立ち退きの強制執行はどう進む?拒否したときの流れ・費用・止める方法を解説
大家さんから立ち退きを求められ、「拒否し続けたら強制執行されるのか」と不安になっていませんか。
立ち退きを拒否しても、判決などの裁判手続きを経ていなければ、強制的に追い出されることはありません。
一方で、明渡しを命じる判決が出たあとは、拒否するだけでは強制執行を止められない仕組みです。
本記事では借主側の立場を中心に、強制執行に必要な条件、通知から断行までの流れと期間、当日の荷物の扱いや費用、強制執行を止める・避ける方法まで解説します。
読み終えるころには、自分がいまどの段階にいて、何をすべきかを判断できるようになります。
- 【結論】立ち退きを拒否しても、判決などがなければ強制執行はされない
- 立ち退きの強制執行とは|執行官が借主の占有を解いて貸主に引き渡す手続き
- 立ち退きの強制執行までの流れ|通知から断行まで6ステップ
- 立ち退きの強制執行当日に起こること
- 立ち退きの強制執行にかかる費用は最終的に借主の負担になる
- 立ち退きの強制執行を止める・避けるための方法
- 立ち退きの強制執行でやってはいけない4つの対応
- 立ち退きの強制執行後の住まいと生活で使える公的支援
- 貸主が立ち退きの強制執行を進めるときの注意点
- 立ち退きの強制執行で弁護士に相談した方がよいケース
- 立ち退きの強制執行に関する悩みは「ベンナビ法律相談Q&A」で解決しよう
- 立ち退きの強制執行に関するよくある質問
- まとめ
【結論】立ち退きを拒否しても、判決などがなければ強制執行はされない
立ち退きの強制執行は、判決や和解調書などの「債務名義」がなければ行えません。
貸主が「出て行ってほしい」と通知しただけでは、執行官が来て部屋を明け渡させる手続きは始まらない仕組みです。
貸主が自分の判断で鍵を交換したり、荷物を運び出したりする行為は「自力救済」と呼ばれ、原則として違法になります。
勝手に鍵を替えられた、荷物を捨てられたといった場合は、損害賠償を請求できる場合もあるため、写真などの証拠を残しておきましょう。
ただし、裁判で明渡しを命じる判決が確定すると、状況は大きく変わります。
判決確定後は、借主が「出て行かない」と言い続けても、裁判所の手続きによって退去させられます。
つまり、強制執行を避けられるかどうかは、どの段階で対応するかで大きく変わるのです。
立ち退きの強制執行とは|執行官が借主の占有を解いて貸主に引き渡す手続き
立ち退きの強制執行とは、裁判所の執行官が借主の占有を解き、貸主に建物の占有を移す手続きです。
民事執行法168条にもとづく手続きで、「建物明渡しの強制執行」とも呼ばれます。
強制執行が始まるには、次の3つがそろっている必要があります。
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必要なもの |
内容 |
借主の手元に届くもの |
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債務名義 |
明渡しを命じる確定判決や和解調書など |
判決書の正本や和解調書の正本 |
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執行文 |
債務名義で強制執行できることを裁判所書記官が証明する文言 |
貸主側が取得するため通常は届かない |
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送達証明 |
債務名義が借主に届いたことの証明 |
判決書などが届いた時点で要件が整う |
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
債務名義|確定判決・仮執行宣言付き判決・和解調書・調停調書
債務名義とは、強制執行によって実現できる権利があることを公に証明した文書です。
立ち退きの場面で使われる主な債務名義は、確定判決・仮執行宣言付きの判決・裁判上の和解調書・調停調書の4つになります。
仮執行宣言付きの判決は、控訴をしても確定を待たずに強制執行できるため要注意です。
判決の主文に「この判決は、仮に執行することができる」と書かれていれば、仮執行宣言が付いています。
一方、公証役場で作る公正証書(執行証書)が債務名義になるのは、金銭の支払いなどを目的とする請求に限られる点が要注意です。
そのため、公正証書に「期限までに明け渡す」と書いてあっても、それだけで明渡しの強制執行はできません。
執行文と送達証明|債務名義だけでは強制執行は始まらない
債務名義があっても、執行文の付与と、債務名義が借主に送達されたことの証明がなければ強制執行は始まりません。
執行文は、貸主の申立てにより、事件の記録がある裁判所の書記官が付けます。
送達とは、判決書などを裁判所が正式な方法で借主に届けることです。
判決書が届いたら、貸主側の準備はいつでも整い得る状態になったと考えておきましょう。
また、判決が「立ち退き料の支払いと引換えに明け渡せ」という内容であれば、貸主は立ち退き料を支払ったか、支払いを申し出たことを証明しなければ執行できません。
立ち退きの強制執行までの流れ|通知から断行まで6ステップ
