たいへん現実的で難しい状況ですね。
法的観点から整理すると、相続放棄・限定承認の検討中に「被相続人の財産を処分する行為」を行うと、場合によっては「相続を単純承認した」とみなされるおそれがあります(民法921条1号)。
そのため、不用物の処分や部屋の原状回復行為は慎重に進める必要があります。
1.原則:処分=単純承認のリスク
民法921条1号では、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」は、相続の単純承認をしたものとみなす
とされています。したがって、壊れた冷蔵庫・家具などを勝手に廃棄すれば、形式的には「処分行為」と見なされる可能性があります。
2.例外:保存行為・管理行為は可能
ただし、相続放棄や限定承認を検討している段階でも、
財産の「保存」または「管理」のための行為は認められています(民法940条)。
例えば次のような行為は通常「保存・管理」とされ、単純承認にはあたりません。
賃貸契約の解除(家賃滞納を防ぎ損害拡大を防止するため)
ゴミや腐敗物の除去(衛生上や建物損壊防止のため)
盗難・火災防止のための最低限の整理
このため、「衛生・安全のための掃除」「大家への迷惑防止のための撤去」という趣旨で行う範囲なら、単純承認にはならないと考えられます。
3.現実的な対応策
おすすめの手順は次の通りです。
写真で現況を記録
部屋全体・家電・家具の状況を撮影しておきます(「明らかに価値がない」と説明できるように)。
不動産管理会社・家主に文書またはメールで相談
「相続放棄を検討中だが衛生上の問題があるため、管理のために最低限の清掃をしたい」旨を伝えておきましょう。
自治体の大型ゴミ回収などを利用して廃棄
売却・転用はせず、「廃棄」として処分することで、経済的価値を得ないようにします。
価値が不明なもの(貴金属・高価家電・通帳など)はそのまま保管または封印
家庭裁判所に限定承認や放棄を申し立てる際に「保管品」として報告できるようにしておくのが安全です。
4.もし確実に安全を期したいなら
家庭裁判所に「相続財産管理人選任の申立て」(放棄予定の場合)を行い、
その管理人に部屋の整理・退去を任せるという方法もあります。
ただし、手続に数週間〜数ヶ月かかることがあります。
まとめると、
「衛生・安全確保・退去のための最低限の清掃・撤去」であり、経済的価値を得ない範囲
であれば、「管理行為」として認められる可能性が高いです。
とはいえ、形式的にはグレーな領域なので、作業前に「相続放棄を検討中」と明示して証拠を残すことが非常に重要です。
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