保存行為とは?共有不動産で1人でできることと管理・変更行為との違いを解説
相続した実家の雨漏りを直したいのに、ほかの兄弟と連絡がつかず、勝手に修理してよいのか迷っていませんか。
共有不動産の現状を保つための「保存行為」であれば、ほかの共有者の同意がなくても1人でおこなえます。
一方で、リフォームや賃貸、売却などは、持分(共有者それぞれの所有権の割合)の過半数や共有者全員の同意が必要です。
本記事では、保存行為の意味と管理行為・変更行為との違い、具体例や費用の負担、ほかの共有者に勝手に動かれたときの対処法を解説します。
読み終えるころには、自分がしたい行為に誰の同意が必要かを判断できるようになります。
保存行為とは|管理行為・変更行為・処分行為との違い
保存行為とは、共有物の現状を維持するための行為のことです。
民法252条5項は「各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる」と定めており、各共有者が単独でおこなえる行為です。
共有不動産に対する行為は、保存行為のほかに管理行為・変更行為・処分行為があり、必要な同意がそれぞれ異なります。
| 区分 | 必要な同意 | 根拠 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 保存行為 | 各共有者が単独でできる | 民法252条5項 | 雨漏りの修理、不法占拠者への明渡し請求 |
| 管理行為・軽微な変更 | 持分の価格の過半数 | 民法252条1項 | 短期の賃貸、外壁の塗り直し |
| 変更行為 | 共有者全員 | 民法251条1項 | 建替え、増改築 |
| 処分行為 | 共有者全員 | 明文なし・解釈による | 不動産全体の売却、抵当権の設定 |
つまり、同意のハードルは「保存<管理<変更・処分」の順に高くなります。
保存行為|各共有者が1人でできる
保存行為は、ほかの共有者にとっても利益になるため、1人でおこなうことが認められています。
屋根の雨漏りを放置すると建物全体が傷み、共有者全員の財産の価値が下がってしまいます。
保存行為の規定は、2023年4月1日施行の改正民法で、旧252条ただし書から252条5項に移りました。
また、1人で実施した場合も、費用はほかの共有者と分担できます。
費用は持分に応じて分担するのが原則で、立て替えた分はほかの共有者に請求できます。
管理行為|持分の価格の過半数で決める
管理行為とは、共有物の性質を変えない範囲で利用したり改良したりする行為で、持分の価格の過半数で決めます。
過半数は人数ではなく、持分の割合で数えます。
たとえば持分が2分の1ずつの2人の場合、1人の賛成では過半数にならず、もう1人の同意も必要です。
代表例は、短期間の賃貸、管理会社への管理の委託、外壁の塗り直しなどの軽微な変更です。
賃貸の期間は、建物なら3年、土地なら5年(植林・伐採目的の山林は10年)を超えない範囲に限られます。
上記の期間を超える賃貸は、共有者全員の同意が必要です。
また、更新が前提の普通借家契約で建物を貸すと、期間が過ぎても契約を終わらせにくくなります。
過半数の決定で貸す場合は、期間が満了すれば終わる定期借家契約を使うのが安全です。
変更行為|共有者全員の同意が必要
変更行為とは、共有物の形や効用を大きく変える行為で、共有者全員の同意が必要です(民法251条1項)。
建物の建替え、増改築、大がかりな間取りの変更、農地の宅地造成などが該当します。
形や効用が大きく変わらない「軽微な変更」は変更行為から除かれ、管理行為として過半数で決められます。
判断に迷う工事は、着手前に全員の同意を書面で取っておくと安心です。
所在がわからない共有者がいて全員の同意を集められない場合は、裁判所の決定を得て変更を進める方法もあります。
処分行為|不動産全体の売却には全員の同意が必要
不動産全体を売却したり、抵当権を設定したりする処分行為には、共有者全員の同意が必要です。
民法に処分行為を直接定めた条文はありませんが、変更行為よりも影響が大きい行為として、全員の同意が要ると解されています。
一方で、自分の持分だけであれば、ほかの共有者の同意なく単独で売却することが可能です。
ただし、持分だけを第三者に売ると、買った人とほかの共有者との共有関係が残ります。
その結果、買主から共有物分割を求められるなど、親族間の新たなトラブルにつながるおそれがある点に気をつけましょう。