立ち退きの強制執行は、通知→訴訟→判決・和解→申立て→催告→断行の6ステップで進みます。
各ステップの内容と期間の目安は以下のとおりです。
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ステップ |
内容 |
期間の目安 |
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1. 通知 |
更新拒絶・解約申入れ・契約解除の通知が届く |
貸主都合なら期間満了の1年〜6か月前 |
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2. 訴訟 |
貸主が明渡請求訴訟を起こす |
訴状の送達から第1回期日まで1か月程度 |
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3. 判決・和解 |
明渡しを命じる判決や和解で退去が決まる |
訴訟提起から数か月〜1年程度 |
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4. 申立て |
貸主が執行官に強制執行を申し立てる |
判決の送達後 |
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5. 催告 |
執行官が部屋を訪れ、引渡し期限を告げる |
申立てから原則2週間以内 |
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6. 断行 |
執行官が荷物を運び出し、明渡しを完了させる |
催告から1か月程度 |
期間は争点の多さや裁判所の混み具合によって変わるため、あくまで目安と考えてください。
ステップ1:立ち退きの通知や契約解除の通知が届く
立ち退きは、貸主からの更新拒絶・解約申入れ、または契約解除の通知から始まります。
普通借家契約(更新のある通常の賃貸借契約)で、貸主の都合により立ち退きを求めるケースから見ていきましょう。
期間の定めがある契約では、期間満了の1年前から6か月前までに更新しない旨を通知しなければなりません。
期間の定めがない契約では、解約を申し入れてから6か月が経過すると契約が終了する決まりです。
どちらの場合も、貸主側に「正当事由」がなければ立ち退きは認められません。
ただし、定期借家契約は期間満了で終了するため、正当事由がなくても契約の終了を主張される点に注意しましょう。
正当事由は、貸主・借主それぞれが建物を必要とする事情や、建物の老朽化の程度、立ち退き料の申出などを総合して判断されます。
家賃滞納や無断転貸などの契約違反が原因の場合は、支払いや是正を求める催告を経て、契約を解除されるのが一般的です。
いずれにしても、通知が届いただけで退去する義務が確定するわけではありません。
ステップ2:明渡請求訴訟を起こされる
話し合いで解決しないと、貸主は裁判所に建物明渡請求訴訟を起こします。
借主のもとには、裁判所から訴状と期日の呼出状が届きます。
訴状が届いたら、指定された期限までに答弁書を提出することが重要です。
最初の期日に限っては、答弁書を出しておけば、欠席しても答弁書の内容を述べたものとして扱われます。
反対に、答弁書を出さずに欠席すると、貸主の主張を認めたものとして扱われ、そのまま明渡しの判決が出やすくなります。
ステップ3:判決や和解で明渡しが決まる
訴訟は、明渡しを命じる判決か、退去日などを定めた和解で決着するケースが多くなっています。
判決に不服がある場合の控訴期限は、判決書を受け取った日から2週間です。
和解では、退去日のほか、立ち退き料や滞納家賃の扱いを当事者で取り決めます。
和解で決めた退去日を過ぎても退去しなければ、和解調書をもとに強制執行される点を押さえておきましょう。
ステップ4:貸主が強制執行を申し立てる
判決などが出ても借主が退去しない場合、貸主は物件の所在地を管轄する地方裁判所の執行官に強制執行を申し立てます。
申立てには、執行文の付いた債務名義の正本と送達証明書が必要です。
貸主は申立てと同時に、執行官の手数料などにあてる予納金を納めます。
申立て後は、貸主側と執行官が打ち合わせをして、催告の日程や作業の段取りを決めていきます。
催告は、原則として申立てから2週間以内の日に行われる決まりです。
ステップ5:執行官が明渡しの催告に来る
申立てを受けた執行官は、部屋を訪れて「明渡しの催告」を行い、引渡し期限を定めます。
引渡し期限は、原則として催告の日から1か月を経過する日です。
催告の際には、引渡し期限や占有の移転が禁止されていることを記した公示書が部屋に貼られます。
借主が不在でも、執行官は立会人を置いて部屋に入れるため、催告は予定どおり実施されるのが通常です。
催告から引渡し期限までの約1か月は、自分で退去して負担を抑える最後の機会といえます。
ステップ6:断行日に強制的に明け渡される
引渡し期限までに退去しなければ、執行官が定めた断行日に、強制的に明渡しが実行されます。/p>
断行日は、引渡し期限より前の日付で、催告の際などに執行官が指定するのが通例です。
断行には、貸主本人かその代理人が立ち会う必要があります。
