という裁判所の手続きを、目的に応じて使い分けます。
民事調停は、簡易裁判所で調停委員を交えて話し合う手続きで、近隣関係を壊さずに解決したい場合に向いている手続きです。
通路が塞がれて生活に重大な支障が出ているときは、通行妨害禁止の仮処分を申し立てる方法があります。
仮処分は、著しい損害や急迫の危険を避けるために必要なときに、判決を待たずに暫定的な措置を命じてもらう手続きです(民事保全法23条2項)。
最終的な解決には、通行権確認や妨害排除、損害賠償を求める訴訟を起こします。
訴訟では、現地の検証や測量がおこなわれることもあり、解決までに1年以上かかることも珍しくありません。
どの手続きを選ぶかは緊急性や証拠の状況で変わるため、早めに弁護士へ相談することが重要です。
囲繞地通行権のトラブルでやってはいけない3つの対応
囲繞地通行権のトラブルでは、自力での撤去・通行料の一方的な不払い・相手の言い値での合意が、かえって自分の立場を悪くします。
- 障害物を自分で撤去する
- 通行料を一方的に払わない
- 相手の言い値で通路の変更や高額な通行料に応じる
それぞれの対応が招く不利益を見ていきます。
1. 障害物を自分で撤去する
通路を塞がれても、相手が置いた障害物を自分で壊したり処分したりしてはいけません。
日本の法律では、権利がある人でも裁判所の手続きによらずに実力で権利を実現する「自力救済」は、原則として認められていない点に注意してください。
相手のフェンスを壊したり車を勝手に動かしたりすれば、損害賠償を請求されるおそれがあります。
さらに、他人の物を壊すと刑法261条の器物損壊罪にあたる可能性もあるため危険です。
自力で撤去すると、本来は通行を妨げられた被害者の立場だったのに、加害者として扱われてしまいます。
障害物の撤去は、内容証明郵便での請求や仮処分など、法的な手続きで求めるようにしましょう。
2. 通行料を一方的に払わない
通行料の金額に納得できなくても、何も払わずに通行を続けるのは避けるべきです。
囲繞地通行権で通行する袋地の所有者は、民法212条により償金を支払う義務を負う立場です。
不払いが続けば、囲繞地の所有者から未払い分を請求されたり、訴訟を起こされたりする原因になります。
交渉の場でも、義務を果たしていない側の主張は受け入れられにくくなります。
金額に争いがあるときは、自分が相当と考える金額を示し、提示した事実を書面で残しておきましょう。
なお、土地の分割・一部譲渡で生じた袋地であれば、そもそも償金は不要です(民法213条)。
払う義務があるかどうかを、登記の経緯から先に確認しておくことが大切です。
3. 相手の言い値で通路の変更や高額な通行料に応じる
トラブルを早く終わらせたい一心で、相手の求める条件にそのまま応じてしまうのも危険です。
たとえば、通路を土地の端に移して幅を狭める、相場とかけ離れた通行料を毎年払うといった条件です。
いったん合意書に署名すると、合意した条件は契約として拘束力を持つことになります。
後から「法律上はもっと広い通路を求められた」と気づいても、合意をくつがえすのは簡単ではありません。
囲繞地通行権の通路の幅や通行料には、法律で決まる線引きがある点を忘れないようにしましょう。
署名する前に、提示された条件が法律上の線引きと比べて妥当かを弁護士に確認してもらうと安心です。
囲繞地通行権のトラブルを未然に防ぐ対策
囲繞地通行権のトラブルを防ぐには、通行の条件を書面にし、可能であれば通行地役権を設定・登記しておくことが効果的です。
具体的な対策は、次の4つです。
- 通行地役権を設定し、登記する
- 通路の位置・幅・通行料を合意書と図面に残す
- 購入・相続の前に、接道と通路の権利関係を確認する
- 通路部分の買い取りや土地の等価交換を検討する
通行地役権を登記しておけば、囲繞地の所有者が代わっても、合意した条件をそのまま主張できます。
土地を購入する際は、重要事項説明で接道の状況や私道の負担を確認し、通路に関する取り決めの書面があるかを売主に確かめておきましょう。
相続の場面では、親世代の口約束が引き継がれず、子世代でトラブルになることがよくあります。