【関連記事】不動産売却トラブルの原因と対処法を解説|共有名義・契約・金銭のケースまで紹介
保存行為の4つの具体例

共有不動産の保存行為の代表例は、次の表の4つです。
| 具体例 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 建物の修繕 | 雨漏りや破損部分を元の状態に戻す | グレードアップを伴う工事は対象外 |
| 不法占拠者への明渡し請求 | 権限のない第三者に退去を求める | 損害賠償は自分の持分の範囲まで |
| 不実の登記の抹消請求 | 権利のない人への登記を消す | 共有者1人で請求できる |
| 法定相続分での相続登記 | 相続人全員の名義で登記する | 自分だけの名義にはできない |
4つに共通するのは、放置すると共有物の価値や権利が損なわれるという点です。
1. 建物の修繕
雨漏りの修理や割れた窓ガラスの交換など、損傷した部分を元の状態に戻す修繕は保存行為です。
配管の水漏れの修理や、空き家の戸締まり、台風で飛ばされた屋根材の応急処置なども含まれます。
反対に、修理のついでに設備を新しいものに交換したり、屋根全体を高性能な素材に葺き替えたりする工事は、価値を高める行為です。
価値を高める工事は管理行為(軽微な変更)や変更行為にあたる可能性があり、1人では決められません。
そのため、着手前に見積書と現場の写真をほかの共有者に共有しておくと、あとから費用を請求するときの話し合いがスムーズになります。
2. 不法占拠者への明渡し請求
権限のない第三者が共有不動産を占拠している場合、各共有者は単独で不動産全体の明渡しを請求できます。
古い判例(大審院大正10年7月18日判決)で、共有者の1人による明渡し請求は保存行為として認められました。
たとえば、亡くなった親の空き家に、知らない人が無断で住み着いている場面が該当します。
まずは内容証明郵便で退去を求め、応じなければ明渡し訴訟を起こすのが基本の流れです。
占拠によって生じた損害(家賃相当額など)の賠償は、自分の持分の範囲でしか請求できません(最高裁昭和51年9月7日判決)。
3. 不実の登記の抹消請求
権利のない人に勝手に持分移転登記がされた場合、各共有者は単独で、不実の登記(事実と異なる登記)の抹消を請求できます。
最高裁平成15年7月11日判決は、共有者の1人が持分権にもとづいて、不実の持分移転登記の抹消を単独で求められると判断しました。
共有者の1人が書類を偽造し、知人に持分の名義を移していたケースが典型です。
登記の状態は、法務局で登記事項証明書を取得すれば確認できます。
不審な名義変更に気づいたら、名義を移された人が第三者に転売する前に、早めに弁護士へ相談しましょう。
4. 法定相続分での相続登記
遺産分割の前でも、相続人の1人が法定相続分どおりの相続登記を、相続人全員のために申請できます。
たとえば、兄弟3人が相続した実家を、3分の1ずつの共有名義にする登記です。
相続登記は2024年4月1日から義務になり、相続の開始と不動産の取得を知った日から3年以内に申請しなければなりません。
2024年4月1日より前に起きた相続も対象で、施行前の相続は原則として2027年3月31日までに申請する必要があります。
正当な理由なく申請を怠った場合は、10万円以下の過料の対象です。
法定相続分での相続登記や、相続人であることを申し出る「相続人申告登記」をしておけば、相続登記の義務を果たしたものとみなされます。
ただし、自分1人だけの名義にする登記は、保存行為としてはできません。
単独名義にするには、遺産分割協議で取得者を決めることが前提です。
相続登記の申請は自分でもできますが、書類の収集や作成に不安があれば司法書士に依頼する方法もあります。
保存行為にあたるかは「現状維持を超えるか」で判断する
保存行為にあたるかどうかの判断軸は、元の状態を保つだけか、価値を高めたり形を変えたりするかです。
工事の目的や規模、費用、建物の形や用途が変わるかどうかを総合して判断されます。
| 行為 | 区分の目安 | 必要な同意 |
|---|---|---|
| 雨漏りの部分的な修理 | 保存行為 | 単独でできる |
| 外壁の塗り直し・屋上の防水工事 | 軽微な変更 | 持分の過半数 |
| 設備のグレードアップ・内装の全面リフォーム | 管理行為または変更行為 | 過半数または全員 |
| 増築・建替え・用途の変更 | 変更行為 | 共有者全員 |
| 短期間の賃貸 | 管理行為 | 持分の過半数 |