断行が終わると鍵が交換され、借主はその部屋に住めなくなります。
立ち退きの強制執行当日に起こること
断行日には、荷物の搬出、鍵の解錠、抵抗があった場合の警察の援助の3つが起こり得ます。
1. 室内の荷物は運び出され、引き取らなければ売却・処分される
断行日には、執行官の指示で作業員が室内の荷物を運び出します。
運び出した荷物は、借主本人や同居の家族などに引き渡すのが原則です。
引き渡せない場合は、執行官が倉庫などで保管するか、その場で売却する扱いになります。
保管した荷物も、一定期間内に引き取りがなければ売却され、売れない物は廃棄されることがあります。
保管期間は数週間程度と短いことが多いため、荷物を取り戻したい場合は、すぐに執行官室へ連絡しましょう。
通帳や印鑑、重要書類、思い出の品は、断行日より前に自分で持ち出しておくと安心です。
2. 不在でも鍵を開けて執行される
借主が留守にしていても、強制執行は止まりません。
執行官には、閉じている戸を開けるために必要な処分をする権限が認められているためです。
住人に会えない場合は、市町村の職員や警察官などを立会人として、そのまま手続きを進めます。
「留守にしていれば執行されない」というのは誤解です。
3. 抵抗すると警察の援助を受けて執行される
執行官は、抵抗を受けた場合に威力を用いたり、警察の援助を求めたりできます。
部屋に立てこもる、作業員の前に立ちはだかるといった対応をしても、執行は止まらず、かえって作業が長引きます。
抵抗しても執行は止まらないため、断行日までに荷物をまとめておくのが現実的な対応です。
立ち退きの強制執行にかかる費用は最終的に借主の負担になる
強制執行の費用は、法律上は債務者である借主の負担になります。
手続きの段階では貸主が立て替えて支払い、あとから借主に請求する流れです。
主な費用の内訳と目安は以下のとおりです。
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費用項目 |
内容 |
目安 |
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予納金 |
執行官の手数料などにあてる前払い金 |
東京地裁では6万5,000円が標準で、債務者・物件が1つ増えるごとに2万5,000円加算 |
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執行補助者の費用 |
荷物の搬出・運搬を行う業者の作業費 |
間取りや荷物の量により数十万円程度 |
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解錠・鍵交換費用 |
鍵を開ける・取り替える費用 |
数万円程度 |
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保管費用 |
運び出した荷物を倉庫で保管する費用 |
保管期間や量に応じて数万円〜 |
ワンルームでも合計で数十万円になることが多く、一軒家や荷物の多い部屋では100万円を超える場合もあります。
滞納家賃や明渡しまでの損害金とあわせて請求されることもあるため、断行まで進む前に手を打つのが賢明です。
予納金の額は裁判所ごとに異なり、表は東京地方裁判所執行官室の標準額表(2020年3月版)にもとづく目安です。
立ち退きの強制執行を止める・避けるための方法
強制執行を避けるために取れる手段は、いまどの段階にいるかによって次の4つに分かれます。
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訴訟前|立ち退きの理由と条件を確認して交渉する
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訴訟中|答弁書を出し、和解で退去時期や立ち退き料を決める
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判決後|控訴と執行停止の申立てを検討する
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催告後|引渡し期限までに自分で退去する
早い段階で動くほど、選べる手段は多くなります。
1. 訴訟前|立ち退きの理由と条件を確認して交渉する
訴訟になる前であれば、立ち退きの理由と条件を確認し、貸主と交渉するのが基本です。
貸主都合の立ち退きなら、正当事由の根拠や、立ち退き料・引越し費用の負担について書面で説明を求められます。
たとえば、建物の老朽化を理由にする場合は、耐震診断の結果などの資料を示してもらうよう依頼してみましょう。
家賃滞納が原因の場合は、滞納分の分割払いを提案することで、契約解除を避けられるケースもあります。
【関連記事】立ち退き交渉の進め方は?6つのステップや立ち退き料の相場を解説
2. 訴訟中|答弁書を出し、和解で退去時期や立ち退き料を決める
訴訟が始まっても、和解によって退去時期や立ち退き料を調整する余地は残っています。
まずは答弁書を提出し、正当事由がないことや、滞納の事情などを主張しましょう。
裁判所から和解を勧められることも多く、退去日の猶予や立ち退き料の金額、滞納家賃の減額や分割払いなどを話し合えます。