通行の経緯を書面にして、次の世代に引き継いでおきましょう。
根本的な解決を目指すなら、通路部分を買い取って公道に接する土地にしたり、袋地と囲繞地の一部を等価交換したりする方法もあります。
囲繞地の所有者は通行を拒否できる?所有者側が知っておきたいポイント
囲繞地の所有者は、囲繞地通行権が成立している限り、袋地の所有者の通行を拒否できません。
囲繞地通行権は、土地を有効に使えるようにするために法律が認めた権利であり、囲繞地の所有者の同意を必要としないためです。
ただし、囲繞地の所有者にも主張できることがあります。
- 通行の場所・方法は、自分の土地の損害が最も少ないものにするよう求める
- 通行によって生じる損害に対して償金を請求する(分割・一部譲渡で生じた袋地を除く)
- 車の通行や通路の拡張は、必要性がなければ応じなくてよい
また、相手の土地が別の道から公道に出られる場合は、そもそも袋地ではないため、囲繞地通行権は成立しません。
通行を認めるか迷うときは、相手の土地が本当に袋地にあたるか、求められている範囲が必要最小限かを確認することが先決です。
囲繞地通行権のトラブルに関する悩みは「ベンナビ法律相談Q&A」で解決しよう
囲繞地通行権のトラブルは隣人同士の感情的な対立に発展しやすく、袋地にあたるかどうかや通行地役権の有無で結論が大きく変わります。
早い段階で弁護士に相談することで、通行権が認められる見込みや、話し合い・仮処分・訴訟のどれを選ぶべきかまで、具体的な選択肢が見えてきます。
とはいえ、「弁護士に相談すべきレベルの話なのか」判断がつかない、という悩みもよく寄せられる声です。
ベンナビ法律相談Q&Aでは、質問を投稿すると、不動産トラブルなどの分野を得意とする弁護士が無料で回答してくれるため、解決に向けた具体的な対処方法がわかります。
まずは無料相談を活用し、自分の状況で何ができるのかを確認してみましょう。
囲繞地通行権のトラブルに関するよくある質問
さいごに、囲繞地通行権のトラブルについてよく寄せられる質問を紹介します。
通行地役権ではどんなトラブルが起きる?
通行地役権のトラブルで多いのは、登記をしていなかったために土地の新しい所有者に通行を断られるケースです。
ほかにも、合意した範囲を超えて車で通る、通行料の改定で折り合わないといった争いがあります。
設定時に内容を書面にし、登記しておくことが予防になります。
通路の舗装や修繕の費用は誰が負担する?
囲繞地通行権で袋地の所有者が通路を開設する場合、舗装などの費用は原則として袋地の所有者が負担します。
通路の開設で囲繞地に生じた損害は、一時金の償金として支払います(民法212条)。
修繕の分担は法律に細かい定めがないため、合意書で決めておきましょう。
囲繞地通行権は登記できる?
囲繞地通行権そのものは登記できません。
登記がなくても主張できる権利ですが、通路の幅や通行料などの条件を確実に残したい場合は、通行地役権を設定して登記する方法があります。
囲繞地通行権は時効で消える?
囲繞地通行権は、袋地である状態が続く限り、時効で消えることはないと解されています。
一方で、袋地が公道に接する土地を取得するなどして袋地でなくなった場合は、囲繞地通行権も消滅します。
囲繞地通行権のトラブルは誰に相談すればいい?
通行を妨げられているなど法的な争いになっている場合は、弁護士への相談が適しています。
境界や土地の現況を確認したいときは土地家屋調査士、通行地役権の登記は司法書士が窓口です。
費用が心配な場合は、法テラスや自治体の無料法律相談も利用できます。
まとめ
囲繞地通行権は、公道に出られない袋地の所有者に法律が認めた権利で、囲繞地の所有者は原則として通行を拒否できません。
ただし、通路の幅は必要最小限に限られ、車の通行や通行料は個別の事情で決まります。
通路を塞がれたときは、障害物を自分で撤去せず、記録→確認→話し合い→内容証明→調停・仮処分・訴訟の順に進めることが重要です。
自分の土地が袋地にあたるか、どこまで主張できるかの判断に迷ったら、早めに弁護士へ相談してください。
一人で抱え込まず、専門家の意見を聞くことが、隣人との対立を長引かせない近道です。
