名誉毀損罪(以下、「本罪」という。刑法230条)の成否についてお尋ねですね。本罪が成立するためには、「上司」の行為が次の①から④の要件全てを満たしていることが必要です(同条1項)。そこで、各要件とその内容について考えます。
①公然と
②事実を摘示して
③人の名誉を毀損することで
④違法性阻却事由がないこと 以上が本罪の構成要件です。
①の「公然」とは、不特定または多数の者が直接に認識できる状態のことをいいます。「(相談者)が転職しそうな会社に‥‥横領疑惑などを記載したメールを送った」とのことですが、そのメールの送った先が複数であれば、「公然」の可能性があります。たった一人だけであれば「公然」を満たすとは言えません。ただ、送り先が一人だけであっても、不特定の人たちが閲覧可能なインターネット上で投稿したり記事などであれば、伝搬する可能性があり該当します。この「公然性」該当性が本罪の成否を判断する最も重要な要件です。
②の「事実を摘示」とは、抽象的な事実の摘示や単なる価値判断の表示ではなく、具体的な事実内容を示したことをいいます。真実であるかは問われません。デマであっても該当します。
③の「人の名誉を毀損」の要件は、人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものですのであり、「横領疑惑など」は問題なく該当します。
上記①から③の条件を満たしている場合でも、公共の利害に関する事実で、公益を図る目的で、真実であると認める理由がある④の違法性阻却事由が存在すれば、名誉毀損罪は成立しません(刑法230条の2)。もっとも、本件では存在するとは思えません。
相談者とされましては、事実関係をさらに詳しく調査され本罪の成否を検討してみてください。上記説明がその一助にもなれば幸いです。
また、異なるお考えもあろうかと思いますので、他の弁護士先生のご説明もお聞きになってください。
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