和解であれば、強制執行の費用負担を避けやすく、退去日までに転居先を探す時間も確保しやすい点が大きな利点です。
3. 判決後|控訴と執行停止の申立てを検討する
判決に不服がある場合は、判決書を受け取ってから2週間以内に控訴できます。
仮執行宣言付きの判決であれば、控訴と同時に強制執行の停止を申し立てるのが基本です。
ただし、停止が認められるには判決が取り消される可能性などを示す必要があり、実務では担保金の納付を求められるのが通例です。
停止の決定が出ても、決定の正本を執行官に提出するまでは手続きが進むため、すぐに届け出ましょう。
判決確定後に家賃を全額支払った、貸主と退去の延期で合意したなどの新しい事情が生じた場合は、請求異議の訴えで強制執行の不許を求める方法も選択肢のひとつです。
いずれも要件が厳しく、期限も短いため、判決が出た時点で弁護士に相談することをおすすめします。
4. 催告後|引渡し期限までに自分で退去する
催告まで進んだ場合は、引渡し期限までに自分で退去することが最も負担の少ない選択肢になります。
自分で引っ越せば、荷物を業者に運び出される作業費や保管費用を抑えやすくなります。
退去する際は、貸主側に退去日を伝え、鍵を返却しておきましょう。
引渡し期限の延長は、執行官が裁判所の許可を得て行うもので、借主の希望だけで決まるものではありません。
立ち退きの強制執行でやってはいけない4つの対応
強制執行が迫ったときに避けるべき対応は、次の4つです。
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立ち退きに納得できないからと家賃の支払いを止める
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公示書をはがしたり汚したりする
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部屋を家族以外の第三者に使わせる
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執行官や作業員に暴力をふるう・脅す
いずれも、立場を不利にするか、刑事責任を問われる原因になります。
1. 立ち退きに納得できないからと家賃の支払いを止める
立ち退きを争っている間も、家賃は払い続けなければなりません。
家賃を止めると、滞納そのものが債務不履行となり、貸主に契約解除の理由を与えてしまいます。
貸主が家賃の受け取りを拒否する場合は、法務局に家賃を供託(法務局に預けて支払いに代える制度)すれば、支払ったのと同じ扱いになるので覚えておきましょう。
2. 公示書をはがしたり汚したりする
催告の際に執行官が貼った公示書は、はがしたり汚したりすると犯罪になります。
公示書等損壊罪として、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処される可能性があります。
3. 部屋を家族以外の第三者に使わせる
催告のあとに部屋の占有を他人に移しても、強制執行は止められません。
催告後、借主は占有を移すことを禁じられており、移した場合も新しい占有者に対してそのまま執行できるためです。
訴訟の前に、貸主が占有移転禁止の仮処分(判決までの間、占有者を変えることを禁じる裁判所の命令)を申し立てている場合も同様です。
4. 執行官や作業員に暴力をふるう・脅す
断行の現場で暴力や脅しに及ぶと、刑事事件に発展するおそれがあります。
執行官の職務を暴行や脅迫で妨害すれば、公務執行妨害罪に問われる可能性があります。
納得できない点があっても、現場で争うのではなく、事前に弁護士を通じて法的な手続きで主張しましょう。
立ち退きの強制執行後の住まいと生活で使える公的支援
住まいを失うおそれがあるときは、自治体の自立相談支援窓口で、住居確保給付金などの支援を相談できます。
住居確保給付金は、離職や収入の減少によって住まいを失った、または失うおそれがある人に、家賃相当額を一定期間支給する制度です。
2025年4月からは、家賃の低い住宅へ転居するための初期費用を補助する仕組みも加わりました。
支給には収入や資産などの要件があり、窓口は市区町村や福祉事務所に設けられています。
転居先がすぐに見つからない場合や、生活費が足りない場合は、同じ窓口で生活保護を含めた支援の相談も可能です。
弁護士費用を用意できない場合は、法テラスの民事法律扶助で、無料の法律相談や費用の立替えを利用できることがあります。
断行日が近づいてからでは選択肢が限られるため、催告の段階で相談しておくと安心です。
貸主が立ち退きの強制執行を進めるときの注意点
貸主の立場でも、判決などの債務名義を得ないまま借主を追い出すことはできません。
鍵の交換や荷物の撤去を無断で行えば、不法行為として損害賠償を請求されるおそれがあるためです。
訴訟中に借主が第三者に部屋を貸すおそれがある場合は、訴訟前に占有移転禁止の仮処分を申し立てておくと、判決を確実に執行しやすくなります。
立ち退き料と引換えに明渡しを命じる判決であれば、執行の前に立ち退き料を支払うか、支払いを申し出ておくことが条件です。