| 不動産全体の売却 | 処分行為 | 共有者全員 |
たとえば外壁の塗装でも、ひび割れから雨水が入るのを止める部分的な補修なら保存行為になりえます。
建物全体を塗り直す工事は、一般に管理行為(軽微な変更)として過半数で決める工事です。
迷うときは、保存行為だと自己判断せず、ほかの共有者の同意を取ってから進めましょう。
2023年4月1日施行の改正民法で変わった共有物のルール3つ
2023年4月1日施行の改正民法で、軽微な変更を過半数で決められるようになり、連絡がつかない共有者がいても手続きを進めやすくなりました。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 軽微な変更 | 変更行為として全員の同意が必要とされていた | 持分の過半数で決められる |
| 連絡がつかない共有者 | 全員の同意が集まらず手続きが止まりやすかった | 裁判所の決定で残りの共有者が決められる |
| 共有物の管理者 | 明確な規定がなかった | 持分の過半数で選任できる |
改正前の情報をもとに判断すると、本来は過半数で進められる工事を諦めてしまうこともあります。
1. 軽微な変更を持分の過半数で決められるようになった
改正により、形や効用を大きく変えない変更は、持分の価格の過半数で決められるようになりました。
改正前は、少しでも形を変える工事は変更行為として、共有者全員の同意が必要とされていました。
法務省は、軽微な変更の例として、砂利道のアスファルト舗装や、建物の外壁・屋上防水などの大規模修繕工事を挙げています。
軽微かどうかは工事の形や効用の変化で判断され、費用の大きさだけでは決まりません。
区分に迷う工事は、着手する前に弁護士へ確認しておきましょう。
2. 連絡がつかない共有者がいても裁判所の決定で進められるようになった
所在がわからない共有者や、問い合わせても賛否を答えない共有者がいる場合、裁判所の決定を得て、残りの共有者だけで決められます。
所在がわからない共有者については、管理行為と変更行為のどちらも対象です(民法251条2項・252条2項1号)。
賛否を答えない共有者については、期間を決めて賛否を答えるよう書面で求めたうえで、管理行為についてだけ決定を得られます(民法252条2項2号)。
申立先は、不動産の所在地を管轄する地方裁判所です。
相続人の1人が海外にいて連絡がつかない場合などに、手続きが止まる事態を避けやすくなりました。
3. 共有物の管理者を選べるようになった
改正により、持分の価格の過半数で共有物の管理者を選任できるようになりました。
管理者は、修繕の発注や管理会社との契約など、管理行為を共有者に代わっておこなえます。
ただし、形や効用を大きく変える変更をするには、管理者であっても共有者全員の同意が必要です(民法252条の2第1項ただし書)。
共有者がそれぞれ遠方に住んでいて、毎回の話し合いが難しい場合に役立つ制度です。
日常の管理を1人に任せたい場合は、管理者の選任を検討しましょう。
保存行為の費用は持分に応じて負担する|立て替えた分は請求できる
保存行為の費用は、各共有者が持分に応じて負担するのが原則です(民法253条1項)。
立て替えた共有者は、ほかの共有者に負担分を請求できます。
固定資産税を共有者の1人がまとめて納めた場合も、同じ考え方で持分に応じた額を請求できます。
立て替えた費用は持分の割合で請求できる
立て替えた費用のうち、ほかの共有者の持分に相当する額を請求できます。
たとえば、兄弟3人が3分の1ずつ共有する実家の修繕費が90万円だった場合を考えます。
1人が90万円を立て替えたなら、ほかの2人にそれぞれ30万円ずつ請求できる計算です。
請求するときは、見積書・領収書・工事前後の写真をそろえて、書面で伝えるのが基本です。
支払ってもらえない場合は、内容証明郵便で請求したうえで、訴訟を検討します。
請求額が60万円以下なら、原則1回の審理で判決が出る少額訴訟も利用できます。
1年以内に支払わない共有者の持分は取得できる
費用の負担を1年以内に果たさない共有者からは、相当の償金を支払って、負担しなかった共有者の持分を取得できます(民法253条2項)。
相当の償金とは、取得する持分の時価が目安です。
取得の意思を伝えるだけでは持分は移らず、相当の償金を支払うか、少なくとも支払いの提供をする必要があります。
相手が持分の移転登記に応じなければ、移転登記を求める訴訟で決着をつけるのが一般的です。
持分を取得すれば自分の持分が増え、管理行為の過半数を確保しやすくなります。
実際に行使する前に、要件を満たしているかを弁護士に確認することが大切です。
他の共有者が「保存行為」として勝手に工事・登記をしたときの対処法

ほかの共有者に勝手に工事や登記をされた場合は、まずその行為が本当に保存行為にあたるかを確認することが先決です。
保存行為の範囲内であれば止めることはできず、費用も持分に応じて負担する必要があります。
範囲を超える工事であれば、過半数や全員の同意を欠いた行為として争うことが可能です。
対応は次の3ステップで進めます。
- 工事・登記の内容を確認する
- 書面で中止や説明を求める
- 話し合いで解決しなければ調停・訴訟を検討する
1. 工事・登記の内容を確認する
最初に、何がおこなわれたのかを書類で確認します。
工事であれば、見積書や契約書を見せてもらい、工事の範囲・費用・仕様を把握しましょう。
確認するポイントは、損傷部分を元に戻すだけの工事か、設備のグレードアップや増築を含む工事かという点です。
登記であれば、法務局で登記事項証明書を取得し、名義・持分・登記の原因を確かめます。
法定相続分どおりの相続登記は保存行為なので、勝手にされたとしても抹消を求められない点に注意しましょう。
自分の持分が勝手に減らされている場合は、不実の登記として抹消を請求できる可能性があります。
2. 書面で中止や説明を求める
保存行為の範囲を超えていると考える場合は、書面で工事の中止と説明を求め、同意していないことを記録に残します。
口頭でのやり取りだけでは、あとで「同意していた」と言われるおそれがあるためです。
同意していない工事の費用を請求されたときは、負担に応じない理由を具体的に書いて伝えます。
もっとも、工事のうち雨漏り部分の修理など保存行為にあたる部分の費用は、持分に応じて負担する必要があります。
全額を拒むのではなく、保存行為の部分とそれ以外の部分を分けて話し合うことが、対立を長引かせないコツです。
3. 話し合いで解決しなければ調停・訴訟を検討する
当事者どうしで解決しないときは、民事調停や訴訟で争うことを検討します。
民事調停は、裁判官と調停委員が間に入って話し合いを進める手続きで、親族間でも利用しやすい方法です。
調停でまとまらなければ、工事の差止めや原状回復、損害賠償を求める訴訟を起こすことになります。
遺産分割の前であれば、遺産分割調停の中で、修繕費の精算もあわせて話し合うことがあります。
不実の登記がされている場合は、抹消登記を求める訴訟が必要です。
どの手続きが適しているかは状況によって変わるため、早めに弁護士へ相談すると、取りうる手段を整理しやすくなります。
保存行為をめぐって共有者がやってはいけない3つの対応
保存行為をめぐっては、保存行為の名目での独断の大規模工事、自力での追い出し、費用請求の無視の3つを避けるべきです。
| やってはいけない対応 | 起こりうること |
|---|---|
| 保存行為の名目で大規模な工事を独断で進める | 費用を請求できない、原状回復や損害賠償を求められる |
| 鍵の交換や荷物の撤去で占有者を追い出す | 自力救済として損害賠償を求められる |
| 費用の請求を無視する | 持分を取得される、訴訟を起こされる |
いずれも、自分の立場を不利にするだけでなく、共有者どうしの関係を悪化させる原因になります。
1. 保存行為の名目で大規模な工事を独断で進める
保存行為の範囲を超える工事を独断で進めると、費用を請求できないうえ、原状回復や損害賠償を求められるおそれがあります。
典型は、雨漏りの修理のついでに屋根全体を高性能な素材に葺き替えるケースです。
雨漏り部分の修理費は請求できても、グレードアップした部分の費用は請求できない可能性があります。
工事を始める前に、見積もりをほかの共有者に共有し、同意を得てから進めましょう。
急ぎの対応が必要なときも、まずは被害の拡大を止める応急処置にとどめるのが安全です。
2. 鍵の交換や荷物の撤去で占有者を追い出す
相手が不法占拠者であっても、鍵を交換したり荷物を運び出したりして追い出すのは、法律で認められない「自力救済」にあたります。
自力救済をすると、相手から損害賠償を求められるおそれがあります。
明渡しは、交渉、訴訟、強制執行という手順で進めるのが原則です。
また、ほかの共有者が住んでいる場合は、保存行為として明渡しを求めることはできません(最高裁昭和41年5月19日判決)。