また、執行費用は法律上は借主の負担でも、借主に資力がなければ回収できず、貸主の持ち出しになることが少なくありません。
費用と時間の負担を考え、和解による任意の退去も選択肢に入れて進めることが大切です。
立ち退きの強制執行で弁護士に相談した方がよいケース
以下のような状況にある場合は、立ち退きの問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
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裁判所から訴状や期日の呼出状が届いた
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明渡しを命じる判決や、仮執行宣言付きの判決が出た
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執行官による明渡しの催告を受け、公示書が貼られた
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貸主の示す正当事由や立ち退き料に納得できない
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控訴や執行停止の申立てを検討している
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貸主に無断で鍵を交換された、荷物を処分された
弁護士に相談すれば、手元の書類から現在の段階を整理し、取れる手段と期限を具体的に確かめられるのが利点です。
貸主との交渉や和解の協議、控訴や執行停止の申立ても任せられます。
訴額が140万円以下で簡易裁判所が扱う事件であれば、認定司法書士に訴訟の代理を依頼する方法もあります。
立ち退きの強制執行に関する悩みは「ベンナビ法律相談Q&A」で解決しよう
立ち退きの強制執行は、判決や催告などの手続きが進むほど取れる手段が限られ、対応の遅れがそのまま費用や住まいの問題につながります。
早い段階で弁護士に相談することで、交渉や和解、執行停止の可能性まで、具体的な選択肢が見えてきます。
とはいえ、「これって弁護士に相談すべきレベルの話なのか」判断がつかない、という方も多いはずです。
ベンナビ法律相談Q&Aでは、質問を投稿すると、立ち退きなどの分野を得意とする弁護士が無料で回答してくれるため、解決に向けた具体的な対処方法がわかります。
まずは無料相談を活用し、自分の状況で何ができるのかを確認してみましょう。
立ち退きの強制執行に関するよくある質問
さいごに、立ち退きの強制執行についてよく寄せられる質問を紹介します。
強制執行になっても立ち退き料はもらえる?
判決で立ち退き料の支払いと引換えに明渡しが命じられていれば、貸主が立ち退き料を支払うか、支払いを申し出ないかぎり強制執行は始まりません。
一方、家賃滞納など借主側の契約違反で解除された場合は、立ち退き料が認められないのが一般的です。
立ち退き料を求めたい場合は、判決前の交渉や和解の段階で主張しておきましょう。
強制執行と断行の違いは?
強制執行は、申立てから催告、明渡しの完了までを含む手続き全体を指す言葉です。
断行は、そのうち執行官が実際に荷物を運び出し、部屋の明渡しを完了させる最後の段階を指します。
催告の時点ではまだ住み続けられますが、断行が終わると部屋に入れなくなります。
立ち退きの強制執行は誰が行う?
強制執行は、地方裁判所に所属する執行官が行います。
実際の荷物の搬出は、執行官の指示を受けた執行補助者(運搬業者など)の担当です。
貸主本人やその代理人の弁護士も、断行の現場に立ち会います。
強制執行で退去させられたら次の家は借りられる?
強制執行を受けたこと自体で、次の部屋が借りられなくなるわけではありません。
ただし、家賃滞納が原因の場合は、保証会社の審査に通りにくくなることがあります。
住まいの確保が難しいときは、自治体の自立相談支援窓口に相談してみてください。
道路拡張や再開発の立ち退きも強制執行される?
道路拡張などの公共事業による立ち退きは、民事の強制執行ではなく、土地収用法などにもとづく別の手続きで進みます。
収用委員会の裁決で補償額や明渡しの期限が決まり、期限までに明け渡さない場合は行政代執行の対象です。
補償の内容に納得できない場合は、事業者との協議の段階から弁護士に相談しておくと、補償額の妥当性を確かめやすくなります。
競売物件の立ち退きも強制執行で行われる?
競売で落札された物件に住み続けている場合、買受人は裁判所に引渡命令を申し立てられます。
確定した引渡命令を債務名義として、通常の明渡しと同じく執行官による強制執行が行われます。
まとめ
立ち退きの強制執行は、判決や和解調書などの債務名義がなければ行えず、貸主が勝手に追い出すことは違法です。
ただし、明渡しの判決が確定し、執行官の催告を受けたあとは、拒否するだけでは強制執行を止められません。
訴訟前なら交渉、訴訟中なら和解、判決後なら控訴や執行停止と、段階に応じて取れる手段が異なる点を押さえておきましょう。
強制執行まで進むと、数十万円以上の費用を負担するおそれもあります。
一人で抱え込まず、書類が届いた段階で弁護士に相談することが、負担を軽くする近道です。