改正民法では持分の過半数で使い方を決められますが、住んでいる共有者に特別の影響がある場合は、住んでいる共有者の承諾が必要です。
住んでいる共有者には、別段の合意がない限り、持分を超える使用の対価(家賃相当額)を請求する方法も検討できます(民法249条2項)。
3. 費用の請求を無視する
保存行為の費用の請求を1年以上無視すると、相当の償金と引き換えに、自分の持分を取得されるおそれがあります(民法253条2項)。
また、立替金の支払いを求める訴訟を起こされ、遅延損害金が加わることもあります。
請求されている工事が本当に保存行為の範囲かを確認し、疑問点を書面で伝えましょう。
保存行為にあたる部分は持分に応じて支払い、範囲を超える部分は理由を示して支払いを保留する、と分けて対応する方法もあります。
判断に迷う場合は、返答する前に弁護士へ相談しておくと安心です。
保存行為や管理で他の共有者と話がまとまらないときの3つの選択肢
管理をめぐる話し合いが続かない場合は、共有物分割請求・遺産分割・持分の売却や放棄で、共有関係そのものを解消することも検討できます。
共有の状態が続く限り、修繕や費用負担をめぐる対立は繰り返されやすいためです。
| 選択肢 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 共有物分割請求 | 協議または裁判で共有を解消する | 共有者どうしで共有になっている |
| 遺産分割 | 協議・調停で取得者を決める | 相続で共有になり、遺産分割が終わっていない |
| 持分の売却・放棄 | 自分の持分を手放す | 自分だけ共有関係から抜けたい |
1. 共有物分割請求をする
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求でき、話し合いがまとまらなければ裁判所に分割を求められます(民法256条・258条)。
分割の方法には、土地を物理的に分ける現物分割、1人が取得して他の共有者にお金を払う代償分割(賠償分割)、売却して代金を分ける換価分割があります。
ただし、共有者の間で5年以内の期間で分割しない約束(不分割特約)をしている場合は、約束した期間中は分割を請求できません。
実家を売りたくない場合は、代償分割で自分が取得できないかを検討しましょう。
2. 遺産分割で取得者を決める
相続で共有になった不動産は、共有物分割ではなく、遺産分割協議や遺産分割調停で取得者を決めるのが原則です(民法258条の2)。
遺産分割が終わっていない段階で、裁判所に共有物分割を求めることは原則としてできません。
相続開始から10年を過ぎた場合の例外は、不動産の持分の一部だけが相続財産になっているケースだけです。
不動産全体が相続財産であれば、10年を過ぎても遺産分割で解決するのが原則です。
遺産分割で取得者が1人に決まれば、取得した相続人が修繕や管理を単独で決められるようになります。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる方法があります。
3. 自分の持分を売却・放棄する
自分の持分の売却や放棄は、ほかの共有者の同意がなくても単独でできます。
まずは、ほかの共有者に持分の買取りを打診するのが穏当な方法です。
放棄した持分は、ほかの共有者のものになります(民法255条)。
注意したいのは、放棄の登記はほかの共有者と共同で申請するのが原則で、協力が得られないと手続きが進みません。
売却価格や税金の扱いは、事前に専門家へ確認しておくことが重要です。
保存行為に関する悩みは「ベンナビ法律相談Q&A」で解決しよう
共有不動産のトラブルは、親族どうしの感情的な対立に発展しやすく、行為の区分や費用の分担によって解決までの道のりが大きく変わります。
早い段階で弁護士に相談するメリットは、保存行為にあたるかの判断から費用の請求、共有関係の解消まで、取りうる選択肢を整理できる点です。
とはいえ、「弁護士に相談すべきレベルの話なのか」判断がつかない方も少なくありません。
ベンナビ法律相談Q&A では、質問を投稿すると、共有不動産などの分野を得意とする弁護士が無料で回答してくれるため、解決に向けた具体的な対処方法がわかります。
まずは無料相談を活用し、自分の状況で何ができるのかを確認してみましょう。
保存行為に関するよくある質問
さいごに、保存行為についてよく寄せられる質問を紹介します。
民法103条の保存行為とは?
民法103条の保存行為とは、権限の定めのない代理人ができる行為の1つで、財産の現状を維持する行為のことです。
代理人は、保存行為と、物や権利の性質を変えない範囲での利用・改良行為だけをおこなえます。
共有物の保存行為(民法252条5項)とは適用される場面が違いますが、「現状を維持する行為」という意味は共通しています。
登記における保存行為とは?所有権保存登記とは違う?
登記の場面で保存行為と呼ばれるのは、共有者の1人が全員のために法定相続分での相続登記をすることなどです。
一方、「所有権保存登記」は、新築した建物などについて初めて所有権を登記する手続きの名称です。
マンションの共用部分の保存行為は1人でできる?
はい、区分所有法18条1項ただし書により、共用部分の保存行為は各区分所有者が単独でおこなえます。
もっとも、管理規約で別の定めを置くことができ、多くのマンションでは管理組合が修繕を担うと定めています。
まずは管理規約を確認し、管理組合に連絡するのが基本です。
【参考】建物の区分所有等に関する法律(e-Gov 法令検索)
賃貸物件の大家による修繕は借主が拒否できる?
いいえ、大家が建物の保存に必要な修繕をしようとするとき、借主は拒むことができません(民法606条2項)。
雨漏りや配管の修理などのために部屋への立ち入りを求められた場合は、日程を調整して応じる必要があります。
ただし、修繕を名目に退去を迫られたなど、保存の範囲を超える要求であれば、そのまま従う必要はありません。
相続放棄をした人も保存行為をしなければならない?
相続放棄の時点で相続財産を現に占有していた場合に限り、ほかの相続人などに引き渡すまで、占有している財産を保存する義務を負います(民法940条1項)。
2023年4月1日施行の改正民法で、義務を負う人が「現に占有している人」に限定されました。
実家に住んでいなかった人は、相続放棄をすれば原則として保存の義務を負いません。
債権者代位権における保存行為とは?
債権者代位権における保存行為とは、債務者の権利が時効などで失われないようにする行為のことです。
債権者は、自分の債権の期限が来る前は、原則として債務者に代わって権利を行使できません。
ただし、時効の完成を防ぐ手続きなどの保存行為であれば、期限前でも代わりにおこなえます(民法423条2項)。
まとめ
保存行為とは、共有不動産の現状を維持するための行為で、ほかの共有者の同意がなくても1人でおこなえます。
修繕や不法占拠者への明渡し請求、不実の登記の抹消請求、法定相続分での相続登記が代表例です。
賃貸や外壁の塗り直しなどの管理行為は持分の過半数、建替えや売却は共有者全員の同意が必要です。
保存行為の費用は持分に応じて分担し、立て替えた分はほかの共有者に請求できます。
区分の判断や費用の請求で迷ったときは、ひとりで抱え込まず、早めに専門家へ確認することが、親族間のトラブルを広げない近道です。
共有不動産の扱いに不安がある方は、ベンナビ法律相談Q&A をご活用ください。
